78 悪者は観察する
年末臨時更新です。
今年もお世話になりました。
来年もよろしく。
ミゾレ町から離れた山の麓に開けた場所があった。
そこは道が二つに分かれており、片側は王都に片側は山脈中央に向かっていた。
山脈中央には魔物の巣窟と呼ばれるところがあり、よく魔物があふれかえり大惨事になりやすい場所でもあった。
何故、魔物があふれかえるのかはわからないが、その近くには砦が作られ防衛線になっていた。
王都からある一団がミゾレ町に向かっていた。
青い鎧に身を包み弓を背に腰に剣を携えた若き男性が教会騎士団を引き連れ行軍している。
青い鎧の若き男性は同じような青い鎧を着た若者たちを引き連れていた。
「あいつか…やっかいな。魔族軍も厄介だが、厄介と厄介が戦うとどうなることやら」
と、それを見るワルモーンはつぶやく。
二つの集団が、向かう先は同じで目的は異なり、味方になりえない状況だと鉢合わせすればどうなるかは想像するにたやすい。
ワルモーンは、それを狙っている。
あわよくば共倒れ、良くて消耗して、片方は全滅が理想である。
「両方がうまく激突してくれればばいいのですが…」
トレインが、ワルモーンのそばで二つの集団が激突する事を期待していた。
「それが最善かな。特にブルーとはあまり対峙したくないな」
その発言に違和感を感じたトレインは、
「珍しく弱気ですね。力の差は歴然だったと思いますが…」
「あいつは絡めてがうまいんだよ。正攻法なら簡単に倒せるんだが、一度でも見失えばあいつのペースになる。それが大変なんだ。戦隊に潜入している時もからめ手を使われると手も足も出なかった。乱戦ならそれを使われるかもしれない。正義の味方の割には悪どい手もお手の物だからな」
そこまで悪者に言わせる正義の味方もいかがなものかと思うトレイン。
「いっそこちらにスカウトしてはいかがですか?結構な逸材のように聞こえます」
「それも考えたんだが、動機とちゃろんぽらんな性格はどうにもな。すぐ裏切る可能性しかない。アレはそういうタイプだ」
と、しみじみ言ってきたのだ。
「それの面倒な話ですね、よくそれで正義の味方をやっているものです」
「まあ、そうだね。できれば乱戦に入ったら不意打ちでもいいからあいつをここで始末しておきたい」
「その場合は、どうします?ミツーグ・レディとその配下も呼びますか?」
その言葉にワルモーンは少し思案して
「そうだな、呼び寄せておいてもいいだろう。頼めるか?」
「はっ、配下に指示を出しておきますが…乱戦もすぐに終わるのでは?」
「いや、無理だろう。あいつが正面から勝てるように感じない。激突して乱戦に入って長期戦というところだろう。下手をすればこちらの街に救援を求めてきて巻き込まれるかもしれん」
「巻き込むことが前提なのですか?」
「そうだ、あれは何でも巻き込んで押し付けることが多い。だから厄介なんだ」
トレインは少し考え、
「ならば様子見ですか、それともミゾレ町の領主に兵団の要請をしますか」
尋ねると
「そうだな、それも考えに入れてくれ。あくまでも防衛を意識してもらってな」
「ですが、それでは被害が出るのでは?」
「それも考えがある。コーツ博士か送られてきた例の改造魔兵があるだろ。あれを使う」
「アレを使うのですか、まあ試験運用ですか?」
「そうだ、元は害獣扱いだ。使い捨てても問題なかろう」
「使用情報が手に入れば問題ないと思います。今どのくらいいるのですか?」
「送られてきたのは50、本部にいるのが2000と言うところか。あちこちに居るからな、一匹見つけたら100匹は確実にいる。捕まえ放題だ」
「なんかGのような扱いですね、まあそれなら元ネタには困りませんね」
「まあな、この世界での戦闘訓練がてらに捕獲させればいいだけだ。迷惑な害獣を潰してこちらの労力に変える。ある意味便利な魔物だよ」
「なかなか、悪者っぽい発言を言うようになりましたね」
「悪者っぽいではないよ、悪者だよ私は」
邪悪な笑みを浮かべるワルモーン。
「そうでしたね、最近感謝されることが多いので忘れていましたよ。
我々は無自覚で歪んだ正義を駆逐するための【悪の組織】でした」
「そうだ、我ら悪の組織に常識などいらん。非常識おおいに結構、変人変態大歓迎だ」
「変人はともかく変態は控えてもらえると助かります。たまに話が通じないモノもいますので」
「それは、断言できない。そいつが悪ならば我らの仲間にする」
「ぶっ、ブレませんね」
「オレの信念をかけているからな」
「まあいいですが、慎重に動いてくださいよ。
軽率な行動は控えてください。
アナタは、勢いに任せるところがありますので。
アクラーツ様からも言われているのでお願いしますよ」
「それは、断言できない」
「…え~」
と、おもり役になったトレインの嘆きが響く。




