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19 悪者は・・・へ進撃するのを止められる



戦いは終わった。

戦いというより【悪】の者たちが勇者たちを蹂躙しただけなのだ。


勇者たちの亡骸を片付け、しばらくして村長、バー・ヌーシ、ワルモーン、シンラーツは村長宅で会合を持つこととなる。

そこには勇者パーティの生き残りである女戦士も別の部屋にいる。


「ですが、あそこまで圧倒されるとは思いもしませんでした。強いとは思っていましたがここまでとは」

バー・ヌーシはワルモーンたちの戦いを称賛していた。

まるで戦争にでも勝ったように


「これでこの村は大罪人扱いになってしまいました。勇者に蹂躙されるかの二択しかなかったとはいえ、どうなるのでしょうか」

これからを案じる村長の顔には不安の二文字しかない。

国認定の勇者を倒したのだ、これは国に反旗を翻したと同様である。

先を考えれば不安になるのも仕方がなかった。


「ならば、この国を亡ぼすか。何簡単だ、この国の王都を吹き飛ばせばいい。オレの七割くらいの力で王都くらいなら消し飛ばせるしな」

と、ワルモーンは物騒な事を口走る。

その言葉にギョッとする村長とバー・ヌーシ。

いきなり、国を亡ぼすなどと簡単に言うので驚いたのだ。

先程、勇者を圧倒したのも驚きなのだろう。

それでも善良じゃない事にも驚くところなのだろう。


それでも飛躍しすぎていた。

国から狙われる立場に悲観していたのにその国を滅ぼそうなんて言葉が出るのがさらに驚きなのだ。


「こら、まだ早いよワルモーン君。こっちに来てまだ一週間も経ってないんだよ、準備が出来てない状況で国なんて亡ぼしたら後始末が大変だよ。確かにゴクアーク様ならノリノリでやれ何て言いそうだけど・・・面倒事がいきなり倍速で増えても対処できないからね。

まず、この村で地盤固めしてからだよ」

と、ワルモーンをたしなめにかかるシンラーツ。

割と常識的な発言に胸をなでおろす村長とバー・ヌーシがいた。


「国を亡ぼせば、この村の最大の問題は消えるからいいだろう。最近手加減ばかりで疲れているんだ。

勇者も対したことはなかったしな、ここはオレのうっぷん晴らしのために国に滅びてもらおう」

と、さらっと物騒な事を口走る。


「だ・か・ら、面倒事の倍速増産はしない!さっきも言ったけどまず村の足場固めから!それに生き残りもどうするか考えないといけないし、面倒事がすでに多いんだよ。大変なんだよ!」

とシンラーツが、念押しするようにワルモーンを止めにかかる。


実際、異世界召喚に巻き込まれ、こちらに来たのが四日前。

情報収集で今組織は動いているのにもう勇者を倒している。

今度は国を亡ぼすなんて言い始めれば、普通は止めにかかる。

展開があまりにも早すぎてついていけないのだ。


勢いがありすぎるのだ、ここで止めないとここの国だけで済まない可能性もあるのでシンラーツは慌てていた。

ノリだけ突き進むのは、ワルモーンの悪い癖だ。

まあ、組織のトップであるゴクアークも同じような人種なので手綱を握る者は大変である。


「そうか、なら仕方がないな。だが廃村寸前に村ならいいだろう?」

とワルモーンが言うと


顎に手を立てて考えるシンラーツが

「そうね、そこはむしろ早めに対処しないといけないかもね。でもどうするの?このまま私達が動いちゃうとこの村が危うくなっちゃうよ」

という。


「因みに本部に連絡したか?」


「まだだよ、いろいろと面倒事も多いしね。方向性を決めてからでもいいかなって感じてたから」


「なら、すぐにでも連絡してくれ。その時にク・チダーケさんとリノウナンバーズをこの村に呼んでくれ」


「なるほどリノウナンバーズが来れば確かにこの村は安泰だよね。でもク・チダーケさんが来る必要あるの?」

と不思議そうな顔をする。


「あの女戦士の治療をしてもらうためだ。ウチの組織に来てもらおうと考えて居る」


「へっ?、なんでアイツ助けるの?」


「まあ、カンタンに言えば情報が欲しいからだ。今の情報は割と偏っているからな、それを補いたい。

それにウチの諜報部だけでは、どうしても漏れる情報もあるだろう。その補完の意味もある。

さらにオマエの部下としても使いどころがありそうだからな、それも視野に入れている」


「わ、私の部下?私まだ下っ端もいい所だけど」


「ちょっと待ってください、シンラーツ殿が下っ端扱いなのですか?」

バー・ヌーシが驚きの声を上げる。

彼からすればあの強さで下っ端なのがびっくりなのだろう。

だが、真実である。

彼女は、下っ端の中でも新人なのだ。

しかも強さも下っ端戦闘員の中の中級クラスなのだ。

これは、まだ彼らが知らない事である。


「そうよ、私新人だもの。今は見習いみたいなモノだよ、でこれから呼ぶのは私の先輩で私より確実に強い人たちだよ」

と満面の笑みを村長とバー・ヌーシに向ける。

その笑みに癒されつつも動揺を隠せない二人であった。


「オレの部下たちが来ればこの村の問題点の解決に動いてもらう。かなりの手練れでもある。問題は無くなるだろう、それよりも廃村寸前の村だ。出来れば案内を頼みたい、無理ならば場所だけでもいいが」


「いえ、案内は私がやりましょう。私は商人ですからね、他の村にも交流はあります。それに助けていいただけるのであれば私の利益につながりますので問題ないです」


「助かる」

と話はまとまったようだ。


「あ、ワルモーン君。みんな明日には来るみたいだよ」


「わかった。あいつらが来たら指示を出し、オレたちは件の村に向かう。で、だ。それぞれの村の特徴を教えてもらいたい。

何か問題解決の手掛かりになるかもしれん」


「うんうん。やはりあなた方について正解みたいですな」

と嬉しそうにうなずくバー・ヌーシをいぶかし気に見るワルモーン。

ワルモーンからすれば何を言っているだろう、今更という感じで、

バー・ヌーシからすれは、【悪者】を自称するとてもお人好しのいい人に感じられていた。

戦い方は容赦ないが、それでも守るべきもののための行動とあれば理解できる。

それに見ず知らずの人たちの身を案じるなどお人好しにしかできない。

だが、の御仁はそれが出来るだけの強さもある。

正に利用的な【正義の味方】なのだが、そういうと彼は嫌がるので言わないようにしている。

まったく難儀なことである。

詳細な打ち合わせを済ませ、ワルモーンたちは近くで狩りをしてその日は終わる。





〇これは悪を気取ったいい人たちが、世間とかなりズレた行動をしながらも周囲に感謝されるコメディーである。


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