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15 悪者は村に選択を迫る


問題は起きまくった。

勇者は、ワガママし放題で村の娘を全部夜伽に回せだの

女戦士は、法外な金額を請求し

女魔法使いは、薬草をあるだけよこせだの

壮年僧侶は、教会を作り銅像を建てろなんて言い始める始末。


どれも、村の死活問題になることばかりで村長は必死に交渉する。

それでも聞かないのでバー・ヌーシが交渉に参加する始末。


それでも引かない勇者御一行。

一日目は、とりあえず話を棚上げにすることで事なきを得た。


この交渉が始まる前にワルモーンは村長に夜に村民を集会所に集めるように指示していた。

最初は何のことかと思っていた村長だが、勇者一行の無茶な要望に困り果てていたため、

そのことを予測して何か手助けしてもらえるのかと期待していた。


実際集会所に集まった村民たちは皆憤慨していた。

勇者など追い出せやあんな奴ら叩き潰せだの勇者たちのワガママに対して腹を据えかねていた。


そんな中、ワルモーンとシンラーツが集会所に入ってきた。

その二人を村長は出迎える。村長の目にいや村人たちに期待が宿る。

村の問題を解決してくれた二人からの呼び出しである。

今回も何か解決できる方法があるのだろうと思っているようだ。

そこで、ワルモーンは提案をする。


「オレからあなた方に問題解決の提案ではありません。ただ選択を提示します」

その言葉にざわつく村人たち。


「問題解決のいい案があるのではないのですか?」


「正直ありませんね、ですから選択です。これから言うことのどちらかを選んでください。

勇者たちに従い彼らの要求を聞くか、この国を捨て我々の組織に与するかです」

ワルモーンはが提示してきた選択は、非情なものだった。

その言葉にざわつく村人たち。


「どういう意味なんですか、国を捨てるなんて・・」

村の女性Aが聞いてきた。


「言葉通りです、このままでは勇者に食い物にされるだけです。ただ国が認定した勇者に逆らえば反逆罪に問われることは確実です。だから彼らの要求には従わないといけない。こればかりはどうしようもありません。なのでもう一つの選択になります。今の国を捨てることです。そうすれば国は関係なくなるので勇者を排除できます。その場合国からの庇護がなくなります、ですから我々の組織が代わりにこの村を庇護します」

シンラーツが説明していった。


「でも国を捨てるなんてできてもアンタらにこの国から攻撃を防げる保証があるのか?簡単に潰されるだけじゃないのか?」

村の老男性Aが静かにつぶやくように言う。


「そうですね、いきなり国を捨てるなんて言われても困りますよね。それにウチが国の代わりをするなんて言っても信用できませんよね」

と悲しそうな顔でシンラーツが言葉を紡ぐ。


「ですが・・・」

と言いながらマスクを触るワルモーン。

するとマスクは細かくパズルのように畳まれどこかに収納される。

そこには、普通の青年の顔が浮かび上がる。


イカツイマスク型のヘルメットの下にあるとは思えない好青年に見えた。

彼のまっすぐな目は、村人たちを射抜くように注がれる。


「私の力は見ていただけましたよね。私の組織では、あのくらいのことはできる者は多くいます。

簡単に言えばこの国程度くらいなら壊滅することも可能です。その上であなた方に選択していただきたいのです。

我々はその気になればあなた方に選択などしてもらう必要はありません、制圧すればいいだけです。

ですが、今あなた方はこの国の正義に抵抗できないでいる。我々もそうでした理不尽な歪んだ正義を振りかざす者たちに抵抗できませんでした。なので我々は立ち向かう事にしたのです、彼らが掲げる【正義】に対し【悪】として。

どうしますか、歪んだ【正義】の名のもとにこれからも暮らしていきますか?それとも抵抗して【悪】を掲げる覚悟はありますか。

我々はどちらを選んでも尊重します。」

この村に来てあまり話さないワルモーンが長々と話した。

しかも素顔をさらした。


その顔は誠実を絵にかいたような青年である。

しかも彼が来てから村に利益しかない。

村の恩人であっても危害を加えるタイプに見えない。


だが、この選択は難しい。

断ればこれから勇者たちに村をめちゃくちゃにされ、破滅する。

かといって賛同すれは国と言う巨大なものを敵に回すことになる。


行きも地獄、戻るも地獄である。

なので選択を求めたのだ。

これはワルモーンなりの思いやりでもある。


ワルモーンとシンラーツは村人たちの選択を待つこととなる。

話し合いをする村人たち、紛糾することはわかっていたのだが、荒れるというほどではなかった。


つまり、彼らの中ではある程度決断はされている様にも見えた。

話し合い後、村長が二人に近づいてきた。


「ワルモーン殿、シンラーツ殿。我らボー村の総意を言います」

と真剣な眼差しを向けて来たのだ。



〇これは悪を気取ったいい人たちが、悪いことしているつもりで周囲に感謝されるコメディーである。

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