表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイキックス  作者: Ken
56/59

第56話

「寝よ。一回休もう、とりあえず」

一人パンツ一枚で部屋に取り残された俺は、担いできた荷物の中から寝巻きを取り出してそれに着替える。もう今は何も考えたくない。そう思いベッドに潜り込むと、すぐに意識が遠のいていった。

 陽の光とともにゆっくりと意識が覚醒していく。起きて始めに感じた事は、今日は夢を見なかったということだ。今まで人が殺されるところを目撃した日の夜は、意味の分からない夢を見ていた。不快で気分が悪くなる夢だったので、今回そのような夢を見ずに済んで正直ほっとしている。意識がはっきりしてくると同時に布団の中に違和感があった。布団を剥いでその違和感の正体を調べようと試みる。するとそこには俺のパンツを脱がせようとする花見がいた。一瞬、訳が分からず、固まってしまう。花見の方は、『あ、ヤバい、見つかった』と言いたげな表情をした後、急いで手をかけていた俺のパンツを引きずり下ろそうとする。それに気づき、俺もパンツをつかみ必死に抵抗する。

「なんなんだお前、朝から!」

「いや、昨日パンツの中まで測定してなかったから、一応、念の為ね。必要かなって思って。決して私が興味あるわけじゃないよ」

「パンツの中まで測定する必要がある装備品ってなんだよ!」

「ほら、金的攻撃のこと考えるとプロテクターとか必要かもしれないし」

「計測が必要なほど特殊な大きさしとらんわ!」

「それはほら、測ってみないとわからないって!」

花見と一進一退の攻防を繰り広げている中、ドアの方に人の気配を感じた。視線を向けると、そこには昨日にも増してゴミを見るような目をした綾音が立っていた。

「邪魔したわね、それじゃ」

綾音はそれだけ言ってすぐに去ってしまう。

「まっ」

『待って』と言おうと片手を伸ばしたが手遅れだった。パンツから片手を離してしまったせいで、花見に一気に持っていかれてしまう。

「あ、男の人のってこれくらいなんだ。じゃあわざわざ測んなくても大丈夫かなあ」

花見はそう言いながら、少し頬を赤く染めて俺の股間から顔を背けている。測りたいといった手前、その必要がないことが分かって申し訳なく感じているのか、もしくは単純に異性の股間を直視するのが恥ずかしいのか。どちらにせよ朝からパンツを剥がれるなんて経験をした俺はたまったものじゃない。花見にこれぐらいのサイズなんだと言われたが、俺の名誉のために言及しておくと、朝特有のあれはおさまった後のサイズだ。あんな攻防を繰り広げていたら、いつの間にか自然とおさまっていた。急いでパンツを履いて花見を追い出す。

「悠真君、ごめんて。本当は起きる前にバレないようにやるつもりだったんだよ」

ドア越しに花見が謝ってくるが、謝るポイントがズレている。怒る気力もなく、ため息をつく。

「花見、わかったから少し休ませてくれ。ちょっとで良いから一人にさせてくれ」

今日は休むと決めていた。肉体的に疲れているのもそうだが、精神的にも疲弊していたからだ。まだ体がもっと睡眠を欲していた。切実に訴えると、花見も分かってくれたのか、大人しくその場を去ってくれた。そして、そのまま再びベッドに入って眠り始めた。

 二度寝から目を覚ますと、すぐに布団を剥ぐ。そしてそこに誰もいないことを確認し、一安心する。ベッドから出てカーテンを開けると、まだ太陽が高くに位置しているのが見えた。時計を確認すると、時刻は午後二時を回ろうとしている辺りだった。時間が分かると急に腹が減ってた。起きてすぐはそうでもなかったが、朝食と昼食を食べていない状態でこの時刻と分かると、何か食べなければという意識が働いたのだろう。部屋を出てリビングに向かう。以前急に引っ越したときにも、冷蔵庫の中には食べ物が用意されていた。今回もおそらく何かしら冷蔵庫に入っているだろう。そう楽観視しながらリビングのドアを開けると、そこにはダイニングのテーブルで食事をしている花見がいた。

「おはよう、花見。ってもう朝じゃないか」

「あ、おはよう。それなら、私からしたらこんばんは? かな?」

「ん? どういうことだ?」

「悠真君が起きたばかりだから『おはよう』って言ったのなら、私は昨日からまだ一睡もしてないから『こんばんは』ってこと」

一睡もしてないことに一瞬驚く。しかしよくよく考えてみれば、昨日は花見の人生を大きく変える出来事が起こったのだ。彼女が眠れないのも当然の事だと言えるだろう。

「昨日はちょっと色々ありすぎたもんな。そりゃあ眠れないよな」

花見がきょとんとした顔をした後、何か分かったような顔をして口を開く

「確かに、眠れなかったのは昨日起こったことのせいっていうのもあるよ。でも、そのせいで眠れなかったっていうより、悠真君のサポート方法について考えてたら眠れなかったって感じだね」

今度は俺の方がきょとんとしてしまう。あんな事があったのに自分のことより俺の事を考えてくれている花見に感動して、少し目頭が熱くなる。朝、俺のパンツを剥ごうとした人間と同一人物だとは思えない。

「悠真君の事は死なせないって言ったでしょ。もう明日の夜には危ない場所に行くわけだから、出来るだけのことはしておきたかったの」

「花見、ありがとうな」

素直な気持ちで花見に感謝を述べる。花見は、真っすぐに感謝の気持ちを受け取るのが恥ずかしいのか少し照れているようにも見える。

「いいのいいの」

その後すぐに、花見は何か思い出したように話し始めた。

「悠真君のサポートのために何か役立つ物を色々作ろうとしてたんだよ。そのための物資を技研に依頼しようとしたんだけどさ、調達までの時間が早くてさ、驚いちゃった。夜中に注文したんだけど、今日中にいくつかは届きそう。手に入る物も豊富でさ、例えば……」

花見の目が輝き始めた。まずい。長くなりそうだ。このまま話を聞き続けていたら遅い昼食が夕飯になってしまうところだ。

「あ、そ、そういえば、花見は今何食べてんの?」

無理やり話題を変えて話を中断した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