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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

最強スキル『超再生』と『錬金』で全てをぶちのめす俺クン、最強すぎてすみません 〜戦い方がキモいと言われてパーティを追放されたけど最上級ダンジョンをソロでクリアし可愛いケモノの女の子たちとハーレム生活〜

3匹のロードウルフが、体勢を低くし今にも飛びかからんと唸り声を上げている。


「1体がSランク冒険者1人に匹敵すると言われる『ロードウルフ』が3匹も……!? この階層にはポップしないはずなのに……!」


「クソッ!! どうすりゃいいんだ!!」


魔法使いのアヌレティナ・ラフネと剣士のイグラス・スリーブが口々に言う。


ダンジョンの通路で完全に挟み撃ちにされてしまった俺たちは壁に背を付け、ジリジリと迫りくるロードウルフを睨みつけていた。

その場にいる誰もが、冷や汗を流しながら死を覚悟していた。……ただ、俺こと「ファイズ・リゲルド」一人を除いて、だが。


「やれやれ。俺の出番かな、っと」


壁にもたれていた背中を引きはがし、2人の前に出る。


「ファイズ!? でも」


「アン、仕方がないよ……」


俺を制止しようとしたアヌレティナをイグラスが止める。


やれやれ。俺が囮役として前に出たとでも思ってるのかね?

