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26 悪者の悪だくみ



「いくら何でもお二人であの魔物の巣窟と化した鉱山に行くなど危険すぎます」

村長は、引かなかった。


【悪】を名乗る二人が乗り込むというので村から何人かついて行くことを譲らなかったのだ。

力は圧倒的だがそれでも危険なのは変わらない。


それに村の問題を強いとはいえよその方に丸投げではあまりにも情けなさすぎるからだ。

面子の問題といえばその通りなのだが何もしないことは当事者として情けない限りなのだ。

だからこそ、なのだ。任せきりではいずれ自分たちで何とかしないといけなくなった時に困るからだ。


というが今回は任せるしかないのだが、せめて補給は出来るようにしたのだと粘った。

「そうだね、ごはんは大事だよワルモーン君。それでいいじゃない、ある程度の魔物みたいだし」


「そうだな、この村は【悪】に対して理解がある。その方々の提案を無下にするわけにはいかないな」

とワルモーンは答えた。


彼はあまり表情を出さない。

ストイックといえばそれまでなのだが、それではあまりにも逃げ場がない。

だからこそ強いともいえるが、それでは救いがない。

優しく、周囲を巻き込まない様に動く彼だからこそ何とかしてあげたいと思うのだ。


「でも、戦闘は私達に任せてね。ワルモーン君の力は強力過ぎて周りを巻き込みかねないからね。

と強すぎるのも問題だね」


「そうだな、でも力があるからこそ今回の討伐も簡単に出来る。勇者の後始末というのが気に入らんがな」


「助かります、こちらの意見も聞いていただけて」


「お互い様だ、同志になってくれるのならなおのことだ。同志は見捨てない、これはオレの信念だ。譲るつもりない」


「ハイハイ、キミは相変わらずよね。お堅い考えと真っ直ぐな信念で突き進むのよね。いいんじゃない、それで。むしろそれでこそよ」

両腕を組みうんうんとうなずくシンラーツ。


「わかっているのならば、さっさと片付けるぞ。相手は小物どもが数種類と不明の大物が一匹の様だ。この程度なら一日で片付く量だ。面倒事は早めに終わらせるに限る。次があるからな」


「ほんと、急ぐよね。慌てること無いのに」


「次ある、少なくてもあと二つある。その二つの問題を片付けんと大変な事になるかもしれんからな」

その二つとは勇者の被害にあった村の事だ。

一つ目の村でさえ問題積載だ。

それがまだ二つある、それで急いているのだ。

要は、他の村の心配をしているのだ。

それでいてこの村も心配している。


この不器用で優しい人間の考えがわかるだけに笑顔がにじみ出すシンラーツ。

言っていることはぶっきらぼうの癖に優しすぎる相棒に頼もしさも感じる面、呆れもする。

でも、理由が理由なだけに文句も言いにくいのだ。


ならばどうするか、カンタンである。さっさと問題を解決してしまえばいいのだ。

彼は、それをしようとしているのだ。


「ですが、改めてお聞きいたしますが本気で鉱山に攻め込むのですか?それも二人で?」


「えっと、正確には二人で向かって戦うのはワルモーン君だけなんだけどね。そうしないとワルモーン君の足手まといになるというか、

巻き込まれるからというか」

と言葉を濁しながらシンラーツは、苦笑いを浮かべる。


「なんですと!本気ですか!相手は強力な魔物の集団ですよ。いくらあなたが強くても無謀です」

村長は声を荒げる。

なんせ、勇者が去った後何人もの冒険者が挑んでは返り討ちを繰り返したのだ。

それも二桁は超えたのだ。しかも冒険者たちのほとんどがパーティを組み、最低でも五、六人でいどんでいるのだ。

それを一人でやるという、無謀にもほどがあると思うのが普通だ。


「大丈夫だ、そんなヘタレどもと一緒にしないでもらおう。この程度で返り討ち何て鍛え方が足らんだけだ。

村に来た魔物程度では足らん程度で済まされんほど弱かったんだ。多少うっぷん晴らしをしないとオレがもたん。

ストレスのはけ口くらいにはなるだろうよ」

と言い切る。


普通ならこの言葉は世間知らずのガキが言うようなセリフなのだが、ワルモーンが言うとそうも聞こえない。

なんせすでに圧倒的な力を見ている。

それに何も考えて居ない世間知らずではなく、経験に基づいた実力者の言葉に感じるのだ。

不思議な安心感をかんじてしまうのだ。

その為、出来るわけがない、といえないのだ。


むしろ逆に感じるほどである。

この人なら必ずやってくれる。間違いないと思えるほどだ。

それでも


「道中は村人たちと村に滞在する冒険者たちに任せてください。そのくらいはさせていただきたいのです」

真剣な目で訴えかける村長に断れないと悟ったのか、軽く嘆息し

「わかった。必要はないのだが、そちらの思いも理解できる。それはそちらの言い分通りにしよう。ただし、鉱山では手を出さない事を条件にするがな」

と腕を組みワルモーンは仕方がないという感じで答える。


そこで打ち合わせの詳細が決まる。

鉱山に向かうのは、ワルモーンとシンラーツの二名で

鉱山までの護衛を六人の冒険者が行い、道案内に村人が三人つくことになった。

さらにシアンウルフが一匹ついてくることになった。


鉱山の手前にある山小屋まで冒険者たちが護衛するのだが、冒険者たちは不満げだ。

本来なら鉱山の魔物も自分たちで退治して手柄が欲しいようだ。

なのにメインの魔物退治は、出来ないことが不満なのだ。

しかも冒険者たちは、若いので血気盛んなのも不満に拍車をかけている。


その不満が、山小屋で爆発することになる。



〇これは悪を気取ったいい人たちが、我が道を行きながら周囲に感謝されるコメディーである。




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