39 悪者はお使いに出る
ワルモーンは、ノイ・ロゼを待つ間にその黒い水を採取しに行く。
お供は、バー・ヌーシに従者のジョー・ツキ。
シンラーツにシアンウルフの蒼月
更に女魔法使いのセメット、男剣士のルトランである。
大勢で行く必要もないのだが、バー・ヌーシとジョー・ツキは好奇心から
ジョー・ツキはバー・ヌーシに村に残れと言われたのだが、
自分は従者なのでついて行きますと頑なに譲らなかった。
シンラーツはワルモーンの従者として、セメットとルトランは訓練を兼ねた荷物持ちとして同行すことになった。
このあたりの魔物は、ほぼ駆逐されていた(ワルモーンによって)
なので平和そのものである。
のだが、ガソリンのにおいが漂い始める。
このにおいを知っている者には大したことのないにおいなのだが、未体験の者にはきついものがある。
マスク替わりのハンカチか手拭いで顔を覆い目的地に向かう。
そこは以前、ゴブリンの巣があったところでワルモーンが殴りつぶして大穴を開けたところ。
そこは、黒い水が湧き出ていた。
知らない者からすれば、何かに呪われた泉に見えるだろうが、ワルモーンにはそれが何か理解できる。
現地人たちは近寄れないのでワルモーンは、手拭いをその泉に沈め、しみこませ袋に入れる。
彼の用事はそれで済んだのだが、現地人たちは引き気味だ。
彼はそんなことも気にせず帰路につく。
現地人たちからの質問攻めに豆に答えるワルモーン。
丁寧に質問に答える悪の幹部。
改めて思う。
彼は本当に【悪】なのか?
でも彼は盛大に自称する、自分は【悪】なのだと。
バー・ヌーシは、思う。
彼は、戒めの聖人なのではないのかと。
奢り、道を踏みはずす聖人や勇者を戒め、時には罰する魔人となり、
人々には、手を差し伸べる聖人となる。
怒りを身に纏い、優しさを振りまく。
正に戒めの聖人だ。
というと彼は断固として【悪】と言い張るだろうと思いクスリと笑う。
実際にはそうなのだ。
だからこそ信頼に値する。
この黒い水も彼らの手かかれば、新たな利益に変わるのだろう。
その未知の先が見れると思うとバー・ヌーシは年甲斐もなくワクワクがあふれるようだった。
〇これは悪を気取ったいい人たちが、悪いことしているつもりで周囲に感謝されるコメディーである。
 