とんだ早とちりボーイたちだぜ。


俺はポケットに入れていた手を出し、胸の前に持ってきて骨を鳴らす。


パキパキと骨の鳴る音……。これが俺の戦闘開始の合図ってワケ。


急に動き出した俺に警戒心をあらわにし、歯をむき出しにする狼たち。


その内の1匹が、ほとんど予備動作のない動きで俺の方へ飛ぶ。


「やれやれ。せっかちなワンコロさんだこと」


腕を前に突き出すと、ロードウルフの口はその腕に噛み付く。



噛み付かれた腕は、簡単に食いちぎられる……かに思われた。


「"錬金"」


そう俺が呟くとロードウルフは白目を剥き、口から泡を吹き出しながらその場に倒れた。


俺の腕は無傷で、せいぜい服に歯痕が残った程度だ。


「"悪魔(デーモン)の生贄(サクリファイス)"」


自分の腹に手を当て呟く。

"悪魔(デーモン)の生贄(サクリファイス)"は俺が発案した最強の技。


俺の腹は裂け、ハエドリグサのような形を成す。

内臓が露出した腹から、巨大化した骨がロードウルフを捕らえようとその歯牙を伸ばす。


触手のように伸びた肋骨は残った2匹のロードウルフをガッシリと捕らえた。

体に巻き付いた骨から逃れようと暴れるが、俺の骨からは逃れられない。

グンと骨を縮ませて狼を腹の中へ引きずり込む。

"超再生"が発動し、裂けた腹は急速にその口を閉じる。


俺は破裂しそうなほどに膨らんだ腹を眺めながらどう調理してやろうかと思案した。


「なぁお前ら、こいつどうするのがいいかな?」


腹を指差しながら振り返って聞く。2人は青い顔で俯いていた。


もうロードウルフはやっつけたから大丈夫だというのに。よっぽど怖かったようだな。


「好きにしたらいいよ……」


弱々しく言葉を返すイグラス。


「まぁ、そうだな! 俺の獲物だしな!」


「"錬金"!!」

俺は腹の中をミキサーのようにグチャグチャにかき回す。腹の中で肉が弾ける音が響く。


いい感触だな。やはりS級モンスター、そこら辺のモンスターとは手応えが段違いだ。


完全に肉塊となったロードウルフを腹から吐き出す。


おっと、つい興が乗ってしまったな。


「すまん。これじゃ素材が取れないな……」


ぐちゃぐちゃの肉塊を手でかき回し何か残っている素材がないか探すが、やはり完全に粉砕されており何も残っていない。


「いや、いいよ。一匹は綺麗な状態で残ってるし……」

イグラスは引きつった顔で笑いながら、しゃがんでいる俺の肩に手を置いた。


「そうだな!」


それもそうだと思い俺は立ち上がった。


「じゃあ、さっさと帰りましょう。またロードウルフに襲われないうちに……」

青ざめて今にも吐きそうな顔をしているアヌレティナが言う。


「大丈夫か? 体調悪いか? ここで吐いとくか?」

さっさと吐いたほうが楽になるだろう。そう思って俺は吐出の手伝いをしてやろうとアヌレティナの方へ近寄る。


「いや、大丈夫よ。平気!」


手のひらをこちらへ向け俺を制止する。


「大丈夫そうには見えないが……?」


「いや、本当大丈夫だから……!」


そんな問答を続けていると間にイグラスが入ってきた。


「ほら、アンがここまで言うならきっと大丈夫だよ。さっさと帰ろう。もしやばくても外に出てからでも間に合うだろ? な?」


アヌレティナは強く何度も頷く。

そこまで言うならそうなんだろうが……。

俺はせっかくの親切を無下にされて少し不快になった。


殺してやろうかな。

なーんて、冗談冗談。




そこからは大した苦労もなくダンジョンの外へ出て、ギルドまで戻ってきた。


依頼されていた品を納品し、確認手続きが済むまでの間、受付前のソファに座って待つ。

ギルドオリジナルらしいキャラクターの小さな彫刻がローテーブルの上にポツンと置かれている。

そのテーブルを挟んでソファが2つ置かれていた。


俺が1人で座ったソファの対面にイグラスとアヌレティナが並んで座っている。


「いやー楽勝だったな今回も!」


俺はギルド内で販売されていたビールを飲みながら、依頼が無事に完了したことの嬉しさを噛み締めていた。


今まで何度も繰り返してきたことではあるが、やはり仲間と共に一つのことを成し遂げるというのは嬉しいことだった。


「……」


しかし俺のムードとは対照的に、2人は沈んだ顔をしていた。


「どうした? せっかくの酒が不味くなるじゃねえか」


「……あのな、言いたいことがあるんだ」

俺が声をかけると、覚悟を決めたような顔をして言う。


「なんだ? もしかして結婚とかか? 熱いなぁ。ま、お似合いだよなお前ら!」


俺が暗い空気をほぐしてやろうとジョークを言うが、2人は更に顔を暗くする。

なんだこいつら。


「……実はな、お前に、パーティから抜けてもらおうと思うんだ」

イグラスから全く予想していなかった言葉が出て思わず面食らう。

「は? そりゃあどういうことだ?」


「申し訳ないと思ってる。……でも、もう3人では続けられない。それが俺たちの結論だ」


「クビってことか? 俺が? なんでだよ」


「……言いにくいんだけどな、お前の使う、錬金ってあるだろ」


「あれ使って戦ってるお前がさぁ、見るに耐えないというかさ……グロくて……」


「なんだよその言い草は。俺がどれだけの危機を救ってきたか分かってんのか? 俺がいなけりゃお前らとっくの昔にモンスターの腹の中だぜ」


「よく理解してるよ……。お前がどれだけパーティに貢献してるか。お前がいたから、この『ファニィ』はAランクまで来れたんだ」


イグラスは顔を手で覆いながら苦しそうに言う。

「でもな……。飯食ってるときに戦ってるお前の姿が浮かんでなぁ……」


「……なるほどな。よーく分かった」


正直なところ俺の"悪魔の生贄"程度なら、モンスターに実際に手をかけ死体を何度も見ているこいつらが耐えられないわけがない。

つまり、こいつは嘘をついているということだ。


では追放する理由は何か……。

大方俺だけが活躍しているのが許せないとかそんなとこだろうな。


「あとさ……」


「錬金を自分の体に使うの、もうやめとけよ」


