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103 悪者は部下に噛みつかれる



力を使い果たし座り込むルトランの元に

ワルモーンとリーレが歩み寄る。


近づいてきたワルモーンの顔を見上げ

「なんとか、モノにできました。

でもすごいですね、点周てんしゅうの範囲がすさまじく広いですね。師匠」

ルトランは、疲れながらも笑顔を見せる。


「当然だ、これでも悪の組織の大幹部だぞオレは。

心意一閃は、免許皆伝でもある。

点周てんしゅうの範囲内ならすぐにでもフォロー可能にしていたからな。

点周てんしゅうを感じ取れていたからか落ち着いて気断きだんをねらえたようだな」


「はい、ホントに頼りになりますよ師匠は。常にこっちを気にしてくれていたから

動きやすくて助かりましたよ」


「あの先ほどから言われている点周てんしゅうとは何ですか?」

リーレは釈然としないまま疑問をぶつけてきた。


点周てんしゅうとは、意識結界のようだ。

点のように目の前の相手に向き合い、その上で周囲に意識を飛ばす。

気配を感じながら戦うと言えばわかりやすいか」


「なんとなくはわかります。ワルモーン様は、彼を見捨てたわけではなく常に気にしていたという事になるのですね」

リーレは、そう解釈した。

完全な自分の勇み足であることを。


「慌てるのも仕方ないでしょ、ワルモーン君はいつでも言葉が足りないんだよ。

まあ、時間がないから仕方ないんだけどね」

近づいてきたシンラーツが言葉を補う。


「まあ、安心感はすさまじいよね。

私なんか先生が一緒にいたから特にそう感じるよ」

疲れ果てたセメットが続く。


安心感が彼らを包む中、リーレはワルモーンの前に立ち

「あのワルモーン様。質問があります」

たずねた。


「なんだ、心意一閃の事か?それとも何か他の事か?」


「はい、心意一閃の事です。

他の事も聞きたいですが、全部ソレに関連したことのように聞こえていて

私のような下っ端改造人間にはあまり教えていただいていないので…」

しょぼくれるリーレに


「そう悲観するな。オマエの命を繋ぐために施した改造手術だ。

そして、その事実に押しつぶされないようにするために精神鍛錬法をさせ、

その肉体を使いこなせるようにするための肉体鍛錬法をしたとの報告を受けている。後はお前の教育についてはオレに丸投げすると言ってきていた。

あの人は昔から最後の詰めが苦手なんだ」

と、遠くを見るように話す。


「そんな事実初めて聞きました。鍛錬指導はアクラーツ様にしていただきましたが、何も言われなかったので悪の戦闘員になることが決定していたと思っていました」



「ん?それは間違いではないぞ。貴様はすでに悪の組織ギャクゾークの戦闘員だ」



「…それは決定事項なんですね」


「で、本題になるのだが、お前に問う。戦闘員としているか、それとも改魔兵を率いる立場になるか、どちらを選択する?」



「その選択肢しかないんですか?」


「ないな、こちらの世界での貴重な人員だ。逃すつもりはない、その二択以外はない」


「…そうですか。まあ、悪の組織もなんだかんだで居心地がいいですし構いませんが…どちらかですか。因みにこの話と心意一閃はどうかかわりがあるのですか?」

と、リーレの質問にワルモーンは答えた。



まず、悪の組織の戦闘員として最低でも肉体、精神鍛錬法の第一段までを習得することと心意一閃と言われる古流武術の第一段までの習得が必要となる。


因みに肉体、精神鍛錬法と古流武術の心意一閃は、それぞれ段位が六まであり、


その習得が、そのまま悪の組織での序列になる。


肉体、精神鍛錬法と古流武術の心意一閃の六段位全てを習得すれば、大幹部


四段位まで習得していれば、幹部


三段位まで習得していれば、部隊長および副官


戦闘員でも最低でも一段位までの習得が義務付けられている。


古流武術の心意一閃は、無手と武器を使う為に作られたもので

身を護る護身術として覚えることを必須にしている。


そして、基礎として点周てんしゅう気断きだん歩無ほなしの三つを覚える必要がある。


点周てんしゅうとは、戦いながら相手に集中して、周囲の気配を察するように意識的に感覚を研ぎ澄ます事であり、



気断きだんとは、体内に流れる気の流れをコントロールして拳や武器にまとわせる事であり、


歩無ほなしとは、歩くは早さも動きも自在にできるようにしなやかな動きを行う事である。


そして、その武術の先生がワルモーンであることを説明した。


また、ルトランには、気断きだんの素養があったため、本人が強くなりたがっていたので点周てんしゅう気断きだん習得のために死の森で修行させた事。


気断きだんの最終調整の為に下位精霊との戦いに手出ししなかったことを追加で説明した。


「なるほど、私はそれを知らないまま、ソレを邪魔しようとしていたわけですか。

なんか申し訳ございません」

リーレが頭を下げると


「謝る必要はないよ、リーレ。ワルモーン君が悪い、きちんと説明しないから。

不器用極まれりになってどうするの?仮にも大幹部でしょ、この子の師匠になるんでしょ。きちんとしなきゃいけないじゃない」


「だが、オレもいきなりの丸投げで困っていたんだ。こいつの訓練プランも考えないといけないし、かといってこのチャンスはルトランにとってはいい経験になる。

それが、失敗してもだ。なんて考えていたら忘れたんだ」


「そりゃ、マ…アクラーツ様がちゃんと指導しておけばよかったんだろうけど。

マ…あの人が割とずぼらなのは知ってるでしょ」


「それは、知っている。だからこそオレは、キチンとしようとしてだな…」

と言いかけたワルモーンを遮り、


「はい、言い訳はそこまで。

キミは、いつだって周囲に気を配る割に言葉や行動が分かりにくいのよ。

変なとこパ…ゴクアーク様に似ちゃって困るわ」

と、シンラーツが頭を抱えるような仕草をすると


「お前に言われたくない。顔や体格はアクラーツ殿に似ているくせに

中身はゴクアーク様似の貴様に…他の二人もそう言っている!」


「何でそこで兄ちゃんズが出てくんの!、自分だってゴクアーク様似のくせに!」


「当然だ!あの肩を目指しているんだから似てないとむしろ困る」


「アレに似るの~!、筋肉達磨のガラスのオッサンハートに~」


「やかましいわ!アレとは何だアレとは!仮にもお前の親だろう、言い方を考えろ」


と、痴話げんかを始めた。



ここは、まだ危険区域なのに彼らはそんなこと感じさせないくらい通常運転であった。


勿論、二人と一匹は生温かい目で見舞っていたのは言うまでもない。



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