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115 悪者は人間アズパラガスと対峙する



悪者たちは、集落近くの盆地に来ていた。


ここは、適度な広さがあり、魔獣がたむろするエリアである。


只今ルトラン、セメット、リーレが手に入れた精霊石になれる為に

お試しの為に魔獣を狩っている。


その姿は、遠目で見ればすでに英雄クラスに見える。


そのそばで、様子を見守るワルモーンとシンラーツ。


そして、お目付け役として長老とその息子(若者)、護衛が二人いた。


長老は感心しながら、若者と護衛は顎が外れるほど驚いてみていた。

彼らの実力を過少評価していたから今見ている状況は、予想外と言わざる負えない。


予想を上回る強さを見せる彼ら。

更に驚くことは、動かないでいる二人が、彼ら以上に強い事を示している。

一度、戦っていたから強いのはわかっていたのだが、それでも自分たちより少し強い程度だと思っていたのにはるかに強い存在だと認識してしまったのだ。


これほど強い彼らのさらに上の存在。

それは、もはや異常な存在にしか見えなかった。


そうこうしていると、魔獣の巣ともいえる盆地にいた魔獣は全て駆逐されてしまった。


魔獣の被害も出ている集落側としては、ありがたい事なのだが素直に喜べない複雑な心境になっていた。

魔獣を解体し素材を取っているところに


別の一団が来た。


精霊保護団体と緑一色の人、そして教会騎士団である。


その姿を見たシンラーツは、

「予定通りなんでしょうけど…あの一人以上に不自然なアスパラガスは何?」

警戒してみていた。


「アレは、かの有名な断罪戦隊のグリーンこと動物愛護テロリストだ。

動物愛護の名の元に何をしていいと思ってるおかしな奴でキリサキハンターたちの仇敵だ」

と、横目で一団を見ていたワルモーンが答える。


彼らは、ワルモーンたちを見つけると口角を上げ近づいてきた。

その顔は、見下すような嫌な感じを纏いながら。


その中の一人が、長老の前に歩み出た。


「ネグト、貴様は外部の者を招き入れたのか?

あれほど嫌っていたくせにどういう心変わりだ」

ネグトの顔には余裕すらあるようだ。


「長老よ、彼らは我らと志を同じくする者たちです。アナタのように精霊を蔑ろにしたりいたしません」


その言葉に長老は、頭を振り小さく息を吐く。


「お前は、相変わらずじゃの。その偏見主義がなくならないから精霊が見えないのだ。精霊を守る?何を思い上がっておる。貴様らごときに守られなければならないほど精霊は弱くない。その考えがどれほど精霊を見下しているのか理解できていないから見えないのだ」

その言葉に、貼り付けたような笑顔は動かなかったが、わずかに眉が上がる。


「精霊が見えないのは、私の善行が足りないからでしょう。だからこそ、こうして善行に励んでいるのです」


「ダメじゃの、それでは。貴様はなにも理解できておらん。

精霊は、自分たちと同格に見なければならん。友人として隣人として。

貴様の言葉や態度は、常に保護をうたいながら見下しておる。

まるで愛玩動物のように道具のように見ている貴様には一生見えんじゃろ」

と、言うとテンポよく息を吐くように笑う。


「何とでも言われるといい。どうせ、今日であなたの小言も聞かなくなる。

精霊をないがしろにするあなた方は、我々の支配下にはいることになりますからね」


「その為の異界の勇者か。所詮、力でねじ伏せるわけか」


「当然でしょう、自然は食物連鎖という名の弱肉強食社会。

それに倣えば私が、強力な力を持ってあなた方をねじ伏せる事は、理にかなっていますよ」


「否定はせんよ、その理に倣えば貴様らもねじ伏せられても文句は言えまい」

眉がわずかに動く。


「ならば、始めましょうか。アナタの兵士は少ないようですが、それも仕方ない事です」


「数は暴力か、そうかものう」


「やれ」とネグトは軽く手を振ると

教会騎士団と保護団体は手に武器を持ち、動き始める。


それに合わせてルトラン、セメット、リーレが動く。


彼らは気づいていなかった。


いつもは、魔物が跋扈する盆地に魔物がいないことに。

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