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48 悪者vs魔族


「そうか、ならばそのご自慢の魔剣で斬りつけてこい。

まあそれでもコの鎧を傷つけることは出来んがな」

と両手を広げ、迎えるような姿で立つ。


「フハハハハハッ、いい心がけだ。高尚な我に処断される気になったか。

それが正しい半判断だ、貴様のような下等な人間が我に・・・我の魔剣の錆びになることが出来るのだ光栄に思うがいい」

そういうと魔族の二本の剣が袈裟切りでワルモーンに降りかかる。

赤の剣が当たったところから炎が立ち上り、

黒の剣が当たったところからは黒い霧が噴き出し鎧を溶かし始める。

それぞれの剣の付加効果がワルモーンに襲い掛かる。


それを感心しながらワルモーンは、他人事のように見る。


「ハハハツ!」どうした、酸の霧とまとわりつく炎だ。ご自慢の鎧を溶かされ燃え盛る炎で焼かれ、我に挑んだことを悔やみながら朽ちていくがいい」

魔族はけたたましく笑い声をあげる。

今まで彼が感じたことがないほどの完全な勝利を確信していた。


それほどまでの優位な状況なのだ。

ワルモーンの鎧は黒い酸の霧に溶かされ、更に炎で焼かれる。

異常な状況である。


確実に追い詰められている状況であるにも関わらずワルモーンに慌てる素振り見せない。

歓喜に震える魔族を哀れにすら見ている。表情は兜で見えないが・・・。


「でっ、これだけなのか?」


「はっ、この状況でよくもまあ、そんな口を叩ける。貴様はもう終わりなんだよ人間」


「そうか、つまらんな。悪五郎の鎧よ、力見せろ」

この言葉の後、鎧から膨大な妖力が噴き出る。

それが黒い霧と炎を吹き飛ばす。


ワルモーンが着ている鎧は、日本の魔王格の一角、神野悪五郎の鎧。

日本を襲う強大な魔物と戦い瀕死の状態の大妖怪、神野悪五郎が、己の魂と力で作り上げた鎧である。


つまり、魔王の鎧となる。

その鎧に半端な攻撃が通るわけもない。


魔族は、先ほどまでの愉悦が落胆に変わる。

「なんなんだ、貴様は!」


「うむ、先ほどから言っておるではないか。オレは【悪】の組織ギャクゾークの幹部だと。どうやら話も聞かん愚か者か、仕方ないな」

無傷の鎧を身に纏いワルモーンは巨大な包丁を振り上げ、魔族に向けて振り下ろす。

そこから起きる剣圧と剣が纏う膨大な妖力が、魔族に襲い掛かる。


意気消沈した魔族は、それを避けることもできず後ろに立つ屋敷もろとも巻き込まれる。

轟音と土煙が魔族がいたところに広がる。


先程まで魔族が放っていた威圧感と圧倒的な魔力が消えていた。

土煙がはれて、残ったのは何もない更地が残るだけだった。


「口の割には跡も残らんか、つまらん相手だ。所詮は件の勇者レベルか」

と残念そうにつぶやく。



「なんですか!アレは、何であんなに圧倒的なんですか」

剣士のルトランは、ワルモーンを指さし叫ぶ。

先程まで、異次元の戦いと魔族の力とワルモーンの力に圧倒され委縮していたのだが、それから解放された・・・と言うか少し慣れた為に息を吹き返した状態である。

魔法使いのセメットは、まだ威圧されたままである。

魔族にではない、ワルモーンに対してだ。もちろん二人ともである。


それほどまでの強烈な力が周囲に満ちていて心身共に疲れ果てていた。

魔法使いのセメットを介抱するようにシンラーツがいた。


「ワルモーン君の力の一端かな、アレでも三割程度だけど。慣れてね、ウチの組織の人間は最低でもあのくらいは出来るよ。私でも最大出力であのくらいだと思う。先はまだ遠いけどね」

と笑顔を浮かべるシンラーツ。


「お前は、まだそこまでできないだろう。実力を盛るなよシンラーツ」

ワルモーンがツッコミを入れる。


「ナンデヨそのくらいあるわよ。失礼ね」

と憤慨する。

その様子を見て、二人は思う。


どっちもどっちだ、と。



〇これは悪を気取ったいい人たちが、悪いことしているつもりで周囲に感謝されるコメディーである。



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