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49 悪者は悪だくみをする


事が終わり、ワルモーンは、

「さて、面倒事も片付いた。次は村の侵略だ、それが終われば次の村だ。サクサク行こうか」

と自覚があるのかないのか、村々の常識を壊して回る目の前の御仁たちを見る冒険者二人。


常識を壊す、という意味ではまさに【悪】なのだろう。

この常識が正しいのだ、当たり前なのだ、という正義を壊す存在だ。

【悪】と言っても過言ない。


「そうね、ハツメ村に戻りましょう。まだキチンのトンネルもつながってないし、それに返事もまだでしょ。上手くいけば資材とかも手に入りそうだし」

と意味ありげな言葉をつぶやくシンラーツに


「資材?薬じゃなくてか?」

ワルモーンが、兜を解除し素顔をさらしている。

その顔は不思議そうにしていた。


「そうよ、だって、この森気を切ってもまた元の状態になるんでしょ。なら薬草採取に問題が無いであろう森の外周近くに新たな集落を作ってさ、森の外周の木を伐採すればいいの。そうすれば木材の無限回収が可能になる。一気に資材不足を無くせる」

と嬉しそうにシンラーツが話す。

その姿は年相応に女の子に見える。


「なるほどな、それならこの村の拡張も可能になり、村の新たな収入源となるか。それならば切った木材でキノコ栽培も可能になるか・・・うまく立ち回れば味噌や醤油とかもできそうだ。なんせ薬師の村だ、その辺りの方法には詳しそうだ」


「いいね、それ。ならパフォーマンス・ゼロにお願いできれば出来るかもしれないね」


「彼らにか、確かにそれならばうまくいく可能性がある。いいね、奴らはオレの配下でもあるしな。

では、さっそく戻ろうか。凱旋だ、そして侵略だ」

とワルモーンが言うと村に歩みを進める。

その後をウキウキのシンラーツが、更にその後を心身ともに疲れ果てた冒険者二人が続く。


「そういえば、蒼月はどうした?連れて来ただろう?」


「あの子はね、村の周りを見回りさせてるの。また獣とかが凶暴化したら困るからね。あの子なら何とかできるでしょ」


「そうだな、頼もしい限りだ。それに後ろの二人もマシになってきた」


「今回の戦いは、きつかったみたいだけどね」


「それでもだ、いい経験になったはずだ。この経験はあの二人の成長の糧となる。

それも無くすことない財産だ。使いこなせば化けることもある」


「それさ、本人たちに言ってあげなよ。喜ぶよ?」


「それはしない、オレは厳しい人間で通す。以前優しくし過ぎてバカをする人間にひどい目になったからな」


「そうね、そうか。ワルモーン君、不器用だものね。そこが魅力でもあるんだけどね」

と雑談の声が冒険者の二人には届かなかった。


もうフラフラしすぎているのだ。


そんな、四人は村に凱旋した。

村は喜びに満ちて、彼らはワルモーンの提案に賛同した。

これで新たな村が【悪】に染まる。


そして村の侵略という名の発展工事が始まるのだ。



〇これは悪を気取ったいい人たちが、悪いことしているつもりで周囲に感謝されるコメディーである。


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