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魔王リライト  作者: ゆずリンゴ


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9.魔法大会

 入学から一ヶ月が経った、涼しくなり始めた頃のことだった。


 朝のホームルームで、担任教員が一枚の紙を取り出した。


「今月末に、一年生全員参加の魔法大会が開かれる。学年全体の実力を測る目的と、来年の特別近衛騎士候補の下地を見る意味もある。成績は評価に反映されるので、真剣に取り組むように」


 教室がざわめいた。


「魔法大会って、どんな内容なんですか?」


 レインが手を挙げて聞いた。


「個人戦の模擬試合形式だ。魔法の使用のみ。出力、精度、制御力、応用力の四項目を審査員が採点する。加えて、トーナメントで最上位に残った者は総合優勝として表彰される」


「……対人戦か」


 レインがルベルドに小声で言った。


「ルベルドはどうする?」


「参加するしかないだろう」


「まあそうなんだけどさ。お前強いじゃん、どのくらい本気出すんだ」


「……適切なところで」


「なんだそれ」


 ルベルドは答えず、教壇の先生に視線を戻した。


(……大会、か)


 内心では少し考えていた。これは機会だ。大会で結果を出すことは、特別近衛騎士候補として認知されるための、最も手っ取り早い手段になりうる。


(どの程度の力を出すか、だな)


 本気を出す必要はない。しかし「優秀な新入生」として印象を残すには、それなりの結果が必要だ。特別近衛騎士の選抜は学業と実技の総合評価で行われる。学業成績は既に高い。実技でも上位に入れば——選抜の候補として名前が上がるはずだ。


(それに、コゴメも見ているかもしれない)


 その考えが浮かんだ瞬間、ルベルドは小さく眉を寄せた。


(……何を考えている)


 大会の結果を「コゴメが見ている」ことを意識するのは、筋違いだ。目的は近衛騎士になることであり、そのための実績を積むことだ。それ以上でも以下でもない。


 ルベルドはそう結論づけて、ノートに「大会・実技課題の想定練習」と書き留めた。


 大会まで三週間。ルベルドは放課後の演習時間を使って、人目のないところで練習をした。


 内容は力加減の練習だ。本来の力を「どこまで見せるか」の基準線を引く作業。


 夕暮れの演習棟の隅で、ルベルドは一人、的に向かって魔力弾を撃ち続けた。出力を少しずつ上げ、「これ以上だと明らかに異常」という境界線を探る。


(……この程度なら「才能ある一年生」の範囲か)


 的が揺れる。精度は問題ない。問題は一度に込める魔力量とその連発数だった。魔族の魔法と人間のそれでは、魔力の回復速度に大きな差がある。ルベルドが疲れる様子なく自然に魔法を使えば、人間の目には「異常」に映るかもしれない——それは隠さなければならない。


 意図的に、魔法の間に間を置く。


「魔力を練るのに集中をしている顔」を作る練習もした。


(……ここに来て演技の練習をする日が来るとは思わなかった)


 苦笑いする気分だった。しかし、これも必要なことだった。


◆◇◆◇


 ある日の練習後、演習棟から出ようとしたところで声をかけられた。


「……一人で練習していたのか」


 ダリアだった。廊下に立って、ルベルドを見ている。


「見ていたのか」


「たまたま通りかかった。……意外だな、的当てを延々と繰り返すとは」


「基礎を固める事が強くなるための一歩だ」


 ダリアは少し間を置いた。


「……僕も練習していた。炎魔法の出力制御で」


「そうか」


「大会まで毎日やる」


「俺も同じだ」


 また短い沈黙。しかし今回の沈黙は、以前より少しだけ温度が違った。


「……お前の闇魔法は、精度が高いのは認める」


 ダリアが言った。


「お前の炎魔法の制御も見た。悪くない」


 互いに褒め合ったわけでも認め合ったわけでもない。ただ事実を述べただけだ。しかしそれだけで、二人の間の空気がわずかに変化した。


「大会では容赦しない」


 ダリアが言った。


「俺も同じだ」


「……そうか」


 ダリアはそれだけ言って、廊下を歩いていった。


 ルベルドは背中を見送ってから、独りごちた。


(……本当に面白い奴だ)


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