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88 悪者は気にしない



ワルモーンが執務室を後にし、領主の館を出るとそこには

ミツーグレディーとその配下が立っていた。


彼女らはワルモーンの姿を見るとその前に跪く。

「此度の件大変ありがとうごさいます。

我らが大願成就の為の機会を頂きありがとうございます」


「そうか…事は済んだか。どうする?

もう組織から抜けて平和に生きても構わんのだが…」


「いえ、まだ。過去に囚われて縛られている仲間もいます。

彼らがその呪縛から解放されるまでは、我たちは組織に残ります」


「まったく…頑固者が多い。呪縛を断ち切ったんだから平和な世界に戻ればいいだろう」


「そうね、そうなのかもしれないけど。

力が強くても年下で頑張ってる子たちを

見捨てるほど人でなしではないわ~。

だから、手伝わせて~。それに異世界でも同じことに苦しんでる人がいるのにそれをほうっておけないわ~。ホント嫌になるわ~、ゴクアーク様のがうつったのかもしれないわ~」

と言いながら立ち上がる彼女に笑顔が見れる。


「仕方ない、組織に残るのであればこの町での活動を命じて置く。

ミツーグレディーよ、きちんとこの町を侵略しておくことだ。

いずれは、ゴクアーク様も視察にいらっしゃるだろからな」


「わかったわ~、まかして~。その代わりあなたもさっさと教会を潰してきてね~。

なんか無駄に正義だの神の御心のままにとかいう連中だから邪魔だわ~」

と、しれっと教会側をディスる。


「そうだな、まずはこの世界の正義の巣窟を潰すことにしよう」

ワルモーンは揺らぎのない信念で見据える。


「でもさ、ソレどこにあるの?」

シンラーツは、素朴な質問をすると


「知らん!」

と、胸を張るワルモーン。


「何やってんの?とりあえず現地調査員と行動した方がいいですね。剣士と魔法使いは連れ立っていた方がいいですね」

と、トレインが冷静に話を進める。


「そうなのか?」

ワルモーンは相変わらずである。


「ホントに考えてるときはすさまじい勢いでアイデア出してくださるのに、

ポンコツになりやすいのは相変わらずですね」

トレインが呆れると


「トレインさんが毒舌モードに入ってる」

シンラーツが慌てる。


トレインは普段は沈着冷静の大人な男性。

でも、ある程度のストレスが許容範囲を超えると毒舌になる。

それは誰でも構わずだ。


諜報員であり、驚異の言葉の刃をばらまく恐ろしいほどのツッコミが炸裂する。


「やかましい純愛奥手乙女が。

そういう人を冷静に分析するのは、思いを見事伝えてからにしなさい。

不愉快です」


「うぐっ」

シンラーツにクリティカルヒット。


「まあまあ~、トレインもそこまで言わなくても~」

ミツーグレディーが、間に入ると


「何ですか、すっきりした顔して。お姉さんぶる割に中身が親父のくせに。

酒でも飲まして差し上げましょうか、酒癖最悪の下ネタ全開しますか?

この残念おっさん娘」


「ざ、ざんねん…」

気にしていたのかその場に膝をつき両手をついてしまうミツーグレディー。


「まったく、あの顔面凶器の分際で乙女心全開のオッサンがきちんとしつけないからこうなる」

トレインが、切れ味抜群言葉を言いまくる。


この言葉に別の場所にいたゴクアークはくしゃみをする。

もう完全なとばっちりだが、このことをゴクアークは知らない。



流石は、アクラーツの配下と言ったところである。

落ち着いた普通な人の訳はないのだ。



「すまんな、どうやら無理をさせすぎたようだ」

ワルモーンは、普段道理に話す。


「そうですよ、面倒ごとばかりこちらに回して。

結構大変なんですよこの熱血爆走単純小僧」

トレインの毒舌は続いている。


「まあな、ウチの後始末は全部諜報部に任せてるからな。すまないと思っている」

ワルモーンは、気にしない為こうなったトレインの対応係になっていた。

他の人が間に張れば、その毒舌に立ち直れなくなるまで口撃を受けることになる為だ。

唯一付き合えるのが、アクラーツとワルモーンだけなのだ。


「ホントに思っているんですか。無自覚人たらし朴念仁」

と、トレインの毒舌をまともに受け流せるワルモーン。

その後、彼の気のすむまで罵倒は続いた。



その後、シンラーツは、きちんと謝った。

当のワルモーンは気にもしていなかった。

そのことにさらに凹み両膝をつくシンラーツの太ももに

シアンウルフの蒼月が前足を軽く置いて慰めていた。



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