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気分と機嫌と私と  作者: るり


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6/9

第5.5話 私は彼女を知っている

今日は書き下ろしです!

同僚視点で書いてます!!

ぜひ見てください!!

 朝のオフィスは、いつもと同じ匂いがする。コーヒーとコピー用紙と、少し乾いた空気。彼女は今日も静かに席に座っている。黒髪のロングヘア、赤いフレームの眼鏡。感情を外に出さない、淡々とした表情。

 それなのに、なぜか目が向いてしまう。理由は考えないことにしている。

「おはよう」

 声をかけると、彼女は少しだけ頷き返してくれる。それだけで、朝が始まった気がする。

 午前中の仕事は、いつも通り。数字、資料、メール、会議。彼女は淡々とこなす。褒められることも、叱られることもない。まるで、水面のように静かだ。

 でも私は知っている。彼女の静けさは、何も感じていないわけじゃない。ただ、外にこぼさないだけ。だから、私は時々、確かめたくなる。

「ねぇ、今日ランチ行かない?」

 彼女は少しだけ顔を上げる。

「うん、わかった。すぐ終わらせるね」

 その声が、ほんの少しだけ柔らかい。気のせいかもしれない。でも、その気のせいが嫌いじゃない。

 昼休み。いつもの定食屋まで並んで歩く。会話は特に意味のないものばかり。

「昨日ドラマ見た?」

「見てない」

「そっか」

 それでも、沈黙は苦じゃない。彼女は一人でも平気な人だ。でも今は、隣を歩いている。その事実だけで十分だった。

 午後、席に戻ったあと。私は、ふと彼女の机に目を向ける。引き出しの隙間から、小さなスプーンが見えた。

(あ。)

 彼女は甘いものを食べた日に、少しだけ表情が緩む。それを知っているのは、たぶん私だけ。

 今日はどんな一日だったんだろう。疲れたのかな。うまくいかないことがあったのかな。問いかけはしない。彼女は、きっと自分で自分の機嫌を取る人だから。

 それでも、彼女の「少しだけ軽い動き」を見つけて、私は勝手に安心する。

 そういえば、昨日の夜。旅行先で買った小さなお土産を、私は彼女の机の上にそっと置いた。

「疲れてると思ったから」

 そう書いたメモは、何度も書き直して、結局それだけ残した。それ以上書くと、理由を説明しなきゃいけなくなりそうだったから。

 今朝、彼女はその包みを見て、ほんの少しだけ口元を緩めていた。その瞬間、胸の奥がふわっと動いた。なんだろうそれを見ただけで私は少し元気になる。

 夕方。仕事が終わる頃、彼女がぽつりと話す。

「昨日ね、一人焼肉行った」

 一瞬、頭が止まる。

「え、いいじゃん」

 私はできるだけ普通に返す。

「ちょっと高かったけど、美味しかった」

 彼女は、ほんの少しだけ笑う。その笑顔を、私は思ったより長く見てしまった。

 そして、自分の中に浮かぶ小さな声。誰と行ったのかは聞かない。聞く必要もない。彼女は「一人で行った」と言った。

それで十分なのに、なぜか胸の奥が少しだけざわつく。でも、そのざわつきは嫌なものじゃない。

 ただ、彼女の一日を、私は少しだけ多く知りたいと思っただけ。

 帰り道。彼女はいつも通り、静かに歩く。一人で完結できる人。「推しは自分」きっと彼女は本当にそう思っている。

 でも私は、今日も彼女の隣を歩けてよかったな、とだけ思っている。



それ以上の名前は、まだつけなくていい。

今日も主人公ちゃんはご機嫌のようです!

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