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125 悪者は剣の力を見分する




冒険者ギルドの個室で二組が、向かい合う。


片や護衛を二人連れ、ふくよかな体つきの男性エチアト。


片や男女の二人組、ワルモーンとシンラーツ。



交渉の内容は、ワルモーンが渡した精霊石を加工し、

その石に力を七割使える物を作ること。



成功すれば、ワルモーンは精霊石を提供し

失敗すれば、悪の組織の傘下に入ること。



「では、結果を聞こうか」

ワルモーンは単刀直入に答えを求めた。


その言葉にエチアトは、真剣な顔つきで一振りの剣を机の上に置く。


その剣をワルモーンは手に取り、鞘から抜く。

と言っても剣の根本を確認する程度引き抜く。


根元の部分には精霊石がはめ込まれていた。

それを確認すると剣を鞘に納め、机の上に置く。


「加工はできているようだ。後は石の力をどこまで解放できるかだ。

それを見せてもらいたい」

ワルモーンは次の条件を満たしているのか、確認を求めてきた。


「構いませんが、ホントにやるのですか?結構な危険をはらんでいますがね」

額には汗がにじみ、顔には焦りが見える。


「構わんよ、この程度の石の力程度危険とも思わん」

ワルモーンに悪気はない。

むしろ、本当の事なのだ。


だが、この言葉はエチアトの退路を塞ぐ。


「わかりました。このギルドの訓練場を抑えてあります。そちらでご披露いたしましょう」

と、言うと剣をつかみ立ち上がる。


そして、冒険者ギルドの訓練場でエチアトの護衛の一人が中央で先ほどの剣を持つ。


それを残りの人間たちが訓練場の端から見ている。


「では、始めます」

と、訓練場の中央に立つ護衛が剣を抜き、振り上げる。

すると剣は稲妻を走らせ光り出す。

そして、目の前にある的をめがけて振り下ろす。


イナズマが走り、的を粉砕する。

これで石の力の三割程度を使っていた。


「どうですかな、ご要望通りの力だと思われますが…」

ワルモーンたちの顔をうかがいながらたずねる。


「そうだな、石の力は引き出せてはいるようだ。だが目標の七割まで出せていないようだが…」


「七割まで出すと訓練場が壊れてしまいます。

それに耐えられる的もございませんし…」


「なるほど、ではその的はオレがやろう」

そう言うとワルモーンは訓練場の中央まで歩き、試験打ちしている護衛の前まで行き

正対する。


「オレの持つ魔剣に向かって全力で力を出してくれるとありがたい」

と、言うと腰の剣を引き抜く。


剣はイカヅチをわずかに纏う。


「良いのですか?そんなことをすればアナタ様の身の安全を保障できませんが…」


「構わんよ。その石程度の全力ではオレにケガをさせる事すらできん」

ワルモーンは言い切る。


「良いのですか?本当に冗談では済まされませんよ」

と、ワルモーンとシンラーツを見ると


「大丈夫ですよ、あれくらいならワルモーン君の相手にもならないですよ。

ついでに言えばワルモーン君がもっている剣は、嵐の山の山頂にある魔剣の内の一振りですよ。問題にもならないでしょう」

笑顔で返すシンラーツ。


もう引けないことを理解したエチアトは、

「構わん、全力で行け!」

やけ気味に言うと


護衛は頷き、剣を帯電させる。

先ほどよりも強い光を帯びた剣を振り下ろす。


イカヅチはワルモーンに向けて走るが、ワルモーンは魔剣で受けきる。

ワルモーンは平然としていた。


ん?何かやったのか?みたいに反応が無かった。


だが、護衛がもっていた剣は地面に落ちて突き刺さる。

正確に言えば、柄の部分が壊れ、刃が落ちて地面に突き刺さった。


「なるほど、これは失敗扱いでいいのかな?剣が耐えきれていない」


「いえ、力は申し分ないはずです」


「だが柄が壊れた。一発しか撃てないのであれば意味がない。

刃だけ無事では次につながらない」


「柄さえ変えれば対処はできます」

エチアトは、必死に弁明する。

それに対して剣を鞘に納めたワルモーンがエチアトを見て


「言い方を変えよう。刃だけを頑固親父の鍛冶屋で手に入れて柄だけ加工してもだめだ、と言っている」


「なっ」

エチアトは、言葉を詰まらせる。


「ばれないと思ったのか?そこに突き刺さっている刃には見覚えがある。

禁止していたこともやっている上に力も使いこなせていない。

これは、失敗だろう」

と、言い切る。


俯き、大きく息を吐きエチアトはかぶりを振る。

「そうですな。失敗ですし、ルール違反もしましたしな。

お約束通りにいたしましょう」


その言葉を聞いたワルモーンは、エチアトの所に歩みより

右手を出し

「歓迎しようエチアト。詳しい事は手の者から説明させる。

勿論、傘下に入るからは損はさせんよ」

と、言う。


顔をあげワルモーンを見ると彼は相変わらずのブッチョウ顔で、

後ろにいたシンラーツは笑顔だった。


それを見て、エチアトは思う。


『かなわんな、これは』

出された手を両手で握り、



「なんか毒気を抜かれた気分ですな。よろしくお願いします」



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