130 旅の一幕
ワルモーンは、悪を語れて、正義を駆逐出来て満足していた。
他の者たちはゲンナリしていたが…
それでも領主を倒し歪みを正した。
しばらくは、領主不在となる為トレインが領主代理を務めて
街の再生に乗り出すことになる。
ある程度、軌道に乗れば別の人間に領主をまかせるそうだ。
なし崩し的ではあるが、鍛冶師の街は悪の組織の傘下となった。
その為、ワルモーンは予定より遅れたが次の街に旅立つことになった。
次の街は、教会の大陸支部がある街。
この国の王都の二つ前にあるところだ。
意気揚々と次の街に向かうワルモーン。
シンラーツは、付き従う者たちを引率しながらになる。
「なんかワルモーンさん子供みたいですね」
「そうね、ホントは私の一つ上だからあれが素でもあるんだけどね」
「そうなんですか、じゃあ私と同年代だ。
いつもは大人っぽいから気にしてませんが…」
「まあ、それなりに苦労してるからね。だから悪に傾倒してるんだけどね」
「ですけど、先生はそんなワルモーンさんが好きと言うわけですね」
「ななななななななななななっなんでそんな話になるの?」
シンラーツは、分かりやすく動揺した。
「わかりやすいですからね、二人とも」
と、笑顔を作るセメット。
「わかりやすいの?困ったな。悪の組織の人間としてまずいな。
幹部連中にしめられる」
うなだれながら言うと
「結構厳しんですね、悪の組織って」
「そういうわけじゃないけど…私は…さ。
幹部候補なんで厳しめに対応されているんだよ」
「なるほど、因みに私たちの立ち位置ってどうなるんですか」
「そうね、いい言い方で現地協力員。別の言い方だと悪の組織の戦闘員予備役と言ったところかな」
「あっ、やっぱりもう悪の組織関係者何ですね」
「そりゃそうでしょ、これだけ一緒に居れば。事情も知ってるし、色々指導もしてるし、これで関係者じゃないってどうよ」
「確かにそうですね、ホントは大魔導士とか言われたかったんだけどなあ」
と、歩きながら空を見上げセメットは遠くを見る。
「なれるでしょう、大魔導士」
「なれますかね」
「キミたちに教えている心意一閃ってのは、武術じゃなくて心得なんだよ。
キミたちが向き合うことに対する」
「心得ですか?」
「そう、心得。武術であれ、魔法であれ。
そう向き合いどう進むのか、それを示す羅針盤のようなもの。
だからこそ、応用も出来るし、対応も簡単なの」
「なら、私も教えてもらいたいな心意一閃。
でもルトランが、したような修行は嫌だな」
「アレは、時間も無いし極端な事例だよ。
本来は、あんなことしない。ワルモーン君の悪乗りのせいだね」
「そうなんですか。じゃあ、次の街に着いたときに指導していただけますか?」
「良いよ、教えてあげるよ。
別に秘密ってわけじゃないし、ただついてこれないだけだから」
「なんか、さらっと恐ろしい事を聞いたような気がしますが…
それでもいいです。お願いします」
「OK、任せせて。ワルモーン君よりは優しく出来ると思う」
その言葉に一抹の不安を感じてしまうセメットである。
なんせ比べているのは、非常識驀進中のワルモーンである。
そんな人より優しくとは、どのくらいなのだろうと悩んでいた。
だが、とよくなる為には必要だと切り替えることにしたようだ。
そして、一行は次なる街に向かう。




