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68 教団との戦い6(終わり)



ワルモーンが交渉の場に来ると話はすさまじく早く進んだ。

いや進んだのではなく、済んだ。


彼の姿を見て司祭長以下、教会関係者が恐怖に顔を引きつらせたのだ。

目の前の惨劇を起こした張本人、最早魔人と言っても過言ではない者が現れたのだ。


司祭長以下、教会関係者たちは、さっきまでの強気はどこに行ったのか?と思うくらい委縮した。

そして、不満たらたらで条件をのみ、その場を去っていったのだ。


それを見て、安心するネットとまだ言い足りないトレイン。

そして、話が無事に終わり安心する常識人と一般人の方々。


ワルモーンは面倒そうにし、シンラーツはその状況を見て乾いた笑いを浮かべる。


状況の整理と話しやすい場所をと言うことで領主の館に移動することになる。


ワルモーン御一行は、領主の館大広間に入ることになる。

家具や調度品は豪勢とはいかなくても機能性の高い美しいものが使用されており、

質素に見えてお高いものでまとめられている様に見える。


領主自身も実用性重視があちこちに見受けられる。

大広間にある大人数用のテーブルがあり、そこにワルモーン御一行は腰かける。

出されたのは、お茶と茶菓子。

そこそこなものだ、賓客として扱っていることが見受けられる。


「すまないねえ、なんかゴタゴタが長引いて。今回の仲介は断ったんだけど教会側が引かなくてね、ホントに困ったもんさね」

と、席について第一声をため息交じりで吐く領主殿。


「いえ、こちらこそすいません。ウチの揉め事に領主様を巻き込んでしまい申し訳ないです」

恐縮するように村長は答える。

彼からすれば話が大事になって困っているようだ。


「そうだな、こちらとしてもすまないと思う。向こうの言葉に乗ったと言え、意味のない戦いを起こしたのだ。申し訳ない」

ワルモーンは席を立ち、頭をさげる。

それに合わせて悪の方々は動きを合わせ頭をさげてた。


「頭を上げておくれ。しかた無いよ、アレは。神職者がやることじゃないよ、もう権力者になってるからねアイツらは」あからさまに嫌そうな顔をしてほうづえをつく。

領主の言葉に従い席に座る御一行。


「何かとお困りのようで」

トレインが口を開く。


「そうなんさ、アイツらことあるごとに『神の名の下に』で話を持っていく。それならそれでいいのかもしれないけど、それをかさに権力者のようにふるまう。それが問題なのださ、宗教関係者が権力を持つとろくなことにならないのに。アイツらはそれが理解できていない、困ったもんさね」

しかめっ面でほおづえつく領主。


普通この場合領主などの上位貴族は、感情を表に出さない腹芸をこなすのだが、

彼女にはソレが無い。

余程腹に据えかねていたのだろう、素振りすらない。


「では、表立ってできないのであれば我々が教会を潰しましょうか?なんせ【悪】なので」

悪い顔全開でトレインがささやく。


「それは、ダメだ。宗教弾圧などすれば次に来るのは紛争になる」

すぐさま反論したのは、ワルモーンである。


「しかし、それではどうすれば・・・」


「頭を使え、トレイン。教会としての立場は残せ、その上で金や権力を求める者をあぶりだし風潮しろ。民意を味方につけてから排除するんだ。そうせんと後が面倒になる」


「なるほど、教会を正常化するわけですか。本来の役目である相談と癒しの場として」


「そうだ、古今東西。宗教が金と権力を持つとろくなことがない、なんせやることが過激だからな。

なんでも神の責任にすれば、済むんだから。便利な使いかたをするものだよ、自分たちの神様を」


「了解しました、ワルモーン様。お任せください」

トレインは席を立ちワルモーンに一礼する。


「いや、待ってくれるかい。その提案はウチとしてはありがたい限りだが、今度はウチが標的とされないかい。私個人に攻撃が来るのは構わんが、領民に飛び火するのはかなわないよ」

慌てて立ち上がる領主。


「落ち着いてくれ、こっちはそんなことをさせるつもりはない。もちろんこちらの条件を受け入れてくれることが前提となるがな」

ワルモーンは静かに言うと、


「我ら【悪】の組織と同盟を結んでいただければいい。ただし、【悪】と同盟を結べば他から同類に見られることになる。その覚悟があればの話だ」


「なるほどね、提案を受け入れればミゾレ町は悪徳の街に。受け入れなければ教会の悪政に下るわけかね。なかなかシビアな選択さね、私の一存でも構わないが一応議会を通す必要がある案件だね」

席に座り渋い顔をする領主。


「まあ、その辺りはそちらの都合だ。好きにしてくれ、だだしそんなに時間はないだろう。こちらも返事を待ってやる暇もない。なんせ同盟を宣言したツカ村の復興が先となる。返事がないこの町にくれてやる好意もないしな」

ワルモーンは、静かに語る。

自分たちが慈善事業をしているのではない事を明確にしている。

立場的なモノだろうが、確かにその言い分は筋が通っているのである。


「そうさね、早めに答えを出すさ。ブナカ地方をまとめたアンタたちを敵にはしたくないしね」



話は、ここまでとなる。

先はまだ長いのだ。




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