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77 悪者、かみ合わない話をする


シンラーツは内心焦る。

というか表情は慌てている。


自分の子供じみた癇癪で喧嘩別れした相手といきなりのご対面である。

バツの悪い事この上ない。


その上にルトランの思いも、ワルモーンの思いも理解できているため、

非常にバツが悪い。


更に素直になれない自分の気持ちがさらに拍車をかける。


素直に謝れば済むことなのにできない変な拗らせ方になっている。


当のワルモーンは「来ていたのか」とそっけないにもほどがあることが、

簡単な問題をこじれさせることになる。


ワルモーンは彼女に興味もなく、通り過ぎてルトランの元に向かう。

そして、何やらアドバイスらしきものをして、補充の資材や食料を渡して立ち去ろうとする。


シンラーツからすれば自分を完全スルーで自分の生徒にアドバイスをして

立ち去ろうとする姿にどうかかわればいいか混乱する。


慌てて「待って」とワルモーンを引き止める。


「どうした?」


「あの子に何を言っていたの?」


「ああ、集中力の緩急のつけ方と剣に込める力加減を教えた。

何もアドバイスせずに放り出しただけだからな。さすがにまずいと思った」

と、そっけない回答をして

「そうだ、それにすまなかった。お前の意見も聞かずにこんな試練を生徒にやらして。あいつの男気に当てられたとはいえ、先生のお前に対する配慮が足りな過ぎた。すまない」

と、言って頭を下げてきたのだ。


それにさらに慌てるシンラーツ。


謝るつもりいたシンラーツからすればカウンターを食らった状態だ。


しかも素直になれない乙女には、かなりの精神的ダメージだ。


「私もごめんなさい」

彼女はこのタイミングで勇気を振り絞り謝った。

このタイミングで謝らなければこじれる一方だと思ったからだ。


心の中では素直にならないといけないと思う一方で

態度は、ふてくされて見せてしまう。


なんとも微妙な乙女心である。


「そうか、なら後は頼む。まだ用事が残っているんでな」

と言うとワルモーンはさっさと帰っていた。


その姿をみて、何とも言えない感じで取り残されるシンラーツ。


その二人の姿を生暖かい目で見つめる彼女の生徒たち。


「なんか可愛いな先生」


「あんな姿見るとホントに歳が近いんだなって感じるね」


「ワルモーンさんは相変わらずだけど…な」


「仕方ないわよ、あの人結構な鈍感さんだから…」


「でも、職人気質というか、まじめすぎるというか」


「でもだから信用できたんでしょ」


「そうだよ、あの人は師匠と呼べる人だと思う。だからこそあの人に認められるためにこの課題はこなして見せる」


「わかったわ、それじゃあ頑張ってね。男ぶりが上がって帰ってくるのを待ってるわ。まあ、強くなるのは私が早いと思うけど」


「そうかもな」


なんて、会話も聞こえないほど、混乱していたシンラーツであった。



〇このくだりを忘れてしまうほど慌てていた作者紡ぐ、

悪者を語るくせにそう見えない人たちのコメディーである。

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