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89 悪者は次の目的地を決める


ゴタゴタ指定うるちにルトラン、セメットが合流し、

もう一人女性の剣士がトレインに連れられてくる。


シンラーツは、何やら不思議がる。

見覚えがあるような感じで思い出そうとしていた。


「さて、ワルモーン様。彼女が案内役としてアナタ方を道案内します。

リーレ、アイサツしなさい」


そういわれるとリーレは直立不動で敬礼して

「ご無沙汰しております、ワルモーン様。

以前は生意気なことを言ってしまい、申し訳ございませんでした。

その上、治療までしていただき感謝しかございません。

リーレと申します、道案内役としてお役目を果たして見せますのでお見知りおきを」

と挨拶してきたのだ。


「ん?どこかで会ったか?」


その言葉にトレインは嘆息し

「彼女は、勇者一団の一人でキミがボロ雑巾にした戦士だよ。

何とか、立ち直らせて、現地戦闘員として引き込んだ。

すでに彼女は死んだことになってたから丁度良かったんだ。

別人としてウチの改造魔物兵を率いる為の研修だと思ってくれると楽ですね」

トレインの安定しない言葉遣いを聞いていたシンラーツは


『まだ、少し毒トレイン状態なんだ。発言に気を付けて置こう』

と思うのだった。


「ワルモーン様、このまま教会の大陸支部を目指すの良いと思われますが、

寄り道をいたしませんか?」

リーレが提案してくる。


「なぜだ?」


「それは、単にワルモーン様のお力が強すぎる為です。

お手元の武器もお強い物ばかりで周囲の損害も大きいのです。

ですので出来れば普段使い用に武器を手に入れられるがよろしいと思われます」


「なるほどな、一理ある。で?どうするつもりだ?」


「はい、幸い教会に向かう前に二つほど町があります。

その一つが鍛冶師の街です。

うまくいけばワルモーン様にあった武器が手に入るやもしれません。

いかがでしょうか?」


その言葉にワルモーンは顎に手を置く。

「そうだな、そうしようか。ルトランとセメットの装備もそこで新調できるだろう。もちろんお前の装備もだリーレよ」

その言葉にリーレは、深々と頭を下げる。


「ありがたいお言葉です。ワルモーン様」



その姿を見ていたシンラーツは、

『もう女性が増えた、困ったな。せっかくの二人旅で楽しかったのに…』

とまったく違うことを考え始めていた。


「では、準備に入らせていただきますので失礼します」

彼女は一礼し、その場を去る。


「まあ、ワルモーン様がやりすぎないようにするためのお目付け役です。

足かせになる人間が多いほどあなたは周囲を意識しますからね。

因みに今回の山を半壊させた件はアクラーツ様に報告済みです」

と、トレインが言うと


「な、なんでそうなる」

慌てるワルモーン。


「報告するのは当たり前の事でしょう。

特にゴクアーク様とワルモーン様は、加減知らずに行動しすぎるところがあります。

異世界に来て特にです。

なのでこの辺りで一度お灸をすえてもらっていかがですか?」

ワルモーンは絶望したような顔になる。


それを見たシンラーツは、

『そうだった、ママには頭が上がらなかったけ。

最近歯止めがきいてなかったしいいか』

なんて思っていると


「因みにシンラーツ。君もお目付け役としてふがいないから同罪でお灸をすえてもらうといいよ」

とシンラーツを巻き込む。


「何でですか?私、暴走してませんよ」


「それでもです。君は新人とはいえ幹部候補生でもあります。

そのキミがワルモーン様の手綱をうまく扱えないと後々困るんですよ。

時間を作ってどこかでお説教を受けてもらいます」


「そんな~」

へなへなとその場に座り込む。


その姿を見ていたセメットは

「何かさ、力は人外なのにこんなやり取り見てると

ほんわかするね」

とルトランに耳打ちする。


「まあな、人の身であそこまで行ける事を見せてくれるワルモーン師匠に

オレは追い付かないといけない」


「カッコイイこと言うね」


「せっかく鍛えてもらってるんだ。それに答えたい」


『なんかワルモーンさんの考えが伝染してるみたい』

とセメットは優しい目で見ていた。


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