11 悪者の害獣駆除
ワルモーンは、ゴブリンの巣穴の中を進む。
穴の中のあちこちから湧いてくるように襲い掛かるゴブリンの群れ。
ナイフや斧など手持ちを持ち迫る。
それらのすべてがワルモーンに近づいただけでギャッと声を上げ地面に落ちる。
痙攣して動かない、気を失っているのだろう。
中には弓を使い、矢を放つがその矢も届かない。
ワルモーンは、全力で手加減していた。
手を出せば魔物は吹き飛び肉片に変わってしまう。
武器何てもってのほか、この穴が崩壊する。
かといってスタンを使いと消し炭に変わる。
なので使えない。じゃあどうするか?手を出さなければいい。
防御に徹すればいい、それでも出力は下げないといけないのだが・・・。
現在スタンコートと呼ばれるシステムをまといながら歩いている。
出力を1%に抑えて使用している。
そうしないと、相手が消し炭になるからだ。
彼の防御システムでさえ、威力が大きすぎるのだ。
なので当の本人は、イラついていた。
ただでさえ、手加減しているのにそれをさらに手加減を重ねている。
これは、結構繊細で気を使う作業である。
でも、しないといけない。彼の敬愛する悪の総帥の為である。
彼の中で手加減している手間と組織の為と言う使命感がせめぎ合っていた。
それでも歩みは止めずにいた。彼を迎え撃つゴブリンは、戦闘不能になり、逃げるゴブリンは穴の奥に逃げ込む。
彼がただ歩くだけでゴブリンたちを追い込んでいく。
しばらく歩いていくと広いフロアに出る。
ワルモーンは、自身が出て来た入り口に何かを投げる。
それは広がり、入り口をふさぐようにネットが広がる。
彼は周囲を見渡す。他に入り口は三つありそれもふさがないといけないと思っていた。
ここまでに道すがら分岐点に同じようなネット張りながら歩いていた。
彼の被るマスクには、生体反応を感知するシステムが搭載されており、一番ゴブリンが集まっているところを目指してきたのだ。
因みに彼が張ったネットにもスタンがついており、触れれば戦闘不能に追い込まれる。
この場合は、ゴブリンどもを逃がさない為である。
他の穴にも同じようにネットを張る。そして前を見るとそこには
ゴブリン約100匹とホブゴブリン約30匹がおり、その中にひときわ大きいゴブリン一匹がいた。
メスであることは間違いないだろう、彼はこいつが女王バチだなと確信する。
つまり、ココにいるこいつらを仕留めれば済むわけである。
しかも弱いゴブリンは今まで通りとして後は比較的頑丈な奴らばかりだ。
繊細な手加減はしなくて済む。そう思うと少しだけ気が楽になっていた。
『さて、極弱なゴブリンどもは、あの場で一網打尽して、残りは手加減を緩めてつぶす。まあ目的は極弱なゴブリンどもの捕獲だし、多少吹き飛ばしても構わんだろ』
と、ワルモーンは物騒な事を考えて居た。
そう決めると行動は速かった敵陣に飛び込み極極小のスタンをかけ、極弱なゴブリンどもを戦闘不能に追い込む。
上位種以外は見事に戦闘不能になり、その後は彼のストレス発散に走る。
要はぶん殴るだけである。
近づくホブゴブリンを一匹づつぶん殴る。
殴られたホブゴブリンは、上半身が吹き飛ぶ者もいれば胴体が吹き飛ぶ者もいる。
右半身を吹き飛ばされた者もいた。要は体のどこかが確実に吹き飛ばしていた。
当の本人は、「手加減が少なくて楽だ」なんて思いながらこぶしを振るう。
彼が行動するたびに形のわからない死体が増える。
今の彼の思考は、害獣捕獲から退治に移行している。
それでも手加減はしている。
さっきまでの手加減は彼にとっては、そっと指先で優しくなでるくらいだったのだが、今は軽く腕を振るくらいになっている。
神経の使い方が緩くなっただけでも楽なのだ。
彼のうっぷ晴らしが約十分ほどで終わる。
ホブゴブリン約30匹が全て肉塊に変わり果てているからだ。
残ったのはでかいメスが一匹である。
大きさ的には二メートル以上あるでかいゴブリンである。
それなりの攻撃力もあるはずなのだが、彼にとっては今までのホブゴブリン同じように拳を振るう。
耐久力もあるせいか彼が殴るたびに吹き飛ばず、だか風穴があいていく。
この時点ですでに力の差は歴然である。
『弱いし、面倒だな』とワルモーンは思い、少しだけ力をこめる。
ちょうど奴の体の中央に向けて拳をふるう。
先程までは風穴があく程度だったのが、体の約三分の一が吹き飛ぶ。
ほぼ体の外側だけが残るような感じだ。
これではどんな生き物も即死である。
もちろん、それはでかいゴブリンとて同じである。
でかいゴブリンは、そのまま倒れこむ。
周囲は、魔物の死体と血だまりができ、地獄の風景のような状況である。
彼は、それを何とも思わず生け捕りにしたゴブリンを集め、本部に転送する。
転送が終わると今度は来た道を戻る。一番でかいゴブリンの死体を引きずりながら
他のゴブリンを回収し転送を繰り返す。
生き残りは確実に捕まえ転送していった。
彼が巣穴の入り口に戻ろ頃には、ゴブリンのすべては本部に送られ、もぬけの殻になっていた。
〇これは悪を気取ったいい人たちが、悪いことしているつもりで周囲に感謝されるコメディーである。




