99 悪者たちは、目的地を考える
二人は鍛冶屋を後にして、一度冒険者ギルドに向かうことにした。
今更だが、金があまりない。
本部より指示がありギルドに入り、金を稼ぐようにも言われている。
実際の所、組織としては金の心配はない。
町と村からの収入があるから問題はないのだが、
今後二人の行動に支障が出るかもしれないので加入の指示が来たらしい。
本音としては、この二人が起こすであろう問題を解決しやすくするために入っとけ、が答えである。
もはや、問題を起こすことが前提である。
この街のギルドは大きい。
生産ギルドと商業ギルドと冒険者ギルドが統合されて
一つの建物で管理されているからだ。
ここでまとめて済むようにしている。
その為、二人と一匹は、建物に入る。
今回は、冒険者登録と獣魔契約である。
蒼月は従順だが、一応狼だ。
飼い主をはっきりさせて置かいなと後々うるさいのだ。
諸々の手続きを済ましワルモーンたちは、宿屋に向かう。
そこでこれからの行動目標を決める算段である。
話し合いは、宿屋に併設された食堂で行うことになった。
その場を仕切るのはリーレである。
彼女は、一応元勇者パーティの一人でもあり、
一番地の利がある為だ。
「皆様にご提案があります」
と、言い始めた。
彼女のいう事はこうだ。
ワルモーンの普段使いの武器がない。
今回、鍛冶屋で手に入れた武器も長くは持たない。
かといって彼の持つ本来の武器は強すぎるため、使えない。
そうなると彼は武器を持たない状況でいることになる。
これが問題となる。
ただでさえ目立つ彼が、手持ち武器を持たない状態だと
アホな奴らに絡まれることになるからだ。
武器を携帯することは、そういうアホを避ける為の虫よけでもあるのだ。
でも、普通の武器では彼の力に負けてしまいすぐに使い物にならなくなる。
本来の武器は手元にあるだけで周囲に魔力と威圧をまき散らすため論外だ。
普段使いの武器は必要となる状況でもだ。
ならば、その武器を手に入れればいいというもの。
近くに嵐の山というものがある。
ここには風と雷の上位精霊が残したと言われる二振りの剣があると言われ、
今もその剣が、いがみ合い嵐を起しているというところ。
そこを攻略しないかというもの。
そうすれば、ワルモーンは普段使い?出来る魔剣が手に入り、
他の者たちは、実力の底上げと精霊石が手に入る。
精霊石とは、実体化した精霊を倒すことで手に入る石のこと。
魔物から手に入る魔石の精霊版だ。
対象の精霊の力が内包された石でその力を使うことが可能となる便利アイテムでもある。
そのことに異議を唱える者はいなかった。
ワルモーンは、あまり関心がなかったが、シンラーツは精霊が見れると興奮気味で、
ルトランは、実力があげられると意気揚々だ。
セメットにしても魔法能力の幅が広がると乗り気だ。
蒼月に至っては、なんか傍観者になっている。君、狼だよね。
さらにワルモーンはルトランに先ほど購入した剣を渡すことにした。
ルトランが今使っている剣は、死の森での修行で使っていた剣の最後の一振りで
結構痛んでいたからだ。
ワルモーンは、二振りの剣を机の上に置く。
「好きな方を選べ、どちらにしても今の剣では山での戦いで折れる事は確定だろう」
と、言われ、机まで歩み出る。
ルトラン自身の気が付いてはいた。
今使っている剣は長くはもたない。
でも、修行の地で乗り越えてきた相棒でもある。
一応メンテもかけたが、そこの鍛冶屋では長くは持たないだろう、とまで言われていた。
それでも折れるまで使おうと決めていたのだ。
でも、これから行くところでの過酷さを考えると
新しい剣は必要となる。
意を決して選ぶことにしたのだ。
何より自分が師と仰ぐ人からの申し出は、むげにはできない。
その思いもある。
ルトランは、二振りの剣を一振りずつ手に取り、鞘から抜き軽く振る。
一振り目は、手になじみ振りやすい。バランスがいいのだろう。
剣を振った時に風を切る音が一定だ。
二振り目は、わずかだが重さにバラツキがあり、剣を振った時に風を切る音が濁っていた。
ルトランは二振りとも試した後、剣を置きワルモーンを見据えて
「こちらの剣を頂きます」
と、言い二振り目を手に取る。
「なぜ、そっちを選んだ?」
と、たずねられ
「この剣は、弟子が作られたのでしょう。剣としては未熟だと思います。
ですが、未熟なのは私も同じです。だからこそこの剣の作り手と競いたいと思いました」
「競いたいだと?どういうことだ」
「未熟者同士、どちらが一人前になれるかをです。
この剣をつくったであろう弟子と剣士のオレ。一人前になるはどちらかをです。
まあ、オレが勝手に思っているだけですけどね。
因みに間違ってませんよね、師匠」
そういいながらワルモーンを見ると
「そうだな、目利きは間違いない」
そういわれ安心するルトランに
「ただ…」
言葉を繋ぐ。
「それならば、この鍛冶屋を教えてやるから
宣戦布告してこい、どちらが一人前になれるか競おう、と。
そうすれば、張り合いも出るだろう」
と、付け足した。
その言葉に
「はい!」
と、満面の笑顔で返事するルトラン。
その日は、何もなく解散となった。
明日向かう嵐の山に向かう為の鋭気を養うことになった。




