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147 封印の意味


劣勢のワルモーンを初めて見たルトランとセメットは動揺する。

彼らが到着した時には、すでにワルモーンはボロボロだった。

加勢に向かおうとする彼らを抑えたのは、他でもないトレインである。


当のトレインは焦っていた。

「急いで離れるぞ、このままでは危険だ」


「ワルモーン君を見捨てるんですか!」

剣を抱えたままのシンラーツは泣きそうな顔で訴える。


「そうです、師匠に加勢しないと…」

「そうですよ、あんなワルモーンさんをほっておけません」

と、息はやる若者たちに


「ワルモーン様は大丈夫だ。むしろ我々が加勢する方が邪魔になる」

トレインの焦りが見える。


「そうは思えません。明らかに劣勢です。

勝てないことはわかります、でも隙くらいは作れるはずです」

普段は冷静に判断するセメットすらワルモーンに加勢することを望んだ。


「ええい、血の気の多いガキどもが!

時間がないのに説明せんといかんのか。

いいか、よく聞け。ワルモーン様の剣が折れた。

あれは、ワルモーン様の力を封印する核の一つだ。

その核が壊された以上、現在一割しか出せない力が三割から四割まで跳ね上がる。

それだけの力を出すワルモーン様の傍に居ればオレたちが吹き飛ぶだろうが!!

それに近くに足手まといの我々が入れば、ワルモーン様は本来の力が出せなくなる。

だから逃げるんだよ、ごねてないで逃げる。

そして、オレの言ったことがどれだけのものか遠くから見るんだよ!!」

トレインは声を荒げながら説明した。


慌てている割にきちんと説明している。


その説明にリーレは

「その話聞いたことがあります。

ワルモーン様は普段三から四の封印がされていて力がほとんど出せないと」

トレインの説明に信ぴょう性を加える。


「なるほどな、一緒に修行していて感じた違和感はその封印なのか」

レベリットは、納得いった感じで話に加わる。


まだ、納得できないでいる若者たちは、しぶしぶだが逃げることを選択した。

逃げないとワルモーンの邪魔になるという言葉を信じることにしたのだ。

多少、後ろ髪惹かれながら。


それを

「早くせい、これ以上ワルモーン様の足を引っ張るな。

力の解放まで時間がない。

急がんと巻き込まれる。

よく考えてみろ何でわざわざワルモーン様が、ピンクと戦うのに街中で無く

こんな辺鄙な場所を選んだかを」

トレインはさらに言葉を紡ぐ。


何故ワルモーンは街で戦わないのか?

勿論、街を壊したくないのはわかるが、それ以上の理由があったことに驚く。


「じゃあ、最初から負けるつもりはなかったってことですか?」

セメットが尋ねると


「当然だろう、負けるつもりでいるヤツなどいない」


「ですが、ワルモーンさんの言い方だと負けるのも覚悟しているように聞こえました」逃げながらもセメットは言った。



「それは覚悟の話しだ。進むための一歩のためだ。

まあ、後で話してやる。

今は逃げることが最優先だ」

トレインは渋い顔のままで逃げる。

彼自身も逃げる事は嫌なのだ。


勿論、頭では理解してはいる。

だが、自分より若いワルモーンに全てを押し付けているように

感じて嫌なのだ。


そうこうしているうちに後方から何かに押し出されるような感覚に襲われる。

実際、吹き飛ばされているのだ。


後方で何かがはじけ、その衝撃波が来たのだ。

これがトレインの言ったことだと彼らが理解するまでしばらくかかった。


衝撃波で吹き飛ばされた一行は、すぐさま振り向き発生源を見る。

そこには、片膝をつくワルモーンと顔を左手を覆うピンクがいた。


そして、

「ついでだ、説明しておいてやる。

これは幹部クラスしか知らない情報だ。


ゴクアーク様、ワルモーン様、アーバレル様の三人は

魔道器と呼ばれる鎧を着ておられる。

これは日本で…

オレたちがいた世界で魔王格にあたる人ならざる者のなれの果てだ。

それを扱えるのがその三人だけだった。


魔道器はあまりにも大きな力を出し続ける為、反転封印を施した。

封印すべき対象の力を利用し封印する術式。

分かるな強大過ぎる力を封印しているんだよ。

その一つが今壊された。


名前付きの聖剣によって…どんなものか見ているといい。

お前たちが加勢に向かおうとした人がもつ力の一端を」

トレインが苦虫を噛み潰すように言う。

本来、封印は破られる予定ではなかったのだ。


力の解放はワルモーンの負担となる。

それをさせたくはなかったのだ。


トレインは自身のふがいなさを改めて感じていた。



それに呼応してシンラーツがワルモーンから預かった二本の魔剣がカタカタと音を立てる。


それは、まるで何かに怯え震えるように見えた。

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