120 悪者は熱くなる
ワルモーンは集落を出て、鍛冶師の街に戻り宿に入る。
そして、改めて旅の仲間たちと話し合いをする事にした。
ルトラン、セメット、リーレの三人とシンラーツは、手に入れた精霊石を武器に加工してつけてもらうことになった。
実の所、火の下位精霊を倒しに行ったときに道中、土の下位精霊も倒していた。
つまり、彼らの手元には現在、風、雷、火、水、土の精霊石があることになる。
戦力向上のためにも加工は必要となる。
さらに今回どうこすることになったレベリットは、後衛で弓と精霊魔法、四元魔法を使う。
ワルモーンは、武器に精霊石を付けることを進めたが…まだそこまでの実力のない自分が恐れ多いと断られた。
最初にあった時と比べれば、すさまじく謙虚になっている。
でも言い分もその通りでもあるのでとりあえず保留扱いにして
それとは別にシンラーツに精霊石を組み込んだ弓の制作依頼はするように連絡している。
弓は、制作が難しく時間がかかるで注文だけとなった。
他の者たちの武器は、調整もあるので街に一週間ほど滞在することになった。
その間に各自トレーニングや自由時間に充てることになった。
鍛冶屋の親父の所にお願いした時、すごく嫌そうにしていたとシンラーツから聞いた。
しかし、弟子である男女二人から聞いた話だと嬉しくて仕方ないくせに
ひねくれているので表の出していないだけらしい。
なかなかなワルモーン好みのひねくれっぷりである。
とにかく現在は待ちなのでワルモーンの教えを受けているレベリットが連日ボロ雑巾のようになっていた。
手加減が苦手なワルモーンに教えを乞うている時点てこうなるだろうと
他の四人は理解していたのだが、本人たっての希望なのでなんともできなかったが、
当人は、なんか嬉しそうなのでそのまま放置となったのである。
レベリットはドMなのではないか?と思われるくらいだ。
それでも彼らの日常という名の苦行は一週間続く。
と、言っても苦行なのは一名だけなのだが、続いた。
例え、連日ボロ雑巾になっても、である。
で、なぜ見ているだけかというと教えているワルモーンもノリノリなのだ。
「貴様の力はこの程度か」とか「まだ、戦えるだろう。立ち上がれ!」とか
無駄に熱い体育会系全開で、熱量があの二人だけすさまじく、近寄るのを躊躇してしまう。
昭和のスポコン並みに行動する二人を遠目で見ていても引いてしまっていた。
一番引いていたのは、本来ツッコミ役であるシンラーツである。
「うわっ!いつの時代のスポコンモノよ。引くわ~」
と、呟き引いていた。
そう思うならツッコめよ。
周囲は、そう思っていた。
二人の生徒は、立場上言えないが…言える人が居ました。
「シンラーツ様、アナタがツッコミ役なんですから引いていないでツッコんできてくださいよ」
リーレは、冷たい目でシンラーツを見ていた。
「何で私なのよ。てっ言うか、何よツッコミ役って!私は副官なの、ふ・く・か・ん!ツッコミ役じゃないわよ!」
と、抗議し始めた。
「それこそ何を言っているんですか。副官はどの大幹部に対しても手綱を引く係です。アクラーツ様、エグーミ様もきちんとツッコミ役をこなしていますよ。
シンラーツ様もこなしてください。あの無駄に暑苦しい二人を止めてください。
問題が他にもあるんですから無駄に暑苦しい事にカロリーと時間を使わないでください」
と、辛辣にリーレが言う。
「そうは思うけど!なんか納得できない!…でも、私がやるしかないんだよね」
暑苦しい二人を呆れたように見ているシンラーツ。
「そうですね、立場的にも人選的にものシンラーツ様が一番適任です」
リーレが答えると
シンラーツはため息一つ。
「あんたもウチの組織に染まって来たわね」
と、感心したようにリーレを見ると
「光栄です。なんか嬉しいです」
と、喜ぶリーレ。
その姿を優しい顔で見たシンラーツは意を決して気合いを入れ直し
無駄に暑苦しい二人の元に歩み寄る。
無駄に暑苦しい二人は、シンラーツの勢いに居されタジタジになっていた。
それは見事なまでに。
無駄に暑苦しく熱量満載の二人のМっ気たっぷりの昭和特訓は終了と相成った。
その様子は、結構有名となって鍛冶師の街での語り草となった。




