65 教団との戦い3
黄色の勇者後日編です。前回でも記述しましたが
改めて注意点が一つ。ココよりの残虐なシーンを多用しております。
話しの流れ上必要な事なのでご了承願います。
優位な状況が一転し、自身の配下たる騎士団は崩壊した。
その状況を席から立ち、体を小刻みに震わせ、呆然としている。
その司祭長を横目にトレインが口を開く。
「さて司祭長殿、すでに勝負は決したようですな。改めて言っておきましょうか、ワルモーン様に対してあの程度の戦力でいい気になられていたようですが目が覚めましたかな?アナタ程度の尺度で我らの実力を図るなど思い上がるからいらぬ損失を生むことになるのです」
静かに通る声が冷たく響く。
「な、なんだ!あの化け物は!!アレは魔人であろう!人ではない、人の敵だ。だからこそ、我ら神の使徒である騎士を無慈悲に惨殺することができるのだ」
戦場を指さし、声を張り上げてトレインに顔を向ける。
その顔には恐怖と焦りが見える。
その姿にトレインは小さく嘆息し
「見苦しいですね。ワルモーン様は、わざと凄惨に戦って見せて下さったのですよ。わかりますか?思い上がっているあなた方に力の差を明確に見せつけるために、そして我らギャクゾークに刃を向けることの意味をバカなアナタ方に分かりやすく理解できるように」
言葉に冷気が乗るようなほどに冷ややかに。
「そ、それは教会を敵に回すということか?正義の使徒である我らに!!」
「それは、脅しなのかな司祭長殿。ワルモーン様のお力を見てそれが言えるわけですか。
アナタ程度が我らに勝てると・・・今この瞬間生きて帰れるかもわからないのに。
なかなか豪胆でいらっしゃる」
「ゴタクを言うな、貴様らは悪だ。我ら正義の者は神の使徒でもある。
神の神託の元に行動する正義をつかさどる者なのだ。間違いなどない、間違いを起こすのはいつも貴様ら悪の誘惑なのだ」
とトレインを指さし叫ぶ司祭長。
自分たちの不利な状況を挽回しようと躍起になる。
だが、
「そうですか、アナタはこの戦いの前にかわした約定を反故にしたいわけですな。
負けたから何とか言いがかりをつけてでも・・・やはり正義を語る者に碌な人間はいませんな」
「何を言う、貴様らは反逆であり、悪の者だ。正義を掲げる我らの・・・いや世界の敵なのだ」
司祭長は押し切れると思ったのだ。
相手の口調を聞いてこいつらに失敗を押し付け、自分たちが正しいと言い換えることが出来ると・・・。
「残念だ、司祭長殿。我々としては穏便にことが終わるようにしたつもりなのだがそうもいかないようだ。貴殿らに恐怖と理不尽という名の薬を与えて自身の愚かさを理解していただこうとしたのだが・・・無駄だったようだ」
「何を・・・悪の手先が!!」
「さっきから正義だ悪だとうるさいですね。それしか言えないんですか?それとも困ったらそれしか言えないんですか?とても清浄をつかさどる神職の方言われるお言葉とは思えませんね」
「い、やかましい。貴様らの罪は重い、正義の名の下に処罰してくれよう!!そこにいる領主もだ。
我らには大義がある、神がそれを証明してくださる!!!」
「何とも都合の良い神様ですね。・・・ですが、甘い。その程度の駄々こねて済むと思っているところが甘過ぎますね」
と言いながらゆっくり立ち上がるトレイン、その顔には笑顔が湛えられているがあふれるどす黒いものは、威圧となり教会関係者に向けられる。
余りの威圧にひるむ教会の方々、それでも司祭長はひるまなかった。
「ほっ、本性を現したな!悪の手先よ。これで正義は我らにあることが証明されたのだ」
「馬鹿ですか、アナタは。私は何一つ肯定していませんよ、それを正義だ正義だとバカの一つ覚えのように連呼して・・・それしか言えないんですか。いいでしょう、認めてあげましょう、我らは【悪】ですよ。ですがアナタ方の歪んだ正義とは違い、信念を持った【悪】です。満足しましたか?神様の名が無ければ何もできない正義を語る者よ」
その言葉に司祭長は勝ったと思ったのだ。
これで大義名分は完全に自分たちのモノとなり、世論を身かつけることが出来ると・・・。
この状況でもそれを思えてしまうのだ。
「そうか、やはりそうか。悪魔に魂を売りし者たちめ、貴様らにこの場にいる権利はない!!ここで断罪してくれよう」
と合図を出すと護衛の騎士が剣を抜く。
それに「何をする司祭長殿、剣を抜くなどこの場を取り仕切るのはこの街の領主である私の権限だ。貴殿ではない、いい加減バカな言い分を止め話し合いの席にもどるんだ」
と怒気を交えて領主が声を荒げる。
静観を決めていた領主も流石抜刀は看過できないようだ。
この場を・・。いや、司祭長の行動を抑えようと動く。
それも手遅れの状況ではあるが・・・。
「貴殿も何を言っている。話し合いなど無駄だ。こいつらは悪なのだ、悪は処断されなければならない。
交渉など無用だ、意味がないのだ」
と自分たちの優位を厚く語る。
言って要ることがどんなに支離滅裂であっても。
「その通りだよ、神の名に隠れるだけの正義よ。我らは偉大なる【悪】の組織の者だ、貴様のような無駄に正義をかざすだけの愚か者ではなく信念をもって【悪】を名乗り行動している者たちだ。そしてその力はすでに見せたはずだ。ツカ村にいる教会関係者全ての退去を反故にするつもりかね、ハーハハハハハッ
!何て愚かな判断だ。我らは言ったはずだ、貴様らに譲歩した条件をそれすらも反故にすればこちらはどうするかもだ。理解しようとしないのか?理解できないのか?それとも死なないとわからないのか?」
トレインがここぞとばかりに煽る。
最早収集がつかない状況になっていく。
この場合、仲裁役のミゾレ町領主が行わないといけないのだが、あまりの司祭長の傍若無人の振る舞いに
ガマンの限界に来てしまっている。
つまり、止める人間がいないのだ。
せめてワルモーンなり、シンラーツなりがいればまだマシなのだがその二人は現在戦場に立っている為来れない。
しかも、普段は冷静なトレインが、ご立腹状態である。
流石に腹心であるネットも頭に手を当て、大きく息を吐く。
盛大に交渉は紛糾した。
〇コメディー要素に戻りたいが、戻せなくて困っているコメディーである。




