第3話 疲労な心に限定プリン
第3話疲れた心に限定プリン!
癒やしは必要不可欠です!!
昼休み、特に予定はなかった。
同僚とランチに行くほどの元気はないし、かといってデスクでコンビニ飯を食べる気分でもない。三十代前半のOLの昼休みは、だいたいこうして宙ぶらりんになる。
ビルの下にあるデパ地下に降りたのは、完全に気まぐれだった。
お弁当を見るつもりもなかったし、夕飯を買うほどの決意もない。ただ、空調の効いた場所で、少しだけ「ちゃんとしているもの」を眺めたかった。
ショーケースに並ぶスイーツは、昼から見るには眩しい。
ケーキ、タルト、ムース。どれも「誰かと食べる前提」みたいな顔をしている。その中で、ひっそりと置かれていた限定プリンに目が止まった。
期間限定。
本日分残りわずか。
そう書かれると、なぜか私の機嫌が揺れる。
プリン一個にしては、正直高い。
コンビニなら三個は買える。
でも、今欲しいのは量じゃなかった。ちゃんと作られて、ちゃんとここに置かれている感じ。その「ちゃんと」に、お金を払いたくなった。
列に並びながら、少しだけ言い訳を考える。
今日は午前中の会議を乗り切ったし、昨日の残業もちゃんと帳消しにしていない。これはご褒美というより、調整だ。自分の機嫌の。
小さな紙袋を受け取ったとき、なぜか背筋が伸びた。
プリン一個で、ここまで人は丁寧な動作ができるらしい。
昼休みの終わり、デスクに戻ってからもすぐには食べなかった。
引き出しにそっとしまって、午後の仕事を片付ける。メールを返して、資料を直して、意味のあるような、ないような作業を続ける。
定時少し前、ようやくプリンを取り出す。
誰も見ていないタイミングを狙ったつもりだけど、別に見られても困らない。三十代前半のOLがプリンを食べることに、理由なんていらない。
スプーンを入れると、想像以上に柔らかかった。
口に入れると、甘さが静かに広がる。主張しないのに、ちゃんと美味しい。
ああ、これは雑に扱っちゃいけないやつだ。
午後の疲れが、少しだけ後ろに下がる。
劇的な回復はしない。でも、これで今日の後半はなんとかなる。
プリンは、未来の自分への前払いみたいなものだ。
食べ終わったカップを捨てるとき、少しだけ名残惜しかった。
でも、満足の方が勝つ。
一個で足りる、という感覚が、今日は心地よかった。
出費は、相変わらず止まらない。
それでも私は、今日の私に合った甘さを選べたと思う。
推しは自分。
自分の機嫌は、自分で取らなくちゃね。
今日も主人公ちゃんはご機嫌のようです!!




