6 悪者、村に潜入する
ワルモーンとシンラーツは目的の村にたどり着く。
村はいたって平均的なものにみえるのだ。
喉かな村の風景に見えるはずなのだが、あちこちの建物が壊れている。
明らかに戦闘で壊れたものが多い。
「どういうこと!?なんか戦闘後に見えるけど?」
シンラーツが声を上げる。
「これはゴブリンの襲撃によるものです。何とか村人たちで追い払いましたが、次は難しい」
と人畜無害そうな老年の男性が声をかけるように説明してきたのだ。
「おお、村長!それは大変な状況に申し訳ない」
「これは、バー・ヌーシ様。遠路はるばるよくお越しくださいました」
と深々とバー・ヌーシに頭をさげる村長。
「頭をお上げください。こんな時に訊ねたこちらが迷惑をかけているのです。気にしないでください、被害は大きいのですか?」
「いえ、建物と家畜以外の被害はありません。ですが・・・」
と言葉が続かない。
「次は、どうなるかわからない・・・と言うことですか」
「そうなります。冒険者を雇いたいのですが、来ていただくまで持ちこたえることが出来るかもわかりません」
としんみりした空気になる。
二人は、もうお通夜状態に入ってしまう。
「あの、すいません。それを・・ゴブリンですか。何とかできればいいのですか」
シンラーツが、お通夜状態の二人の会話に割り込む。
彼女はついたばかりなのにいきなりのローテンションに耐えれなくなったのだ。
その声の方向くバー・ヌーシは彼らを見て表情を一変させる。
「おお、そうです。この方々がいらっしゃる。村長大丈夫です、彼らは手練れです。見てください、彼の背負うハーケンボア(イノシシもどき)を」と指さす。
その先には黒い鎧に身を包んだ騎士が二メートル級のハーケンボア(イノシシもどき)を背中に抱えて立っている。
それだけの大きさならとても重いのだがその騎士は片手でしかも自然に立っていた。
黒い鎧に身を包んだ騎士と言うだけでも異様さがあるのに抱えるハーケンボア(イノシシもどき)がさらに異様さに拍車をかける。
その視線に気が付いたのかワルモーンは、担いでいたハーケンボア(イノシシもどき)を下ろす。
ドーンっと地響きと効果音付きで。
その音に周囲の人はもちろん家にいた人まで飛び出てくる始末である。
「ちょっ、ちょっと!ワルモーン君!もう少し丁寧におろしてよ。びっくりするじゃない」
と苦情をいうシンラーツに対し、
「ムリ言うな、これだけでかいサイズを器用におろせるか。それにもともとこういう重さのものだ、これくらいの音はする」
と苦情に対して我関せずと反論する。
「それでも急におろさないでよね」
「ん?おろせって合図じゃないのか?」
不思議そうに首をかしげる。
可愛い仕草なのだが、姿がいかついと不気味に見えるから不思議である。
「そんなわけないでしょう、説明してんの!せつめい!ホントに変なところ天然入ってるんだから」
と、説教に入る。
「すまんな、そこまで器用じゃない」
という、ワルモーンに詰め寄るシンラーツ。
ショートカットでボーイッシュな女の子が自分より少し大きいイカツイ風貌の男性に説教している姿は、
周囲から見ればコミカルに見えた。
怪しく怖い姿のワルモーンに対しても村人から警戒心が少しだが薄れていく。
周囲の人たちは、思う。
不器用なだけで根がいい人なのだと。
ただ、まだ怖いが優先して声には出さないが・・・。
二人の悪の組織の人間はボー村に受け入れられた。
だが、問題はさらに増えることとなる。
〇これは悪を気取ったいい人たちが、悪いことしているつもりで周囲に感謝されるコメディーである。