正直嫉妬しているのが見え見えだった。

俺だけの最強能力が羨ましいんだろうなぁ。気持ちは分かるが、そういう陰湿なやり方はいけないぜ。


「絶対良くないって。昔のお前はそんなんじゃなかっただろ……?」


「お前の強さに甘えてた俺達も悪かったよ。ごめん。気付いた時点で止めれば良かった」


なんだこいつ。


「モンスターの倒し方だって、前はもっと命に対する敬意があったはず……」

アヌレティナが言う。

支離滅裂だな。自分が何言ってるのかも分かってなさそうだ。


「そりゃあ毎回倒してれば慣れるだろ……」


2人の悲しそうな顔が一層強まる。俺を引退させて手柄を横取りしようって魂胆が失敗したからか? 俺がそう簡単に引っかかると思うなよ。


「……歩くときもフラフラしてて危なっかしいんだよ。自分で気づいてるか?」


「本当に心配なの……」


しつけー。計画が失敗したならさっさと引けや……。


「分かった分かった。お前たちの魂胆は分かったからさ」


俺は席を立った。


「おい、報酬がまだ……」


「いらんいらん。お前らにやる」


最後の置き土産だ。


今から楽しみだな。こいつらが無様に死ぬのが。実際にその場面を見られないのが残念だが。


「……」


思惑通りに行かずに悔しそうな顔を浮かべている。

考えが甘かったな。


「……また今度、飯でも食いに行こう」


上げた手をヒラヒラさせて返答の代わりとする。


行くわけねえだろ。毒でも混ぜるつもりなんだろうがな。

そんな手に乗ると思われているのが悲しいぜ。


ギルドの入り口へ向かって歩きながら、手続きを完了した職員が『ファニィ』の名を呼ぶ声を聞いた。


苛立った心を落ち着かせようと、俺は街を歩き回った。

雑貨屋や武器屋。しかしそのどれも、今の俺には全く興味が持てなかった。

3人で冗談を言い合いながら店を渡り歩いた日のことを思い出して、むしろ心が荒んだ。


俺の足は自然と、今しがた出てきたばかりのダンジョンへ向かった。


本来ダンジョンは1人で挑むようなものではなく、精鋭を揃え、万全の準備を整えた上で潜るものだ。

もちろん、浅い層のちょっとした素材を採集するくらいなら1人でも問題はない。


しかし基本的には、ダンジョンは何が起きるか分からないためフルメンで挑むことが推奨される。


俺はそのことを知っていたが、正直なところ1人でも余裕だと思っていた。なぜなら俺には"錬金"と"超再生"があるからだ。


この2つさえあればどんな敵だって脅威じゃない。


俺は初めてのダンジョンのソロ探索に高揚を覚えながら意気揚々とダンジョンに入った。


このダンジョンは現在攻略済の部分は6階層だが、魔力の計測から、少なくとも10階層はあると予想されていた。


「普段はあいつらがいたからせいぜい3階層までしか行けなかったが、今回は俺1人だ。もしかしたらクリアしちゃうかもなぁ」


ニヤニヤしながら俺はダンジョンを歩いていた。


そんな最中も敵は現れ続け、俺はその全てを錬金と超再生で撃破した。


ムシャクシャした気分を発散させるように全て原型を留めぬくらいグチャグチャにした。


そんなときだった。


「なんだこの穴……」


目の前に暗い穴が現れた。底は全く見通せず、わずかな獣臭と、悶えるようなうめき声が湧き上がって聞こえた。


「落ちたらやばそうだな」


「まぁ最悪、俺には"超再生"があるし大丈夫か」


しかし深い穴だ。ここに飛び降りれば、もしかしたら最下層まで一直線に降りれるかもしれないな。


流石にそんなことを試すほど俺は馬鹿じゃないが。


踵を返そうとした瞬間、靴に付いていた肉片に足を滑らせ、穴の中へ落ちてしまった。


落ちながらもなんとか途中の壁に捕まろうとして指をかけるが土の壁は簡単に崩れ全く手がかりにはならない。


次第に下の様子が見え、俺はゾッとした。


大量の小さな光の点が全て、爛々と光るロードウルフの目だと気づいたからだ。


「こりゃあ……まずいぜ……!」


大量のロードウルフの中に落ちた俺は、全身を強打し激痛に悶えた。


「グ……ッ!」


その場から退避しようとするが、体の至る場所が骨折しているらしく、上手く動けない。


超再生によって回復してはいるが動けるようになるまでには約5、6秒はかかるか。

多分間に合わない。


「"錬金"!」


俺は叫ぶ。


「あれ?」


発動しない?

え? 魔力が足りない????


え?


やばい。


考えてもなかったことに、脳が数瞬停止する。


3人のとき俺はサポート役でそこまで魔力を消費しなかったから、魔力が切れるなんてことはほとんど起きなかった。そのせいだ。自分のキャパを上手く把握できてなかった。


別の対処法を考える前に、数多のロードウルフが飛びかかってくる。


足、腕、腹、顔。全身の至る場所を食いちぎられる。


「いてえええ!!!」


「クソッ……離れろ!!」

腕を振り回すが、肘を大きくかじられたせいか、右腕が外れてどこかへ飛んでいってしまった。

何匹かその腕を追いかけて行くのが見えた。


本気でやばい。どうする!?


助けを待つか?

いやダメだ。


ここは恐らく最下層、もしくはその付近。

救出は期待できそうにない。

現在の攻略速度を鑑みて、このダンジョンが踏破されるのは早くて数年後か……。


魔力が完全に切れれば再生は止まるが、実際には魔力はごくゆっくりと常に回復し続ける。

回復したわずかな魔力を消費して、俺の体は牛歩の歩みで再生する。


脳は頭蓋に守られているため、食われるまでには時間がかかる。


スキル"超再生"は強制発動型のスキルだ。


思考は長く、途切れずに続く。


「ぐぁ……」


大量の生物が蠢く気配を感じる。


骨から滲む肉が、残らず舐め取られる様子を想像する。


頭蓋骨からわずかに伸びた神経が、端からかじられる様子を想像する。


そんな光景が、これから何度も繰り返されることを想像する。


何度も。


考える時間は、余るほどにある。

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