121 悪者は凹む
さて、問題は続く。
実は、ワルモーンが気に入った鍛冶屋に問題が起きる。
どこから仕入れたか知らないがその鍛冶屋に精霊石の加工をお願いしたことが
他の鍛冶屋が知ることとなった。
理由は簡単だ。
ワルモーンたちがギルドで依頼された精霊石の確保と言う依頼をこなしたためだ。
ワルモーンたちは、良くも悪くも目立つ。
彼らの動向を監視していた者たちは、どこに入り浸っているかを調べるのは容易だった。
特に欲に目がくらんだ者たちには良い獲物にしか見えていないのだ。
相手が獰猛な獣であっても自分たちの都合のいい部分しか見ないから。
で、その為問題が起きたのだ。
こんな辺鄙な鍛冶屋なのではなく、ウチの鍛冶屋に来てほしい、と。
そして、さらに問題は大きくなる。
ワルモーンが気に入っている鍛冶屋にも矛先が向く。
「お前らみたいなクズ鍛冶屋にはもったいない上客だ。
こちらによこせ」と。
もう言いがかりも良いところである。
首謀者は、この街の有力地主と商人と鍛冶職人のグループだ。
完全に頑固おやじの鍛冶屋を潰しにかかっていた。
有力地主と商人は精霊石という金の生る木のため、鍛冶職人のグループは気に入らないからという理由だ。
リーレから事の顛末を聞いていたワルモーンが黒いオーラを纏いだす。
「ほう、気に入らないから嫌がらせする連中か。それも同業者か、それをうまく利用している地主と商人か。自分たちの行動の責任も取れないバカどもか。…街を出る前に掃除くらいするか」
黒い笑顔をする。
それを見たシンラーツは、
「ああ、しょうがないね。ワルモーン君この手の話し嫌いだもんね、無駄に一本義な所があるというか」
半ばあきらめ気味に言う。
「なんだ無駄に一本義って。どこの渡世人だ、義理と人情の世界の住人みたいな言い方をするな」
と、抗議するワルモーンを
「師匠は、義理と人情で出来ているんじゃないんですか」
「ワルモーンさんは、それが行動原理じゃないんですか」
「ワルモーン様とゴクアーク様は、義理と人情の世界の住人と言うよりもその世界の管理職みたいなものじゃないですか」
「ワルモーン殿ほど義理と人情で生きている人を見た事がありませんが…」
と、他の人たちが、ワルモーンをどう見ているかが明らかになった。
その言葉にワルモーンの黒いオーラがしぼんでいった。
さっきまでの迫力は何処へやら。
がっくりとうなだれた。
「でっ、でもさ。掃除するのは賛成だよ。あの頑固親父、人としては信頼できるもんね。それに気に入らないくらいで相手を潰しにかかる連中は許せないし…ね」
明らかに凹むワルモーンにシンラーツは、フォローを入れる。
それに合わせて他の連中もフォローを始める。
それで何とか立ち直るワルモーン。
「「「「「案外チョロいな」」」」」
皆はそう思ったが口にはしなかった。
また凹まれるとかなわないからだ。
と、いう事でおバカにお灸をすえることになったのでした。




