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159 悪者はアフターケアに余念がない



ワルモーンは誇らしげでいた。

なんせ、自分の弟子が【風断ち】の剣士なんて二つ名をもらったのだ。


それでもワルモーンは冷静を装う。

彼が謙虚でいれる為におごらないようにするために。


それを知っているシンラーツは、笑いをこらえるので大忙しである。


それでも彼は、不器用を貫くのであった。

「よくやったルトラン。だが、これは最初の一歩でしかない。

謙虚でいる事を忘れ、驕った瞬間に全てを失うから気を引き締めるように」

相変らずである。


「ルトランもこれで一人前かな。

セメットも水響すいきょうの魔女なんて二つ名もついたことだしね」

と、シンラーツが言うとセメットは、しゃがみ込み両手で顔を隠し、恥ずかしさに悶える。


「それで本題入る。二人の身の振り方だ」

ワルモーンの言葉にルトランの顔つきが変わる。

悶えていたセメットも我に返る。


「えっ?どういうことですか?」

ルトランがたずねると


「ここの領主であるヘイト殿から信用できる戦士や魔法使いを紹介してほしいと言われてな。お前たちを二人を推薦した」


「「何で!!」」

二人は声を合わせるように疑問を投げかける。


「理由は簡単だ。お前たちは努力家で謙虚に行動すること考えている。

相手を見下すような行動もしなかったしな」


「それは、オレたちが用済みだという事ですか」

寂しそうな顔でルトランが言うと


「違うな、お前たちの力と人柄を認めた上で

この街の守護者になってほしいという意味だ。

オレたちは前に進むが、背中を信用できる人間に任せたい。

勿論、悪の組織から人を出すことも考えたが、

それ以上に信用に足る人物としてお前たちに任せたいのだ」


「嬉しいですが…私たちでいいんですか?」


「もちろんだよ、キミらに背中を任せておけば私たちも安心できるしさ。

いざというときに助けを求めることも出来るし…やっぱ、いや?」

シンラーツがたずねると


「いえ、その信頼にこたえたいです。

オレみたいな半人前に戦う為の覚悟を教えてくれた師匠の期待には応えたいです。

それに頼ってくれてるなんて嬉しいです」


「私は、複雑です。私の…その…二つ名と同じ泉の傍に居るのが…。

でも魔法使いの修行場みたいに出来たらうれしいというのもありますし…

受けます」

二人の返答を受けた。


「そうか、頼むぞ二人とも。

お前たちならこのガタついた街を立て直せると信じている」

ワルモーンの真剣な眼差しが二人に向けられる。


そのまなざしを二人は嬉しく思った。


この人は良くも悪くも不器用でまっすぐな人だ。

言動には、多少困るところもあるが、それ以上に信頼に足る人である。

その人からの推薦だ、むげにはできない。


「あ、そうそう。君らの元パーティーメンバーもここに来るからね。

彼らの修行も終ったらしいからここで行了してもらうことになったよ」

その言葉に二人の顔が緩む。

気にしながらもここまでの旅路がすさまじすぎて大変だったのだ。



二人は、この街に残り、街の立て直しに力を貸すことになる。

ワルモーンは、先を目指すこととなる。


ただ、それはワルモーンが本調子になってからである。


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