110 建前と本音と悪者たちの悪だくみ
あの後、村の会合所に通されたワルモーンご一行。
そこで、相談を受ける事になった。
実の所、ワルモーンの指摘は図星そのものだった。
昔からの慣習を大事にする者たちと
それでは被害を減らせないと訴える者たちで対立していたのだ。
慣習を大事にする者たちは、被害が出ている区画から離れていて理解ができておらず
被害を減らせないと訴える者たちは実際に被害にあっており、慣習も理解できるがそれどころではないと訴えている。
長老としては、何とかしたいのだが実際問題、精霊を退治したことが無く方法が分からない。
何人かの有志と退治に乗り出しては見たが、歯が立たなかったらしい。
そこで精霊魔法を使おうとすれば邪魔が入り、動きが取れない状態だそうだ。
もう八方塞がりな状況でワルモーンたちが現れた。
で、どうしたいか悪だくみを開始する。
まあ、悪の組織の本来の姿だろう。
悪だくみ、残虐上等が悪なのだから。
彼らは、歪んだ正義への反逆が正しいのかもしれないが、それは置いといて
村の被害対策会議が行われる。
勿論、それを邪魔する勢力もある。
問題事、厄介事に事欠かないワルモーンたちである。
さて、なぜ下位精霊がここまで狂暴化しているかというと
その理由を長老が教えてくれた。
聖域となるべき土地を守るためだそうだ。
狂暴化している下位精霊はいわば守護者でもある。
それが守り手である森人を狙うのは、その森人の穢れてしまったからだろうと
長老は言う。
長年連綿と森を守ってきたが、それゆえの驕りと他種族を見下す行為が
原因だと言われている。
長老は、仕方ないと割り切って下位精霊は害獣として何とかしたいらしい。
割と合理的な考え方をしているのだ。
この森では革新的というか、異端である。
「まあ、そこまで割り切っているのならいいですが、
そうでない者たちはどうしますか?こちらで処分してもいいですが」
と物騒な事を言い始めるワルモーン。
「いえ、それは困ります。傲慢であっても同胞です。
手荒なまねはしたくありません」
「ならさ、ワルモーン君。鍛錬法をやろうよ」
と、シンラーツが言うと
その言葉にリーレが自身を抱きかかえるように屈む。
「…あの地獄が再び…」
と、ぶつくさ言い始める。
「あ、大丈夫だよ。指導するのはアクラーツ様じゃないからね、別の人だから」
と、なだめにかかる。
「まあ、考え方を改めさせるのであれば、協力しますよ。割と手荒ですが命の保証はします」
「なんでしょうかのう。言っている言葉の節々に安心できない言葉が入っている様じゃが、それは後回しにして…まずは、水の下位精霊を何とかしてもらわんとな」
と、長老は、無理やり納得することにした。
そんな悪だくみをするワルモーンたち。
それとは別に悪だくみする者たちがいた。
A「あの侵入者どもをなんとかできんのか」
B「強すぎますな、見回り隊での一番の手練れが子ども扱いですからな
他の者では、相手にもならんでしょう」
C「それではどうする」
B「どうですかな、毒を持って毒を制すというのは?」
C「毒?まさかよそ者を入れるのか?それは後々面倒になるのではないか」
B「教会とは話がついています。かの者たちは自分たちがこの集落に入る許可だけもらえればいいと言っておりました」
C「信用でできるのか、よそ者だぞ」
B「神職に携わる者たちだ、問題ないはずだ」
A「それならば、その手で行こう。問題が片付けば後はどうとでもなる。
まずは、目先の問題を片づけてからだ。我らは精霊を守る立場なのだからな」




