81 乱戦に悪者が参戦する
ブルーに狙いを付けたワルモーンに黒い影が割り込む。
大型の狼魔物がワルモーンに襲い掛かる。
纏う雷すらもものともせず、狼の前足の爪が振り下ろされる。
その爪が振り下ろさるれ前にワルモーンは、手で受け止める。
それでも力は熊どころの話ではないほどの膂力が襲い掛かるのだが、
ワルモーンには何が?程度にしか見えない。
普通なら大型トラックが降ってくるほどの重さが、彼には通用しない。
しかも掴まれたことで狼はその場から動けないでいる。
「犬ころが、邪魔だ」
その一言を言うとそのまま掴んだままの腕を振り、狼を投げ飛ばす。
狼が飛ばされた先には土煙が舞い上がり乱戦をさらに混乱させることとなる。
それでも魔物たちは、果敢にもワルモーンに挑むが全てが無駄となる。
ワルモーンに近づく前に黒ずみになるか、近づいてもまるで虫を追い払いように魔物どもを吹き飛ばす。
それを繰り返しながら魔族の前に立つワルモーン。
魔物の返り血を浴びているのだが、全て纏う雷で黒ずみに変えていた為、黒い煙が舞い上がるほどである。
邪悪な笑みを浮かべ、黒い煙が舞い上がり、雷を纏う。
どこの魔王か疑うたたずまいである。
その魔人を前に魔族は嬉しそうに見る。
自身が全力で戦っても構わない化け物が居るからだろうか。
「面白いぞ、人間。貴様なら我を楽しませてくれるのか?」
「楽しませるつもりなんぞない。貴様をねじ伏せ、我が組織に組み込む。
貴様ほど魔族なら、さぞ良い戦闘員になるだろうさ」
「我を従えるつもりか、人間。思い上がるなよ、貴様ごときが我に勝てると思うなよ」
と、魔族は激高する。
「何を怒る。貴様は我らの【悪】の組織に選ばれたのだぞ、誇れよ」
と揺るぐことの無いワルモーン。
その言葉が、開戦の狼煙となる。
炎と稲妻の嵐がワルモーンを襲う。
魔族が先手で魔法を放っていた。
ワルモーンの周囲にいた騎士や魔物を巻き込み半径10mが、嵐の中になる。
その中に不幸にも巻き込まれた者どもの悲鳴が響く中、ワルモーンは動かない。
すでにこと切れたか、と魔族が思ったその時、嵐が吹き飛ばされる。
嵐が吹き飛ばされた後を見るとワルモーンが右腕を振り上げていた。
ワルモーンの顔は、何が?みたいな表情を浮かべていた。
「手品にしては、30点だ。もう少し頑張れよ魔族。せっかくオレが貴様の実力を面談してやっているのだから」
煽る言葉に悪気が無いのが、恐ろしい。
「貴様ごときが…我より上を行くなどありえんわ~!!」
氷の針が何十本と空中に現れる。
それを見てもワルモーンは引かなかった。
だが、その時不意にワルモーンの背中に攻撃が突き刺さる。
あまりの衝撃にワルモーンもよたつく。
振り向けばそこには弓を構えたブルーが立っていた。
弓も先ほどまで使っていたものではなく、戦隊のガジェットの改良版である。
威力も上がっている特別製だった。
流石に苦悶を浮かべるワルモーン。
更に先ほどの魔族が展開していた氷の針が襲い掛かる。
「ふん、シルバー。お前相手にまともに戦うかよ。魔族と削りあってくれればいい、その後オレがおいしいとこ取りだよ」
と、ヒーローとは思えない言葉を飛ばす。
で、魔族は魔族で
「我との戦い中、気を散らすと余裕だな人間」
と、口元歪ませる。
不意打ちでも勝ちは勝ちと思う魔族。
ヒーローとは思えない手段を当たり前に行うブルー。
それに挟まれるワルモーン。
そして、魔物に手を焼く騎士団。
数と勢いに任せて進む魔物。
という図式が出来上がる。
それを遠目で見ていたトレインは、諦め口調でつぶやく。
「これは、やったか?」
そこに
「あら、ボスが我慢してるじゃない」
と、彼の横に立つ妖艶な女性が一人立っていた。
「ミツーグか、割と早かったな」
「そりゃそうよ、ボスが決着付けさせてくれるなんて言えばすぐに皆で駆けつけるわ」
「そうだな、なんだかんだ暴走気味になるが、言ったことは確実にこなしてくれる方だ」
「ホントよね~。有言実行タイプなんているとは思わなかったわ~」
「オレたちもイエローを倒せた。でも残ったのは空しさだけだ。それでもやるか」
「当然よ、私たちはブルーのせいで先に進めなくなったのよ~。進むためにはケリをつけないといけないわ~」
「確かにな、それは理解できる」
「そうでしょう~。だからやるわ~たとえ空しくなってもよ~」
その後の言葉は、なかった。
その決意がどれだけの物か理解はできていたからだ。
二人はワルモーンを見守る。
「でも、大丈夫かね」
「そうね、ボスあれでも結構めんどくさがりだから~
全部吹き飛ばすかもしれないわ~」
と、憐れむように戦場を見る二人。
その目が向けられているのは誰にだろうか?




