66 教団との戦い4(舌戦)
一触即発の状況の中、冷汗が止まらない常識人が二名。セメットとルトランである。
彼らは、一般人であるツカ村の村長(壮年の男性)とミゾレ町領主様∔護衛を護衛する立場にあった。
なのだが、ノリノリで煽る司祭長と冷たくあしらうトレイン。
もうどうしていいかわからない状況である。
そんな中、教会側に憤るツカ村の村長(壮年の男性)をなだめ、ミゾレ町領主様(壮年の女性)に説明し、と大わらわになる。
更に目の前で行われる戦闘という名の惨劇。
もう次から次へと起こる問題の説明に対処にへとへとになっていた。
「えっとさ、セメット。もう逃げていいか」
「あら、奇遇ね。私もそう思ってたの」
「でも、この状況は・・・ダメか」
「そうなるよね、普通」
横で行われる大舌戦に若干?絶賛引き気味の二人は逃げ出したかった。
でも、持ち前の真面目が裏目に出ていたのだ。
「確かトレインさんって結構温和な人だったよね」
「そうだよね、そう感じたよね。でも、やっぱりワルモーンさんと同類なのよ。アホな正義は許せない所とかさ、特に」
「なるほどね、オレたちもそう思うから彼らと一緒にいるんだけど・・・やばくないか?」
「やばいどころじゃ無いわよ、私たちと村長と領主様の身の安全は大丈夫として。
あの教会の人はどうだろう?」
「ムリだろう、あそこまで言ってもダメなんだぞ。話なんて通じないだろ」
「ああ、教会と全面戦争か・・・まあ、被害が出るのは向こうだけだろうけど。もう少し抑えてくれると楽なんだけど・・・ダメよね?」
すでに彼らの中では悪の組織がいかに異常な所か理解できていたからこその発言になる。
それに目の前で見せられた惨劇が、自分たちの認識を確実なものにしていた。
「ムリだろ、見てみろよ。戦ってるワルモーンさんの顔とここに居るトレインさんの顔。
ものすごく悪い顔してるじゃないか。だいたいアホな事しか言わないんだよ、アレ」
「そうだよね、ホント。ワルモーンさんたちは【悪】って宣言してるからいいけど、教会の人があれってどうなんだろね。見てて、どっちが悪役なんだかわからない時があるよね」
と同意を求めるセメット。
それに頷くルトラン。
二人は小声で状況を冷静に見ていた。
【悪】の組織の現地戦闘員見習い扱いの二人は、まだそれほど組織に染まっていない。
つまり、常識的な考えで行動していた。
だからこそ、ワルモーンは二人に一般人であるツカ村の村長(壮年の男性)とミゾレ町領主(壮年の女性)の護衛をさせていたのだ。
それでも常識人の許容量を超える出来事で一般人の方々の思考は大炎上である。
その説明に疲れ果ててきたとこでこちらでもゴングが鳴る。
もうどうにかしてほしい状態なのである。
安全は保障されている。【悪】なんて言っているけど、味方と一般人に対してはすごく紳士的に行動する人たち。
ただ一つの事を除けば、彼らは【歪んだ正義】が大嫌いなのだ。
その被害者の会みたいな組織だからもあるのかもしれないが、【歪んだ正義】に対する反発がすさまじい。
「なあ、もう逃げないか?いたたまれんのだが・・・」
「そんな事してシンラーツ先生の訓練が増えても知らないからね。アンタがそういこと言って何度訓練量倍増されたと思ってんの?あんまふざけてるとまた【悪の穴】に放り込まれるわよ、いいの?」
「ああ、あれな。」
ひどく遠い目をして黄昏るルトラン。
因みに【悪の穴】とは戦闘員集中強化訓練のこと。
死なない程度の訓練をひたすら行うことである。
正に生き地獄である。
「せめてネットさんが仲介に入ってくれれば何とか収まるはずなんだけど・・・・」
と言いながら二人はネットを見るとその先にいる女性は、我関せずと華麗な仕草で紅茶を飲んでいた。
「アレは、あきらめたな」
ルトランはジト目でその姿見た。
「もう、投げないでよ。ネットさん何とかしてください」
と、涙目で訴えかける。
その問いかけに片目をセメット向け
「ムリです、トレインが爆発しました。こうなるともう止まりません、溜めこんだ鬱積が全て吐き出されるまで止まりません。この状態になるとウチのトップたちでもサジを投げるんですよ、それなのに私が何とかできるわけないじゃないですか」
と、開き直る。
その答えに二人は大きくタメ息を吐き、ダメだこりゃとあきらめた。
〇コメディー要素に引き戻せそうで、安心し始めたコメディーである。




