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サイキックス  作者: Ken
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第3話

 財部と名乗った男は、超能力者技術研究所、通称”技研”の職員だと言う。そもそも超能力者技術研究所とは何だ?そんなもの今まで聞いたことがない。

「技研について知らないだろうから一応説明しとくね」

こちらが何も知らないことを察してか、財部が説明を始める。

「技研は主に四つの目的を持って設立された組織なんだ。一つ目は超能力とそれが発生した原因の調査。二つ目は超能力を研究する他組織、地域への密偵、三つ目は有益な超能力者の捜索、確保。四つ目は所属している超能力者の強化」

超能力やそれが発生した原因はまだ解明されていない。そのため、それについて研究している人や機関は多数あり、一つ目の目的については特段気になる点はなかった。しかし、二つ目以降の目的に関して、この国で許される方法で達成出来るのか強い疑問を抱く。特に四つ目は、俺が知る限りでは殺人を犯さなければならないが、そのようなことが許されるはずがない。

「晴間君、君の考えていることを当てようか?技研が危ないことをしている犯罪者集団か何かじゃないかって考えてるでしょ」

「それは……だって、超能力者を強化するためには他の超能力者を殺さないといけないんですよね?それに他の目的もスパイや誘拐に関係してそうで、まともな組織には思えないです」

先程、財部から殺しはしないと聞いたため、安堵から素直な感想を述べてしまった。口に出した後、もう少しぼやかして言うべきだったかと焦ったが、財部は技研に対してネガティブな印象を口にしたことを気にしている様子はなかった。

「ああ、超能力の強化方法については知っているのね。確かに、我々は目的達成のためなら人を誘拐したり、殺したりすることもある。でも、基本的に技研の職員が罪に問われることはない」

「そんな馬鹿な。そんなことして許されるはずない」

「それが許されるんだよ。なぜなら技研のバックにいるのは国だからね」

「はっ?国?」

国がそんな犯罪者組織に関わっているなど信じられず、思わず声が出てしまう。

「信じられないかもしれないが本当なんだよ。超能力に関する研究開発は、国家間で非常に激しい競争が起こっている。その競争に勝つために組織されたのが技研さ。そして競争に勝つためには、多少の犠牲は必要と国が判断したんだ。だから技研の職員は、超能力の研究開発のためなら犯罪行為に目をつむってもらえるってわけ」

「信じられない……そんな危険な集団、すぐに話題になって問題になるはず」

「そう。そうなるだろうから世間には秘密にされているんだよ。そして秘密が漏れないように、技研に関して何か知った者は口封じして良いことになってる。だから綾音は顔を見た君の事を殺そうとしたんだよ」

財部は一拍置いた後、思い出したように続きを話し始めた。

「あっ、何でもかんでも許されるわけじゃないよ。国も悪鬼羅刹を飼いたいわけじゃないからね。例えば、誘拐に関しては、国にとって有益であると技研の上層部が判断した超能力者に対してしか許されない。殺人は技研の秘密を知った者、または治安を乱す超能力者に対してしか許されない」

まだ信じられずにいる。例えそのような制限があったとしても、犯罪行為を免除されるほど超能力の研究開発は重要なのだろうか。自分を含め、それほどの価値のある超能力など見たことがない。

「そんな事が許されるほど超能力は重要なんですか?……自分の能力を見てると、それと引き換えにそんな事が許されるなんて到底思えないです」

「君がそんな事言えるのは超能力について何も知らないからだろう」

財部は少し呆れた様子で話し始めた。

「まず知ってもらいたいのは、多くの経験値を稼いだ超能力者の中には戦闘機や戦車に匹敵する力を持つ者も出てくる。一人の人間に対してそんなものが出てきてトントンになるなんて恐ろしくないかい?」

どうやったらそんなものと同等になるのか、自分の能力からは想像できずにほうけてしまった。

「ああ、聞き慣れない言い回しだったかな。ごめんごめん。超能力を強化することをみんな経験値を稼ぐって言うんだ」

その点が分からなくてほうけていたのではないが、重要なのはそこではないのでそのまま聞き流す。

「次に知ってもらいたいのは、過去に世界を牛耳る事が出来る超能力を持つ者が見つかったということだね。そんな超能力者が見つかったってことで、みんな超能力の潜在的な危うさ、可能性に気づいた。だからどの国も超能力の研究開発になりふり構っていられなくなったってわけ」

「それは……どんな超能力なんですか?その人はどうなったんですか?」

「超能力は、例えば嘘を本当に出来るみたいな、漫画では見るけど現実にあったらとんでもない能力を想像してもらえたらいい。詳細は秘密。で、その超能力者がどうなったかなんだけど、今この国や世界が平和に過ごせてることから、どうなったかは察して欲しい」

実際のところは分からないが、例えで出たような超能力が実在したとして、それが大量の経験値を稼いだとしたらどんな事が出来るのだろうか。きっと犯罪を免除してでも超能力の研究開発を推進するに足るほどのことが出来るようになるのだろう。それらの話を聞いて技研の裏に国がついていることが少しずつ納得出来てきた。

「技研について少しはわかってくれたかな?」

「は、はい……」

「自己紹介と技研について説明は終わったし、それじゃ本題。今日から君にも技研の職員になってもらうよ」

「はっ?」

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