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33 悪者は、二つ目の村を侵略する

行軍して僅か一日で鉱山の魔物討伐は終わる。

それも【悪】を語る二人の若者によって、その後村に帰還した彼らは二日の休みをとり

冒険者たちも手当を行うためにも必要な時間であった。


その間に村人たちは猟師たちとともに鉱山までの道の安全性の確認を行う。

魔物もおらず、鉱山内でも問題はなかったことにより、この村が魔物に脅かされる状況は打破できたこととなった。


後は村の身の振り方だけなのだが、彼らが鉱山に向かった日にバー・ヌーシからすでに提案はされていた。

彼ら【悪の組織】に参加しないかというものだ。

【悪】という言葉に嫌悪艦を示すものは多く、村人たちの総意はなかなか取れなかったのだが、

勇者という正義がすでに揺らいでいたことと彼らが村に攻め込んで来た魔物を撃退したことが、信用となり

一時的ではあるが信頼してみようということになっていた。


もともとワルモーンは戻ってから説得するつもりだったのだが、それはすでに終わっていたのだ。

決め手は、鉱山の平定とワルモーンの無骨な人柄によるものだ。


この二つが村人たちの信頼に貢献した。

ワルモーンが知らないところで、村は【悪】に染まっていたことになる。


後は、彼らが起きるのを待つことになる。


そして二日後、さっそくワルモーンが動く。

村の掌握はすでにバー・ヌーシがしていたのでそれは省略し、村の開発のために組織から人を呼び寄せる。

まず、リノウナンバーズの人間で畜産系を中心に半分ほどを呼び寄せることになった。

さらにク・チダーケ女史も呼び、ケガをしている冒険者や村人の治療に当たらせることにした。


それとば別にキリサキ・ハンターの部隊を借り受けることにした。

猟師が多いのでその指導をするためでもある。

呼び寄せる人間をある程度決め連絡をシンラーツに指示し、

後は、ワルモーンが冒険者の訓練をすることになる。

動ける女魔法使いと男剣士の指導をすることになる。


因みに冒険者たちはワルモーンの弟子にしてくれと懇願してきたためである。

魔法の事はあまりわからいのだが、まず使いかたを魔法使いから聞いてどうすれば強化できるかの指示をすることになった。

後は、剣士はシンラーツが指導することになった。

一日一本の木を切り倒すこと、それを材木なり薪なりにしてそれを運ぶことを課題にしたのだ。

運ぶだけというのが意外と力を使う。

基礎体力作りにもってこいなのだ。


これを魔法使いと剣士にやらせることになる。

他は、ケガで動けない為、動けるようになってからになる。


更に二日後、ボー村からリノウナンバーズとク・チダーケ女史が来る。


「ワルモーン様、お待たせしました。リノウナンバーズの副長にジェパアです」

というと黒い服に鎧を着た女性が膝をつく。

それに合わせ、同じような服装の者たちも追従する。


「すまんな、急に呼び立てて。この村の解放も済んだのでお前たちに村の開発をしてもらいたくて」

ワルモーンは、幹部らしく威厳を出す。

それを口元を抑えながらその姿を見るシンラーツ。

更にそれを困ったという感じで見守る周囲方々がいる。


「いえ、お気になさらず。それにむしろ新規開発が出来ることが我々には嬉しい限りです」

そんなこととはつゆ知らずリノウナンバーズたちは、尊敬してやまないワルモーンに報告を続ける。


「因みにボー村はどうなっている」


「はい、ではご報告させていただきます。水路を作り、村の薬草畑を軌道に乗せることが出来たと思われます。

更に薬の調薬を進めている状況です。イノシシの家畜化を進めているところです」


「なるほど、良くやってくれているな。この村でも畜産を進めてほしい所だ。出来るか?」


「お任せを、他にご要望はございますか?」


「そうだな、狼も捕まえたのだが、猟犬として調教してほしいのと鉱山の開発を行いたいのだがこちらは後でも構わない」


「ですが、こちらとしては鉱山の開発を先に進めてはいただけませんか」

と、村長が話に割り込んで来た。

それを無礼と感じるリノウナンバーズを手で制し


「確かに言い分はもっともだが、それは後回しにする」


「なぜですか、この村は鉱山採掘で成り立ってきた村です。それを優先しないのはなぜです?」

と村長が食い下がる。


「いいかい、村長。今回の件で鉱山を閉鎖することが起きれば、今のような苦境に陥りやすい。それにいずれ鉱山の採掘もできなくなった時同じようなことが起きる可能性がある。鉱山に頼り過ぎない何かそれと変わる産業が必要となる。

今はそれを優先させる。その産業の基盤が出来てからでも鉱山開発は間に合うだろう」

とワルモーンは説明する。


鉱山開発は必要である。

だが、それに頼りきりになれば危険なのだ。

今回のような事がまた起きて一時閉鎖されることがあるかもしれない。

いずれくるであろう鉱山内の資源が枯渇した時も同じである。


その時の備えとなる産業基盤をワルモーンは作りたいと思っていたのだ。

もしそれが出来て居れば、先ほど言った問題が起きても対処可能になる。

先を見据えた戦略を考えて居たのだ。


それに鉱山は逃げない、後に回しても・・・いやむしろ畜産産業の基盤が出来て居れば丁寧に鉱山開発もできると考えたのだ。


「そう、おっしゃられるのであれば、こちらも同意します」

渋々だが、村長も承諾した。


なんせ、つい今しがた鉱山の一時閉鎖に追い込まれたばかりだからだ。

その時に別の産業があれば、今のように慌てる必要がなくなる。

丁寧に対処も可能になる、それは理解できていたからだ。



これによりハーメ村の再生計画が決まったのだ。

ワルモーンはこれで安心して次の村攻略に進めることになる。


〇これは悪を気取ったいい人たちが、悪いことしているつもりで周囲に感謝されるコメディーである。

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