55 悪者たちのゴタク
さて、ここからは黄色の勇者編に入ります。
ここで注意点が一つ。ココよりの残虐なシーンを多用しております。
話しの流れ上必要な事なのでご了承願います。
「相変わらずの身勝手っぷりだなアーバレル。何をごねている」
ワルモーンがイヤそうな顔で言うと
「なんだよ、その言い方は!その言い方だとオレがガキみたいじゃないか」
と反論してくる。
「その通りじゃないか、自覚ないのか」
「自分はそんなつもりはない!ただ退屈だからだ。他意はない」
と力強く言い放つアーバレルに対して、周囲の人間達はうなだれて深くため息を吐く。
それを見るとアーバレルは、
「なんですか、その反応は!」
と憤慨する。
「あのですねアーバレル様、その考えがすでに身勝手なんですよ。」
「自分はそう思いません」
と自信たっぷりで答える。
「あのな、聞く耳持てよ。暇を持て余しているならいるでいい。
だがな、オマエも立場があるだろうが軽率な行動をするなよな。まあいい、何かしたいんだよなオマエは」
「そうだ、貴様ばかり行動してズルいからな」
「別にそういうわけではないが、そもそもオマエがもう少し落ち着いて思慮深く行動できれば済むだけなのだがな」
「何をわけのわからない事をいう。自分には問題などない」
と言い切る。
つまり、自身の事を理解できていないのだ。何をしているのかを。
もう困ったちゃんなのだ。
普段はいい奴なのだが、考え方がずれているのだ。
でも本人は、我関せずである。
自由奔放すぎるのだ、まあ簡単に言えば自分に正直すぎるのだ。
自分に素直ですぎる単純野郎である。
悪の組織にいるのが当然ともいえる人間である。
ワルモーンは額に手を置き、かぶりを振る。
「で、何がしたい。この村の侵略を手伝いたいのか?それとも他の大陸に侵攻したいのか?」
「お前さんが今度向かう村に行かせてほしいな。そこには正義の教会が正義の騎士団でこっちに侵攻を準備しているらしいじゃないか。しばらく暴れていないからな、憂さ晴らしがてらにそこで暴れさせてくれればいい」
「なるほどな、力試しがしたいんだな。構わんが、条件がある」
「なんだ、条件って」
前のめりになり、ワルモーンの言葉を待つ。
「暴れる相手は騎士団だけにすること。村に被害を出すと侵略に手間がかかるからな。
また暴れる前に騎士団と交渉をして向こうが譲歩したらそれを受け入れることだ」
「なんだ、そうなれば暴れられないではないか」
「不満げにするな、交渉がうまくいっても騎士団との模擬戦くらいは出来るだろう。それで暴れられるのではないか」
と、さらに代案を提示する。
「それもそうか、どっちに転んでも暴れられるなら自分は構わんよ」
「ならそういうことで頼むぞ、エグーミ」
アーバレルの傍にいる眼鏡の女性に話しかけた。
「なぜ、そこでエグーミに話す。自分に言うのが筋ではないのか」
不満漏らすアーバレルに対し
「オマエは、興が乗ると抑えが効かんからな。それが出来るエグーミに頼むのが筋だろう」
「なるほど、正論だ」
アーバレルは姿勢を正し腕を組みうなずく。
自分が猪突猛進のアホだと自覚はあるようだ。
「了解しましたワルモーン様。では、行きましょうかアーバレル様」
と、エグーミはワルモーンに一礼し、アーバレルを引っ張りその場を後にする。
これ以上アホな事を起こす前に行動を起こしたいようだ。
二人の後姿を見て
「相変わらずだね、二人とも。でもいいの?なんか面倒事を押し付けたような状況だけど」
シンラーツは言う。
「かまわん、むしろその面倒ごとに首を突っ込んできたのは向こうだ。やりたいならやらせればいい。
その分こちらの仕事が減るからな」
「まあいいけど、これからどうするのワルモーン君?」
「予定が空いたからな、本部と連絡をしたいし諜報部隊が手に入れた情報の確認もしたい。それを優先するつもりだ」
「相変わらず真面目だね、まあいいけど」
「ん?お前も暴れたいなら一緒に先に言ってもいいんだぞ」
「違いますぅ~。鈍感くそ真面目男が心配なだけです」
「どう鈍感なのだ。オレは【悪】の組織のためにだな・・・」
ワルモーンの言葉を遮るように
「もういい、さっさと本部と連絡とろう!」
と言うとワルモーンの背中を押す。
「そうか?ならばそうしよう」
ワルモーンは不思議そうにしながら歩き出す。
〇これは悪を気取ったいい人たちが、悪いことしているつもりで周囲に感謝されるコメディーである。
私は、器用な部類ではないのでどうしても表現が過激になりやすい。
ですが、私は思います。
好奇心、喜びが心のアクセルなら、恐怖と痛みはブレーキになると。
なぜ、痛いのか。なぜ、悪いのかを理解出来ないからひどいことが出来るからです。
そのひどいことを理解するために為の【必要悪】だと思います。
【必要悪】など必要ない、という人はその必要性を理解できない方です。
その人にまで分かっていただこうとは思いませんのであしからず。
 




