109 古き慣習と革新
完全に乗せられたエルフの青年。
現状のペースは完全にワルモーンが握っている。
その状態で、腰の剣を抜き構えるエルフの青年に対し、
ワルモーンは無手で無形の位である。
遠目から見ればどちらが格上かわかるほどである。
そんな中剣を振り上げワルモーンに斬りかかるエルフの青年。
だが、剣の腹をたたき払い落とすワルモーン。
力加減も絶妙で剣の軌道が変わる程度で済ましている。
それは何回も何回も続き、エルフの青年が疲れ果てるまで続いた。
エルフの青年は座り込み、
「何のつもりだ、これは」
と、怒鳴る。
「ん?手加減しただけだが?おかしかったか」
悪びれる様子もなくワルモーンは答える。
「ば、バカにして…」
手に持つ剣を杖代わりにして立ち上がる。
そして、剣を構える。
「もう決着はついたと思うが…まだやるのか」
「まだだ、劣等種相手に情けない姿をさらしたままでは、すまない!」
と、気持ちだけは強気だが、足が生まれたての小鹿のように震えている。
体力は限界のようだ。
「いいかげんせい!!このバカ者が!引き際を間違える出ないわ!」
そうたしなめたのは、エルフのご老人だ。護衛を二人連れていた。
「すまんの人の子よ。こやつは若いくせに無駄にプライドと使命感が強い。
迷惑をかけた」
と、エルフの老人は、頭を下げる。
その姿に同族たちは驚いていた。
老人は一族の中でもそれなりの地位にいる為だろうと
ワルモーンは判断した。
「いや、こちらこそすまない。ムカついたのでつい逆なでするような物言いをしていしまった。申し訳ない」
ワルモーンは頭を下げた。
彼は、悪意に対して敵意を礼儀対して礼儀をと考えていた。
なので、礼儀を持ってこちらに接してくる相手には礼儀で答える。
ただ、そこに悪意があれば敏感に感じ取る。
つまり、老人からは誠意しか感じ散れなかったのであろう。
「いやいや、あんたの言い分はもっともすぎる。
わしらは古い慣習に囚われているくせに精霊を道具のように見ている節があった。
そうだな、確かに同等に見るべきだな。考え方を改めないといかんのう」
「いやこちらこそだ。そちらの心情も理解しているくせにケンカを吹っかけるような言い方をして済まない」
お詫びし合う二人を見て
「なぜですか長老。そのような無礼なものに頭を下げるなど…」
と、語り始めた。
それを横目で見ていた長老は、
「若いのに頭がかたいのう。古い慣習にとらわれていてどうする。
時代とは移りゆくもの。立ち止まっているだけではおいて行かれるだけじゃろう。
柔らかく臨機応変に対応せんでどうする。若いくせに老人のような考えしとるの、お前」
という。
ワルモーンはその言葉に感心し、他のメンバーは『革新的な考え方のご老人で助かる』と考えていた。
その後、ご老人の案内で村まで向かうことになった。
若者は、不貞腐れていた。
まあ、それはいつもの事だろうと一行は楽観視していた。
ただ、この後事あるごとにワルモーンに挑んでいた。
結果は、若者が疲れ果てて終わるを繰り返すだけだったが…。




