悪の組織劇場 第5幕 悪の総統、村視察記 1
ゴクアークは、今回ボー村を視察することになった。
要は気分転換である。
ワルモーンにより救われた村であり、現在一番の発展が進んでいるところである。
そこを視察することになったのだ。
ワルモーンに問題ないかの確認を取り、実現した。
ボー村での案内役は、リノウナンバーズの副長であるヘフェヌである。
彼女は、割と理知的であり、温和である。
なので、村の住人との友好関係は一番高い。
その彼女が、今回村の視察に来たゴクアークとアクラーツを迎えた。
「よくおいでくださいました。ゴクアーク様、アクラーツ様。
まだ発展途中ですが、不詳私ヘフェヌがご案内させていただきます」
ヘフェヌは、二人に一礼をする。
「うむ、すまんな。ヘフェヌよ楽に頼む。今回の視察で何かするわけではない。
異世界の現状を一度見たかっただけだ」
と、重厚感たっぷりのダンディーボイスがさく裂する。
村人たちからするとその声よりもそのイカツイ顔に引いている。
怖いこと極まりない顔が、恐怖を増大させていた。
「まあ、気にしないでね。ただの気分転換よ、この人本部に隔離状態が続いて辛くなってきてたの。
それにこの世界の人との交流も大事だしね」
とイカツイマスクをしながら優しい女性の声で話し出すアクラーツである。
「アクラーツよ、その言い方は無いのではないか。
我らは、ワルモーンにより侵略した村をどこまで進攻が進んでいるか確認しに来たのだぞ」
「はいはい、基本はそれね。でもね、そんな言い方しているとますます怖がられるわよ。
ただでさえ顔面精神破壊兵器のあなたが、凹むと後が大変なんだから。話し方くらいくだけた方がいいわよ」
「それでは他に示しがつかんではないか」
「あのね、気を張るのもいいけどうまく気を抜かないといけないでしょ。ホント不器用なんだから」
と夫婦漫才が始まる。
そこに村長が来て話しかける。
「この度はようこそいらっしゃいました」
余りにも恐ろしい姿に体が震えていた。
それを見て
「ああ、ごめんなさいね」
とアクラーツは言うとマスクを細かな部品に変換し収納する。
そこに現れた素顔は、笑顔が癒しを与えてくれるような女性が浮かぶ。
「私はアクラーツと言います。この人畜無害のイカツイオッサンの妻です。
よろしくね。大丈夫よ、この人は顔は魔王級だけど心根は優しい人の見本みたいな人だから」
と笑顔で身もふたもないことを言う。
その顔を見ると村長は安心したのか、落ち着きを見せる。
「ワルモーン殿と同じ感じがしますな。あの方も無骨ですがお優しかったですからな」
「そうでしょう。あの子も本来真っ直ぐな子でね、いい子なのよ。この人の事を尊敬しすぎて困るくらいなのよ。だから安心してね」
と言って緊張を和らげようとしていた。
「あいつは筋がいいしな。その娘も元気だったか」
と少し照れ気味に言葉を紡ぐイカツイオッサン。
本人は、照れているだけなのだが、見ているに周囲の人間には恐ろしい姿にしか見えない。
ああ、悲しいかなイカツイ顔である。
人間見た目じゃないと言うが、第一印象は見た目である。
いい人ぶる人ほどきれいごとを良く言うのだ。
「あの娘というはどなたの事ですか」
村長がたずねると
「ああ、娘って言うのはシンラーツの事ですよ。私達の末の娘なんですけどね、この人に顔が似るんじゃないかと不安だったんですよね。生まれたらそうでもないんで安心したのよ」
と近所の井戸端会議のていで話すアクラーツ。
「なんかワシの扱い乱雑じゃないか」
とゴクアークはテンション低めにクレームを言うと
「いいじゃない、アナタの顔をネタにすればみんな緊張が和らぐのよ。
それにいつもの事じゃない、怖がられるのなんて。
いつまでもガラスハートのおじさんなんかしているあなたが悪いのよ。イカツイ顔面で子供に泣かれるくせに」
と、とどめを刺す。
この言葉でゴクアークは座りこみ、いじける。
その姿は、見事なまでに不気味である。
そして、その姿に慌てたアクラーツが慰めにかかる。
それは一時間近くに及んだ。
初っ端から何やってのこの人たち。
話しが進まないんだけど
と、思うヘフェヌは、この状況に呆れていた。
〇これは悪の組織の方々の普段を描く一幕です。




