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160 悪の弟子と生徒の後日談



二人は悩んでいた。


厳密にはセメットだけなのだが…


ワルモーンが、旅立つ前に言われたことに今だに信じられずにいる。


彼が言うのは、



この世界に異変が起きている。


前回の精霊の住処での下位精霊の暴走。

普段あそこまで狂暴化することはないとあの村の村長の話だ。


更にあちこちで起きる魔物の狂暴化と封印魔獣の復活。


最近ではルトランが討伐した風トカゲ。

本来なら、こんな街の近くまで来ることない魔獣であそこまで好戦的ではないそうだ。


それを踏まえて彼は、こう断言した。


「度重なる異世界人召喚の影響で世界が歪み始めている。

このままでは、何かの拍子で歪み微々割れた世界に割れ目ができる可能性がある」

と、恐ろしい事を述べていた。


本来、教会が勇者を召喚する術を乞う頻繁に使うことが問題だと。


そのために、修復するための糸口が欲しいというのだ。

それをセメットにやってほしいと言っていた。


そして、どんな異変に対しても対処できるようルトランには、剣士や戦士を養成してほしいとも言っていた。


ワルモーンたち自身が異世界人召喚に巻き込まれた人間であるとも告白され、

信じないわけにもいかなくなった。


その研究はすでに悪の組織では開始されているともいわれ、戸惑いっぱなしなのだ。


セメットからすればいきなり規模のでかい話になり、戸惑うばかりなのだが、


「困ったらオレの名を出して組織を頼れ、必ず助けてくれる。

オレを含め、クセの強い人間ばかりだが、実力は確かだ。

それにお前たちはすでに同志だ。組織は同志をけして見放さない」

と心強い言葉ももらっている。


頼る方法はヘイト殿が知っているから大丈夫だ。

なんだかんだアフターケアまでしてくる。


厳しいんだか、優しんだかわからない人という意識は相変わらずになっていた。

でも、信用に足る不器用な人なのは確かだろう。


その人の頼みなのだ、無下にはできない。

セメットは、戸惑いながらも少し笑みを浮かべていた。




ルトランは、気合が入っていた。


彼がワルモーンから教わった心意一閃は、心構えと気功の使い方を中心にしたもので

本来の流派である古流武術ではないそうだ。


で、三つほど武術の型を伝授された。


斬撃、徒手空拳、刺突をそれぞれワルモーンが彼に見せた。


いつも見せる力技ではなく、美しく洗練された武術である。

要点をまとめた本ももらっていた。


勿論、型の練習もした。

注意点込みで。


ワルモーンから言われた世界の危機は、受け流していたがそれでも彼には

師匠から託されたという思いが強い。


根が単純だからもあるが、基本的に律儀なのだ。

彼自身もその行動が、師匠の恩返しになると思っているようだが、

それは、ワルモーンからすでに釘を刺されていた。


「オレに恩返ししようと思うな。

オレがお前の為にやったことでお前が良かったと思うことがあるのなら

それは後輩に送れ。

恩なんて返しても意味なんかない。

つなげていくことに意味がある。

いいと思うことをつなげて後輩たちに送り続ければ、その先にあるのはいい事だけだろう。できるかわからんがな。

だからこそ恩は送れ。頼むぞ一番弟子」


この言葉が彼をやる気にしていた。

教えてもらった技と託された思いが、彼の単純な思考を熱くさせていた。


幸い今の彼に弟子がいる。

二人で切磋琢磨すればこんなを乗り切るための戦士団は作れることだろう。


二人の若者にワルモーンは、自分ができない事を託したのだ。

不器用ではあるが、一応考えてはいる人なりの行動だろう。



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