67 教団との戦い5(戦場後に)
惨劇の舞台に立つワルモーンは、ふてくされていた。
せっかくの悪役らしい舞台なのに余りのも反撃が無いためだ。
相手は逃げていくので追いかける気にもならない。
歯向かう者もいないので仕方なくシンラーツの元に戻る。
戻ってきたワルモーンを乾いた笑いで迎えるシンラーツ。
彼の姿は、悪役と言うよりは魔王、魔人、虐殺者に見えるからだ。
黒い鎧に返り血がいっぱいで、やたらとデカい包丁を持っている。
どこのホラー映画なんだろうと、思えるいでたちである。
「お疲れまですワルモーン君」
満面の笑みでねぎらうシンラーツに対し
不満げなワルモーン。
「つまらん、ここは正義の者として挑んで来るものじゃないのか。
仲間の仇を、とか。おのれ悪め、ここでお前の歩みを止めて見せるとか。ないのか」
と特撮ヒーローのセリフを吐いて立ち向かってくる奴を期待していたようだ。
実際はそんなこともなく、ただ恐怖を浮かべ逃げ出すばかり。
それが不満で仕方ないようだ。
「あそこまで完膚なきまでにやっておいてそのセリフ言える奴なんていないでしょう」
「いや、こちらを【悪】と言うのなら正義を喚くものとしてそのくらいをほざいて立ちふさがるのが礼儀だろう」
なんでそれが礼儀なのだろう?
そう思い、
そんなわけないでしょ、テレビの見過ぎだよワルモーン君。
と、ツッコミを入れたいのだが落ち込んでいる彼がかわいそうに見えてしまいグッとこらえた。
話しが長くなりそうだから。
「まあ、それは置いといて。ネットさんが困ってるみたいなのよ、助けに行こうよ」
と、言うと驚愕の表情を浮かべるワルモーン。
それを見ると割と新鮮だな~と思うシンラーツ。
「どうしたのだ?まさか向こうの方が奴らが手間取るほどの手練れがいいるのか!」
と、シンラーツに詰め寄るワルモーン。
いきなり近づかれ照れながら慌てるシンラーツ。
「落ち着こうよワルモーン君。そうじゃないから、君が考えて居るような状況になってないから」
両手を前に出し落ち着かせようとしている。
本人も少し照れたまま顔を横に向ける。
それが更にワルモーンを慌てさせる。
「どうしたシンラーツ!!何か細菌兵器か生物兵器の攻撃を受けたのか!!」
と、トンチンカンな事を聞いてくる。
「いや、違うから。まずは落ち着こう、ねっ落ち着こう」
と言いながら、照れてはいるが彼の顔をキチンと見る。
彼女からすれば幼馴染である。
不器用くそ真面目のおせっかいを絵にかいたような男性だ。
彼女の状況は・・・まあ、お約束状態である。
「大丈夫なのか、本当に大丈夫なのかー」
「ええ~い、落ち着かんか!」
シンラーツのチョップがワルモーンの額に叩き込まれる。
それで落ち着いたのか、少し平静に戻る。
「す、すまんな。慌ててしましまった、大幹部なのだから冷静にしないといけないのにな」
普段慌てないワルモーンが自分のために慌ててくれたことが、うれしく思うシンラーツ。
照れながらも口元が緩む。
「私は大丈夫。ネットさんたちがもめてるんだって。向こうのさんが、正義だ、善だと言い出したものだからトレインさんが【悪】を熱く語り始めて、大混乱になって何とかしてほしいって助けを求めてるの」
「ん?別に問題にもならんだろ。普段ため込んでいるトレインがムキになっているだけだろう」
と、何がオカシイんだソレという感じで不思議そうな顔で言うワルモーン。
ああ、そういえばこの人もこういうタイプの人だ。
変なとこ真面目だし、だからこそ・・・なんだけど。
と、思うシンラーツ。
照れて困っていた状態から諦めに変わる。
「まあ、そうなんだけど。収集つかないみたいだから、ねっねっ行こうよ」
「いや、問題ないだろ。向こうに我らと同じだけの力があるわけでもないだろう、疲れればやめるだろう」
とまるで他人事のように答える。
「それはそうだけど、ネットさん困ってるから。行こうよ幹部でしょおが!」
あからさまにめんどくさそうなひょじょうを浮かべ、
「いや、邪魔するのもトレインに悪いしな。まだ、完全に侵略していない村の件も残っているしな」
と、思案するように空を見る。
「それもわかるけど、部下のフォローはしないとだめでしょ」
「なんでも手助けしすぎるのも、な」
「それもわかるんだけど・・・あああ~話が進まない。行こうよワルモーン君、めんどくさがらずに!」
と語尾を強めに言うシンラーツを見て、小さく嘆息する。
「仕方ない、行く事にする。手柄を横取りするようで嫌だが、お前に助けを求めている事態でもう面倒事に突入しているのだろう。非常に不本意だがな」
とワルモーンは観念したのかネットたちの所にいく事を決める。
〇このくだりを忘れるのだが一応コメディである。




