98 悪の組織劇場 第10幕 悪の総統、村視察記4
村を視察中の悪の総統。
視察しながら恐怖(笑顔)を振りまく。
あまりにも怖い顔つきに大人たちはビビり、子供たちは泣き叫ぶ。
安全見回りのシアンウルフたちでさえ逃げ出す。
阿鼻叫喚絵図。
それでも恐怖(笑顔)を振りまく悪の総統。見た目とは裏腹に心では泣き叫ぶ。
そんな強がりを見せている総統をかわいらしいと思う慈愛の女性。
そして、その状況をあきれながら案内する部下といった構図。
何だコレ?
なんて思ってしまう。
平穏を取り戻した村に満足している悪の総統。
でも、日常において平穏などあるわけもなく、問題は常に雨のように降ってくる。
鉱山の裏手に風の岩と呼ばれる猟師たちから近づくなと言われるものがある。
その岩にヒビが入っていた。
理由は簡単、ワルモーンと魔族の戦いの余波で入ったものだ。
不可抗力である。
そのヒビは、日を追うごとに大きくなる。
中にいる何かが殻を破ろうとしているように。
そして、幸か不幸かその岩が壊れる。
悪の総統が村を視察している時に…
中から現れたのは、風を纏う獅子。
この地方に封印されし魔獣が一匹である。
魔族は、この地を侵攻対象としている理由にこの封印魔獣がいる為である。
この魔獣を解放して暴れさせれば、相手を弱らせることが容易となり
用が終わればまた封印すればいい、という思惑からだ。
だが、すでに土の魔獣であるカメはゴクアークが、
水の魔獣たる大蛇はアーバレルが仕留めている。
で、ここで風の魔獣が復活する。
突然の暴風が、鉱山裏手から吹き荒れる。
村人たちも悪の組織の戦闘員も慌てる。
部隊長すらいきなりの事で混乱する中、
副官である慈愛満ちた女性は、冷静に対処し指示を出す。
避難と原因究明である。
その結果、鉱山の裏手に何か起きたことが分かり、その調査隊を編成しようとした矢先に悪の総統が動く。
村で怖がられ、思ってたんとちがう。
状態の悪の総統。
彼が動くと言い出したのだ。
流石に戦闘員たちは、恐れ多いと止めるが、それを許可したのが副官であるアクラーツである。
その慈愛に満ちた笑顔で、「この人に任せておけば大丈夫」
の一言で混乱している人たちを納めて見せた。
それでも村人たちは不安いっぱいなのだが、それを押し切ったのだ。
そのおかげで悪の総統は単独でその原因である場所に向かうことになる。
チャラララ~ン!
さあ、みなさんお待ちかね。
悪の総統ゴクアークが、打ちひしがれた心をいやすため(八つ当たり)、
強大な魔獣に立ち向かいます。
相手は風の封印魔獣。
見た目が怖いだけの気のいいオッサン、ゴクアーク。
彼は、この脅威にどう立ち向かのか?
それでは、〇ン〇ム ファイトォ~レディ~ゴウ~!!!
(すいません、調子にのりました)
こほん、話を戻してゴクアークがたどり着いた場所には、
岩が砕け、白く暴風を纏った白き獅子がいた。
立ち上がろうとしていたようだが、うまく立ち上がれず藻掻いているようだ。
それを見たゴクアークの瞳に狂気が宿り、口元が歪む。
それはもう普通の人が見たら失神してしまいそうなくらいに怖い顔で。
その獅子に襲い掛かるゴクアーク。
その殺気に気づき風の刃や風の弾丸をゴクアークに撃ちまくる魔獣。
何発かはゴクアークに当たるが、まるで雨粒が当たったかのように気にも留めていない。
外れた攻撃は、山の斜面をえぐる。
元の形が分からくなるような攻撃だ。
それを受けつつもゴクアークは進み魔獣の顔面を右手でぶん殴る。
吹き飛ばされそうになりながらも踏みとどまる魔獣。
更に視線をゴクアークに向けたタイミングで今度は顎から上にゴクアークの拳が撃ち込まれる。
それも何とか踏みとどまる魔獣。
視線を戻そうとしたタイミングでゴクアークの左手が首をつかむ。
そのまま、持ち上げあられ、ゴクアークは、力を入れて右拳を魔獣に向けて振り抜く。
魔獣の体は抉られ、その血が辺りにまき散らされる。
勿論、一番近くにいたゴクアークにも降り注ぐ。
次につかんだ左手で魔獣の頭部を地面に叩きつける。
その瞬間あちこちに亀裂が入り、砕けるように地面が陥没する。
流石の魔獣のこれにより絶命した。
風の封印魔獣は、暴れる前に駆逐されたのだ。
その後、ゴクアークは、その死体を片手に村に帰り、ドン引きされる。
どでかい獅子の魔獣を片手に血みどろの怖い満面の笑顔のオッサン。
もはや、遠目にみてもホラーである。
悪の組織関係者は、見慣れているので温かい目で見るのだが、
慣れていない者たちには恐怖の対象である。
災厄を退けてもそれを退けた英雄があまりにも怖いのだ。
子供たちだけでなく、大人たちを含めた人間が全て叫ぶ状態である。
阿鼻叫喚である。
そのせいでゴクアークは避けられた。
そして、村を救った英雄は体育座りしていじけていた。
その哀愁すら漂る姿すら恐怖そのものである。
どう頑張っても恐怖の対象であるゴクアーク。
だが、その後村に言い伝えが残る。
風の魔獣現れしとき、恐怖を纏いし英雄が村を救う。
恐怖を振りまきがらも心優しき英雄。
キチンと善意は受け取られてた。
まあ、本人は知らないのだが…




