43 悪者は再び悪を語る
「「何がオカシイ、その辺に転がる正義や神の神託などに比べれば
至極当然な存在だろうが。
奴らの語る正義は奴らにとって都合の良い言い分で行動だ。
それにそぐない事を奴らは【悪】という。
ならば我らは甘んじてそれを認め、奴らと対峙するために【悪】となったのだ。
それでいいだろう」
と、村長は、胸を張り信念を語るワルモーンの姿に清々しさを感じてしまったのだ。
だが、やはりズレているのだ。
世間の考え方からは、だが言い分も理解はできていた。
都合の良い正義を語る連中と勝負するための【悪】であることに。
まあ、単純な言い分である。
子供の理屈と言ってもいいくらいだ。
だが、正義だ、神の思し召しだ、と耳障りの良い言葉で惑わす連中と戦うために
あえて【悪】を貫く。
この若者の言葉には意味があるように村長は考えてしまったのだ。
真っ直ぐに考え行動するバカの言い分は、理想論と真実を吹き飛ばして
余りある熱意があるように思えたのだ。
あながち間違いでもないからタチが悪い。
流石に疲れて来たのか村長の対応がおざなりになってきた。
「わかったよ、アンタが熱意があり真っ直ぐなおバカなことが良く分かった」
「よかったね、ワルモーン君。理解者がいて」
そこに会話に割りこむようにシンラーツが参戦する。
その声のトーンは明るく嬉しさが混ざっている。
「おや?不器用そうな顔しておいて手は早いようだ」
と、世話焼きおばさんのような顔を浮かべる。
「それは、妹のような奴だ。それに今はそれどころではないしな。
話の続きだ、薬を購入したい。
それは出来るか?」
残念そうな顔をしながら話を進める村長。
「そうさね、薬を売るのは構わないんだけどね。材料を手に入れにくい状況になってんだよ」
「なら、その問題を解決すればいいのだな」
「おや、話が早いね。まあ、他にも条件があるがとにかく今は獣や魔物の凶暴化を止めてもらいたいかね」
「その口ぶりだと原因はわかっているようだな」
「そうさね、わかっている。だがどうしようもない。なんせ件の勇者が討伐しそこなって封じ込めた魔族が原因だからね。しかも封じ込めた場所が村の拡張するために作った森のはずれにある館だからね。口だけ勇者の所為でこっちはいい迷惑だね」
「なるほど、魔族か。それは正義を語るのか?」
「そんな話は聞いてないね、悪意をばらまく存在だと聞いているよ」
「そうか、それならば悪だな。ならばその魔族は私がもらい受けよう、いや、正確には我が組織がになるが・・・」
「どういう意味さね、分かるように言ってもらえるかな?」
「簡単に言えばその魔族を我が組織に勧誘するのさ。仲間になれば凶暴化も止めることが出来るだろう」
「討伐する方が早いと思うがね」
「そうだな、勧誘がうまくいかなければそうしよう。だが、貴重な【悪】の人材だ。組織に誘うことが礼儀だと思うがな」
「魔族を仲間にかい?なかなか豪気じゃないか」
「話が通じるなら問題ないだろう。同じ【悪】だ、志を同じくする者同士。ともに歩めるだろう」
「でも、相手は魔族さ。人族の上位の存在だね、奴らは私達を見下しているし、自分達より力のない下等な雑魚としか見てないよ」
「大丈夫だ、そうであるならば力を見せつけるだけだ。己より強ければ従うだろう」
「なんとまあ、うまく言葉にできないね。流石バー・ヌーシが気に入るわけだ。
その言葉を信じてみようじゃないか。この状況を何とかしてくれればその魔族がどうなろうとウチは関係ないからね。どうとでもしてくれるといいよ」
「そうか、了解した。何とかしよう」
ワルモーンの言い分が通ると村長は軽く嘆息し
バー・ヌーシとシンラーツは苦笑いを浮かべる。
〇これは悪を気取ったいい人たちが、悪いことしているつもりで周囲に感謝されるコメディーである。




