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22 悪者、力を見せつける

オークが村に迫る。

数は十匹で手には棍棒を持っている。

身体は二メートルあり、かっぷくがある。


戦うにしても大変な相手である。

その相手を村人たちは、馬房柵を敷き手持ちの竹やりで対抗しようを待ち伏せている。

その中を抜け、村の外に出る一人の若者がいた。


黒き禍々しい鎧を身に着け表情を変えずに進み出る。

彼は、「オレの力を見せる為の戦いだ。手御出さない様にしてくれ、巻き込んでしまうかもしれないからな」

と言われていたのだ。


その指示に村長は従い、馬房柵の内側にいることになったのだ。

彼が、あの魔物の群れをどう対処するのかを見るためだ。

オークの群れが若者に迫る。


若者は動くことなく立ち尽くす。オークたちは若者を獲物として認識し手に持つ棍棒を振り上げた。

だが、そこまでだった。


オークどもが若者に近づいた時点で魔物たちが燃えたのだ。

彼が纏う鎧だけでなく、スタンシェルというシステムが発動していたのだ。

これは、彼の半径五メートルに入ると電撃で相手を炭に変えてしまうほどの火力が襲うのだ。

そこは、まさに電子レンジの中にいるようなものだ。


有無を言わさず、炭に変えていく。それは慈悲も容赦もない純粋な力が満ちる場所と化している。

最初に二匹は一瞬で炭と化し、彼は魔物群れに向かい歩みを進めるだけでよかった。

近づくだけで燃やされ炭と化すのだ。

その状況に魔物たちに恐怖が芽生える。


人間は、ひ弱な蹂躙されるだけの生き物などすぐに押しつぶせると思っていたのだ。

だが、目の前にいる人間は、無表情で仲間の魔物を燃やし尽くしていく。

それも抵抗する間もなく一瞬で抵抗もできないままでだ。

魔物たちは逃げるわけにもいかない。

住みかを追われてここに来ている以上帰る場所は無い。


だが目の前にいるひ弱な人間は、自分たちに絶対の死をもたらす。

進むも死、戻るも死。

それならば目の前にいるひ弱な人間を亡ぼす方を選択する。


それが彼らの最後になる選択だった。

オークの群れは全て炭と化した。


黒い柱が、ブスブスと煙を上げ立ち並ぶ状況になっていた。

全ての魔物を黒い柱としたことを確認すると、

その一本の黒い柱を腕を横に振り吹き飛ばす。

そこから魔石が転がり落ちる。

それを拾い、若者は踵を返し村に戻る。


村の入り口まで戻ると若者は開口一番に「これで問題ないか。炭の柱の中には魔石が残っているようだから

村の人間で回収して使ってくれ」と言ってきた。


魔石は、高価で売買されるため、干上がっていた村にはありがたい収入だ。

だが、それでも村に入る収入が大きすぎるのだ。

そのことに村長が「これでは我々に利益が出過ぎます」と恐縮する。


「それで、おつりが出るのならこの村の滞在費としてくれ。出来ればうまい飯を刺してくれればいい」

と若者は言うと村の中に入り、村長宅に向かっていった。


余りの圧倒的な力で魔物を蹂躙する若者に恐怖を感じながらも村長は感謝しかなかった。


他の村人たちも突然現れたよそ者が、村に襲い掛かる魔物たちを一方的に焼き払う姿に圧倒されていた。

圧倒的に凶悪な暴力で村を救っていたことには感謝はしていたのだが、その暴力が自分たちに向けられることにも怯えていた。


力を見せる為とはいえ、あまりにも凶悪な力は見せられた者の感じ方を二分する。

頼もしいと思うか、恐怖するかである。


加減が下手な若者・ワルモーンはそこまで考えが回らない。

ただ単に不器用すぎるのだ。

それを押し通すだけの力を持ち合わせているので本人はあまり気にしていない。


とにかく、村は一時的ではあるが救われた。



〇これは悪を気取ったいい人たちが、信頼を得るために力を示しすぎて周囲に引かれるコメディーである。


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