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サイキックス  作者: Ken
33/59

第33話

「超能力者? 杉崎が?」

東堂は目を丸くして杉崎を見ていた。

「うん、私と会話してると、話してる人に良い事が起こるんだ」

「何それ? 超能力なの?」

東堂は杉崎の話に首をかしげている。

「自信ないんだけど、多分。毎回必ずいいことが起こるから」

「へー、今杉崎と話してるけど、私にも良い事起こるのかな? 何だかちょっとわくわくする」

「それが何を話してても起きるわけじゃないみたいなんだよ。今から試してみてもいい?」

「そうなの? いいよ。もちろん」

杉崎は東堂の了解を得ると、ポケットからコインを取り出した。杉崎は辿々しい手付きでコイントスを行う。

「表と裏、どっちだと思う?」

「表でしょ、バレバレだったよ」

コイントスが下手なせいでバレバレだったことに杉崎は少しショックを受けている。そんな杉崎を無視し、東堂は彼女に答えを急かしてコインを公開させた。

「やっぱりね。正解っと。これがなんなの?」

「これで東堂さんにいいことが起きると思う」

「そうなの? なんか変なの」

そんな会話をしていると、女の子が東堂と杉崎のもとへ近寄ってきた。

「東堂さん、これ東堂さんのだよね。校庭に落ちてたって」

その女の子は手に何か持っており、それを東堂のもとへ差し出している。

「あ、それ、失くしてたブレスレット。もう見つからないかと思ってたんだ。ありがとう!」

東堂は女の子が差し出してくれた、子供向けのおもちゃのブレスレットを受け取る。東堂は、失くしていたものが見つかったのが嬉しいようで満面の笑みを浮かべている。

「よかったね、東堂さん。それじゃ」

それだけ言うと、女の子は東堂と杉崎から離れていった。

「杉崎、これってまさか」

東堂はゴクリと唾を飲んで杉崎を見つめていた。

「うん、多分、私の超能力の効果だと思う」

「もしかしたら偶然かもしれないし、もう一回出来る?」

「ごめん、時間を空けないと使えないんだ。また明日やってみてもいい?」

「そっか、そういえばテレビで見た超能力者も、なんか時間空けないと駄目とかで連続で出来てなかったなあ。超能力ってそういうものなんだ」

「テレビを見てないからその人のことは知らないけど、私は時間空けないと駄目みたい」

「わかった。そういうことならまた明日やってみよ。本当なら杉崎すごいじゃん」

「えへへ」

東堂は手放しで杉崎のことを絶賛していた。杉崎の方は、褒められて恥ずかしそうになりながらも、笑みを浮かべていた。


「それじゃ、今日も試してみようか。これで最後にしよう。流石にこれだけ連続で成功したら間違いないって」

「そうだね。今までの四回は成功したし、きっと今回も成功するよ」

東堂と杉崎が校庭の人が少ない場所で話している。杉崎が東堂に超能力の件を話してから日が進み、彼女の超能力を検証するのも既に五回目となっていた。

「しっかり見ててね」

そう言うと杉崎はコイントスをした。

「さあ表と裏、どっちでしょうか?」

「正解しても失敗してもいいことが起きるってわかってるじゃない」

東堂が怪訝な顔をしている。どうやら彼女たちは、過去の四回の試行で表裏の正解を言い当てなくても良いことが起こることを検証済みのようだ。

「いいの、なんだかこっちの方が雰囲気あっていいでしょ」

杉崎は少しプンプンしながら東堂に反論した。超能力のことについて打ち明ける前と比較すると、遠慮がちだった杉崎の東堂への態度が少し和らいでいるようにも見える。

「そういうもんかなー。まあ、いいや、それじゃ……いった!」

東堂がコイントスの表裏を言おうとしたとき、ボールが彼女へ向かって飛んできた。

「なにすんのよー、こらー」

そう言いながら東堂は、飛んできたボールを校庭で遊んでいた男子生徒たちのもとへ投げ返した。

「ごめん、杉崎。ええと、コイントスだよね」

「その東堂さん、こっちこそごめん。手に持っていたコイン、さっきのボールで驚いて落としちゃって。ちょっと待ってね」

そういうと杉崎がしゃがんで落ちたコインを拾う仕草をする。杉崎がコインを拾っている間、東堂は周囲を見回していた。またボールが飛んでくるのが嫌だったというのが理由だが、そのおかげでたまたま別の危険に気づくことができた。

「危ないっ!」

東堂が大きな声で叫びながら杉崎に向かって跳躍する。杉崎は東堂に抱きかかえられながら校庭に倒れ込んだ。

「なに、これ……」

杉崎の目には、彼女と東堂が先程まで立っていた場所に大きな木が横たわっているのが写っていた。校庭に生えていた木が彼女たちに向かって倒れてきたのだ。東堂も振り返って木を視認したが、驚きのあまり口を開けたまま動けないでいた。

「おい! 大丈夫か!」

木が倒れたときの音で、教師陣が慌てて杉崎と東堂のもとへやってきた。

「あ、あの、だ、大丈夫です。私と杉崎に怪我はないです」

杉崎は泣き出して何も返答が出来ない状態だった一方で、東堂は呆けているが簡単な受け答えは出来る状態だった。そのため、東堂が自分たちに怪我がないことを教師に伝える。その後、彼女たちは念の為、保健室に運ばれることとなった。

「あの、あれってもしかして……」

保健室で落ち着いた杉崎が東堂に問いかける。

「わかんない。今まで良い事しかなかったから。なにがなんだか……」

杉崎は、先程起きた件が自分の超能力のせいなのではないか疑っている。ここではっきりと杉崎の超能力なのだと言ってしまうと、彼女は自分を責めようとするだろう。そう判断した東堂は杉崎の話をはぐらかす。

「コイントスに答えなかったのがいけなかったのかな。今までそんなの試したことなかったから……どうしよう、あんな怖いものだったなんて」

「杉崎! あんたのせいだって決まったわけじゃない。もうこの話はやめよう」

杉崎はそのまま独り言を話し始めるが、東堂がその話を強制的に打ち切らせた。その会話を最後に杉崎と東堂は疎遠になり始め、以降、彼女たちは超能力について検証することはなくなった。

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