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57 悪の者、筋を通す

黄色の勇者編です。前回でも記述しましたが

改めて注意点が一つ。ココよりの残虐なシーンを多用しております。

話しの流れ上必要な事なのでご了承願います。




短髪の女性騎士は、少年というよりは青年に近い容姿で瞳に湛える余裕は彼女の自信の表れのように見えた。


そう、目の前で教会騎士団が戦闘不能の状態であっても、当の自身は負けないという自負の表れである。



そして、彼女が見据える二名には見覚えがあった。

こちらに来る前に物質界にいたころに彼女が仲間たちと戦った組織の者たち・・・それも幹部クラスであることに。

「へえ、アンタたちもこっちに来たんだ。じゃあ、お礼が出来るわね」

と凛とした声で話しかけた。


「目の前の惨状に揺らがないとわな。それに自分たちを知って異様な言い方。自分には貴様にあった記憶もないのだがな」

と男性の方アーバレルは語る。


「アーバレル様、アレは断罪戦隊の一人です。以前手合わせしたでしょう、あなた様に余計な事をしたその張本人のイエローですよ、あいつ」

と女性の方エグーミが言うと


「そうか、あの時の黄色いのか。これはうれしいぞ、特に黄色いの。貴様に会えたことは僥倖だ、自分が自分に課したペナルティの清算が出来るのだからな」

目にともる闘志が、目の前の彼女を・・・断罪戦隊のイエローたる彼女に突き刺さる。


「へえ、もっとバカなのかと思ったけど割と怖いのかもね。でもアンタじゃ私の相手にもならないよ。

こっちに来てから私は地下をつけた。あの時の私が持っていた力を数十倍に引き上げて今ここに居るんだよ、見たところアンタはあの時と変わらないようだしね。力の差は見えてると思うけど」


「そうかもな。いや、あの時よりも弱いと思うぞ。貴様に仕込まれた罠の所為でな、自分はそのケジメを突けなくてならん。特に貴様とな、力の差は理解できるがこれは自分のケジメなのだ。引くわけにはいかないのだ」

決意に満たされた瞳は固い意志とともにアーバレルを奮い立たせていた。


「そう、じゃあ、私が相手するわ。でも許してね、今の私は手加減できるほどうまく力を扱えないの。

一撃目で死なないでね、幹部さん」

妖艶な視線を向けるイエローは格下の・・・獲物としか見えないアーバレルを見つめる。


「なかなか大口を言う。自分たちが負けることを考えないのか?」


「負ける要素が見当たらないモノ。騎士団なんてもともと当てにしてないし、気にする必要もないでしょ」

悪びれずに笑顔を浮かべる。


倒れている騎士団は文字道理、眼中にない状態だ。

とても愛と正義を掲げる正義の味方に見えない。


「イエローよ、良く吠えた。ならば尋常に仕合うとしようか」

と言うと拳を握り構えるアーバレル、それとは対照的に構えはしないが腰の剣を抜き自然体でいるイエロー。二人の間に緊張が走る。


そして、一拍置いてアーバレルが飛び出す。

さらに一呼吸置いて今度はイエローが動く。


その瞬間にドンッという地鳴りのような音が響き、空気を切り裂くような衝撃があたりに広がる。


エグーミの横を影が通り抜け、その余韻としての風圧を残す。

そして、彼女後ろで何かが引きずられる音がする。

慌てて振り向くとそこには先ほど駆け出したアーバレルが片膝を突きうつむいていた。


彼に駆け寄るエグーミが見たものは、額に汗をして苦悶に覆われ、血のにじむ腹部を抑えているアーバレルだった。


勝負は一瞬でついたようだ。

「やっぱり大したことないわね。悪が正義に勝てるわけないもの」

イエロー二組の中間あたりで優雅に立ち尽くす。

手に持つ剣には血がしたたり落ちる。


その言葉にエグーミは、彼女をにらみ

「アーバレル様が力を制限さえしていなければ貴様ごときに遅れなど取らないのに」

苦虫をかみつぶす。


「自身体調管理の実力のうちでしょ、負け惜しみなんてみじめね」


「くっ」

その言葉に言い返すことが出来ない。

例えそれがアーバレルの都合であっても、目の前の彼女の都合ではないからだ。


「そうだな、それも一理ある」

その声が脇にある森の中からする。


そこに視線が集中する。


その森から現れたのは、ワルモーンとシンラーツ。そしてセメットとルトラン。

さらにエンザーイ・ツインズのネットが部下を引き連れていた。


ワルモーンの顔を見て歓喜を浮かべるイエロー。

「シルバー来たのね、この間のオイタは許してあげるから戻ってらっしゃい。アンタは私の玩具なんだから」

人差し指の先を下唇につける。


「アンタね、何様!」

その言い分にシンラーツがかみつく。


「ガキは黙ってなさい、アンタに話してないのよ」


「誰がガキよ、行き遅れが」


「失礼ね、言い方があるでしょうが。それに違うわよ、お嬢ちゃん。えり好みしてんのよ、私は常に選ぶ側、そして罪裁く側なのよ」

と、余裕の微笑を浮かべる。



〇これは悪を気取ったいい人たちが、シリアスすぎるコメディーである。


基本、人にひどい事をしている無自覚です。

自分がそれをされることの意味を知りません。

「自分が嫌なことは相手にやらない」なんて格言が出来る理由です。

筋を通す、言葉にすればカンタンな事ですが、実際やるとなると途轍もなく難しい事です。

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