126 後始末?
ワルモーンは新たに取り込んだ商人エチアトの対処をトレインに任すことになった。
へたにワルモーンがかかわると話がややこしくなることを危惧した形だ。
それはワルモーン自身も理解できているらしく、この提案を受け入れていた。
で、この問題は終わりとなり、ワルモーンご一行は旅立つのでした。
なんてことでは終わらない。
問題はさらにややこしくなる。
エチアトからワルモーンたちが一同に集まったときに語られた内容が問題になる。
精霊石に目がくらんだのは、地主と街の人から呼ばれるこの街の領主だ。
彼は、もともと教会騎士団の一員であり、金に汚いところもある。
更に、教会より聖剣を賜るほどの手練れである。
なので、今回の件から手を引く気が無いらしい。
つまり、まだあきらめていないのだ。
からめ手を使おうとして穏便に済まそうとしていたエチアトが失敗したことで
今度は力技で来る可能性があると言った。
彼は、力技を使う際、「神の名の元に正義を執行する」という口癖で行動するという話をした。
その言葉が出た瞬間、レベリット以外のワルモーンご一行はまずいという顔をした。
勿論、ワルモーンは、邪悪な笑みを浮かべていた。
それはそうだろう。
悪を豪語する彼にとって、正義を語る人間は敵でしかない。
つまり、彼に行動するきっかけを与えた状態なのだ。
状況が分からないのは、エチアトの関係者とレベリットのみ。
ワルモーンは嬉しそうで、シンラーツは手で顔を覆っていた。
ルトランとセメット、乾いた笑いを浮かべ、シアンウルフの蒼月に至って我関せずで寝ていた。
状況が理解できていない一同に対してトレインが説明に入る。
言ってしまった言葉が、取り返しのつかない状況を生んだことに気が付いた時には、
やる気満々のワルモーンが、領主に家の場所を確認して、その場所を見て嬉しそうにしていたのだ。
エチアトは他の人に何とか穏便に済ませられないかと相談はするが、
答えは、同じだった。
「もうどうにもできません」
と、一貫していた。
それを聞いたエチアトは、必死にワルモーンに訴えかけていた。
「街は壊さないでくださいね。お願いしますよ、お願いしますよ。聞いてますか?」
でも、その声はワルモーンに届いてはいなかった。
それでも懇願するように涙目で訴え続けるエチアトを周囲は憐れみを感じていた。
ブレーキが壊れた車…もとい、ダンプを止める手段はない。
そう諦めていたからだ。




