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40 悪の科学者現る


気怠そうに村の前に立つ女性がいた。


部下らしき人間が十人ほどいてそのすべてがきちんとした身なりをしている。



着崩した服装なのは先頭にいる彼女だけだ。


その彼女に駆け寄る男性が一人いた。

気さくで無害という言葉が似あう男性だ。



「ノイ・ロゼ様、お待たせしました」

というと軽く会釈する。


「シュト君、私の暇つぶしになるようなことあるの?

とてもそう思えないけど?」

と若干のふてくされ感を出す。


彼女こそ悪の組織の博士の一人であるノイ・ロゼ女史である。

見た目は美人なのだが、中身は子供の様な人物である。

それに気分屋でもあるので扱いがむずかしい部類の人間だ。


それに対して人畜無害の好青年に見える男性はリノウナンバーズのリーダーであるシュトである。

正に田舎のお兄ちゃんである。


彼は、頭を上げ満面の笑顔で

「大丈夫ですよ、ノイ・ロゼ様。退屈はさせません、むしろする暇がないというほうが正しいくらいですね」


「でもさ~、面倒事じゃないの?」


「そうですね、基本面倒事ですね。ワルモーン様がそれ以外を持ち込んで来たためしがありません。

でも面倒事でも我々に利があることばかりですよ。それは知っているでしょう」


そうなのだ、面倒事を持ち込む人間には二種類いる。

ただ周りを巻き込んで面倒を増やし、自身では何もしない人間。

もちろん、周囲を荒らすだけ荒らして後始末もしない。

迷惑この上ない人種だ。


この手の奴は、ただ楽しみたい、優越感を感じたいだけで邪魔である。


もう一つは、面事なのだがそれは双方にとって利益が発生しやすい行動を取る者。

失敗すれば後始末は率先して行う。

人間的に交換の持てるタイプといえる。


「それは、わかるけどさ。あの子の持ち込む案件は面白いことが多いよ。でも手間がかかるんだよね、面白いけど・・・」


「そうですよ、やりがいをくれますよ。最初は面倒でもその面倒さえ乗り切れば後は楽々になるじゃないですか」


「そうなんだよね、あの子どこまで青図を頭の中で書き上げてんだか・・・予測能力者なのかもしれないとたまに思うことがあるよ」


「言えますね。でもその予測は誰かのために行動していることが多いですよ」


「それって【悪】がすることなの?聖人じゃん、神主でもやれよって感じじゃない」

その言葉に思わず笑みが漏れるシュト。

素直に笑えるようになったな、と思うノイ・ロゼ。

彼女は、彼の事を良く知っている。


人に騙され、人間不信で疑いの目でしか相手を見れない人間だったのが、こうも素直な笑顔を見せることが出来ている、良い傾向でもある。


「そうですね、ゴクアーク様とワルモーン様に神社かお寺でも開いてもらいますか。

和装が似合いそうですし、あのお二人」


「そうだね。で、嫁さんの尻に敷かれると」


「いいですね、提案でもしてみますよ。面白くなりそうですし・・・」


「で、その当人はどこ?呼び出しておいてもうどっか行ったなんてないよね」

と周囲を見渡すノイ・ロゼに


「ああ、ノイ・ロゼ様に確認していただきたいもののサンプルを回収しに行きました。

近くなのですぐに戻ると思いますよ」


「それってホントに面白そうなものなの?」

とジト目になりながらノイ・ロゼは、シュトを見る。


「大丈夫だと思います、それにうまくいけばオレたちが欲しいものも手に入る可能性がある物だと聞いています」


「ホントに~、まああの子はそういうことをかぎ分けるのがうまいからいいけど」


「ただ、手間はいつもものすごいものを指示されますがね」

その言葉に彼女は嘆息し、


「そうなの、すごい手間なの。その手間を乗り越える後がすごく楽になるの。

どう文句言っていいのか困るの。ホント毎回」

といいながら空を仰ぐ。


「いいじゃないですか、それ。待ち時間を村を案内しますよ、ノイ・ロゼ様が好きそうなものもありますし・・・行きましょう」

と村に入るように促す。


「仕方ないね、そうするよ。あの子の持ち込んで来る面倒事を楽しみにしながらね」

そういうとノイ・ロゼは、シュトに案内されるように村に歩みを進めた。



〇これは悪を気取ったいい人たちが、悪いことしているつもりで周囲に感謝されるコメディーである。




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