20 悪の組織のボー村侵略・準備
翌日、村に怪しい一団がやってきたのだ。
黒いタイツに身を包み、左肩には肩当てを着けマスクをつけている。
肩当には【ギャクゾーク】のエンブレムと名称がつけられている。
その怪しい一団に村から向かう人間が二人。
こちらも黒い禍々しい鎧に身を包み、優しそうな好青年の顔が映る。
もう一人はカジュアルな服装で足取り軽く歩くボーイッシュな女の子である。
「わざわざ来てもらってすまんな」
ワルモーンが一団に話しかける。
その一団から代表者が二名、前に出る。
「この度は我々に機会を与えていただきありがとうございます。我々はこの村の警護でよろしいのですか?」
「それもあるのだが、それ以外に我々の同志であるこの村の発展を頼みたい。君らなら出来るだろう」
をワルモーンが言うとその言葉に一団からざわめきが起きる。
「それは我らリノウナンバーズに農業や畜産を行えということですか?」
代表の者が体を震わせる。
「そうだ、そうすれば同志の村も発展し我らの組織の食糧問題も解決する。それに君らにとってもいいことだろう」
「構わないのですか?」
「かまわん、やりたいようにやってみろ。ただし、村の人たちに意見を聞きながらになるがな」
この言葉にもう一人の代表者以外の一団の全てが跪く。
「ありがとうございます。我らのためにこのような機会を与えていただき嬉しゅうございます」
「君らは、不当に農業や畜産の道を断たれた者の集まりだ。その思いのたけをこの村に注ぎ込んでくれ。
今から他の村に向かい解放してくる。解放が終了したらその村も頼むことになる、面倒事ばかり増やしてすまんな」
と、申し訳なさそうに言うワルモーンに
「何を言われます。ワルモーン様は捨てられ路頭に迷うしかなかった我らに手を差し伸べてくださいました。
それどころか今回のような我らが失った夢をかなえる機会を与えてくださった。
これは、面倒事などではございません。我らにとっての喜びです」
「そういってもらえるとオレも嬉しいよリノウ・シュト。君の・・・いや、君たちの力いかんなく発揮してくれ。村長」
というとワルモーンは振り向き村長を見る。
「なんでしょうか?ワルモーン殿」
とワルモーンにおそるおそる近づく。
「彼らは、我が悪の組織随一の農業、畜産のエキスパートたちだ。彼らの指導の元、村を発展させてもらえないだろうか?」
ワルモーンはバツの悪そうな顔で話しかけた。
村長は思う、
この御仁は不器用すぎるのだろう。相手のためになる行動であってもこうも見事にためらう。
もう【悪】ではなく、神の御使いに感じてしまうのだが、それを嫌がるのだろう。
困ったお人だ、と。
「いえ、村を守っていただくだけでなく、村を良くしていただけるのであればこちらに文句など出ません。
むしろ、ありがたい限りです」
「それなら今からは当人たちで頼む。あとク・チダーケさん、現地人のケガ人を頼む。オレが倒した相手なのだが、うまくこちら側に引き込みたい。頼めるか?」
と跪かなかったもう一人の代表者が口を開く。
「いいわよ、諜報部が集める情報だけだと洩れもあるからね。その情報も手に入るからでしょ、その辺りはうまくやるわ。
ケガ人の所に案内してもらえるシンラーツちゃん」
とシンラーツを見る。
「じゃあ、行きましょう。ク・チダーケさん」
というとク・チダーケを案内するために歩き出す。
「ワルモーン殿、出発はいつ頃にしますか?」
「そうだな、引継ぎや準備をしてからになるから、昼過ぎでいいだろう。どうせ近いんだろう」
「そうですな、一つづつは近いですが数がありますし。それでいいと思いますよ」
「では、それで頼む」
ワルモーンが打ち合わせをしている間に。
リノウナンバーズと村長は、農業と畜産の事で盛り上がる。
ココからボー村の異世界侵略が始まるのです。
現代技術をつぎ込み、異世界の人たちからすれば理解できない方法で変革を行い唖然とさせることとなる。
それでも、結果が良い方向に進むので徐々に受け入れられていく事となる。
それは、別の話である。
〇これは悪を気取ったいい人たちが、世間とかなりズレた考え方と行動をしながらも周囲に感謝されるコメディーである。




