86 領主は悩む(特に悪の非常識ぶりに)
領主は、頭を抱えていた。
確かに悪の組織よりではある。
教会は最近権力を持ち出したせいか、強気に発言し、
金銭も求めてくるようになっていた。
これはまずい傾向なのは火を見るより明らかだった。
そこに現れたまったく部外者で完全抵抗組織が動いてくれるのは
正直助かってはいた。
なんせ、教会にものいいを突きつけることが出来るのは、ありがたい限りだ。
矢面に立たなくて済むからだ。
なのだが、今回は沿いていを超える派手さ加減だ。
王国から来た騎士団を魔物の一団もろとも壊滅させた。
それもたった一人で、どゆこと?
報告を聞いて何事とおもってしまうほどの非常識ぶりだ。
彼女も良識はあるつもりではいたが、常識の外にいる彼らの存在に困り果て始めている。
これは、本格的にどちらに着くかはっきりしておいた方がいいのかもしれないと思うまでに。
普通に考えれば王国につくのが当たり前の選択なのだが、
悪の組織が町に貢献してくれていることを考えれば、簡単に答えが出せない。
領民からは評判が良すぎる。
この状況で彼らをないがしろにすれば、暴動騒ぎが起きるのではないか。
しかし、たった一人で地形を変え、一軍を壊滅させる。
一人でだ、まだそれが出来る人間たちがいる組織だ。
もう混乱でしかない。頭を抱えるしかない状況だ。
『何?あの歩く非常識。ホントに人間なの?』
更に困らせるのは、彼らが悪を自称しているところだ。
『これで正義を語ればいいのに…なんで悪なのよ。もう何考えてるかわからない』
常識人にはもう何が何やらわからないことだらけである。
「でもどうされますか?王国側からは再三の報告が催促されています。
その上に今回の件が加わることは間違いないと思いますが」
補佐官が、領主に助言すると
「そうなのよね、ここでもう選択するしかない状況ね。
普通に考えれば、教会の腐敗に王国の混乱と悪の組織による問題解決。
天秤にかける必要もないけど…」
「そうですね、ゴブリン問題を解決解決しつつある地方はすでに安定に入っています」
「もう面倒ね、どう考えても答えなんて出てるのにね。
やっぱり何で決断できないのかしら?」
「領民の事考えすぎるからですよ、特にあなたは。
だから町を左右する決断を躊躇うんでしょう」
「そうね、何が一番なんてもう決まっているのにできないのはそれが理由ね。
でも、決めないとね。決めた先が最悪になっても決めないといけない」
「そうなると彼らの信念は素晴らしいですね。まっすぐすぎるほどに」
「後悔しようが苦しもうが選択しないといけないわね」
そう思いにふける領主である。
 




