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96 悪の組織劇場 第9幕 悪の大幹部は、あばれる


さて、問題を生産する上司に苦労している副官が嘆いている時、

その原因である上官は、漁港でお悩み相談を受けていた。


「アーバレルさんよ、頼まれてくれないかい?」

漁業協同組合のおばちゃんが、アーバレルに頼み事をしていた。


「あそこにいる魔物を討伐か、ついでに行く途中に出る魔物もか」

腕を組み、窓から見える小島を一瞥するアーバレル。


「そうなんだよ、海に出る魔物も邪魔なんだけど、

それ以上にあの島にはいろんなものが取れるのに魔物がいるせいで取りにいけない。

しかもあの魔物のせいでここに来る定期便が減ってきてる。

面倒ごとしかないのよ。教会の奴らに頼んだこともあったけど、

逃げてばかりで何もしやしない。

だから、アンタに頼むしかないんだよ」


「そうか、それはまずいな。ちなみに船はあるか?

あれば何とかしよう」

その言葉に表情が明るくなるおばちゃん。

アーバレルは、不器用なのが言葉にしたことはきちんとする有言実行型なので

今までの依頼は全て受けてくれるし、こなしてもくれる。


それがどんなに些細な事であっても、丁寧にきちんとこなしてくれるため、

村の人たちからの信頼も厚い。


エグーミの悩みの種でもある。

幹部としての事務仕事しないで逃げ回るくせに村の問題は解決する。

そう、力技での問題解決は得意なのだ。


考え方と行動原理がすでに昭和体育会系か脳筋である。

それでも解決してしまうのだ。


この辺りは、ゴクアークとアクラーツの教育のたまものなのかもしれない。

意外とインテリな二人の指導の元に教育されている大幹部、幹部たちである。

無能なわけはない、ただ得手不得手があるだけである。


その為に彼女も強く言えないのだ。

仕事のしわ寄せがきていてもである。

脳筋上司の副官は事務方で、事務上司の副官は脳筋でとサポートし合える状況にしている。



質の悪い事だ。

幹部としての仕事か、村の信頼か、

どちらをとるかの選択である。


なので半ばあきらめられている。



で、アーバレルは、配下である他衛隊(自衛隊ぐずれの方々)の何人かを引き連れ

行動を開始する。



配下である他衛隊(自衛隊ぐずれの方々)には、陸、海、空の三チームがあり

それぞれが村の侵略(と言う名の開発?発展?)にいそしんでいる。


その内の一部隊であるか海から何人かを引き連れ、島に向かうアーバレル。

彼も大幹部である。


海を荒らす魔物ごときでは相手にもならない。

倒した魔物の回収は、組合の方々のお仕事。

こいつらの素材は漁港と町の為に使われる。


村は、漁港は海の近くにあるが、居住区画は高台に作られている。

割と災害に対応している村である。


そのため、アーバレルが魔物討伐の連絡は、すぐに副官の耳にも入る。

その情報を聞いた副官はすぐさま行動を起こす。

村民の避難だ。

アーバレルは、強いのだがいかんせん手加減ができない。

そのため、周囲の被害が甚大になりやすいのだ。


被害を抑える為の最低限を行うことにした。

村にいる各部隊に連絡し、避難開始させる。

魔物退治自体は仕方ない事だが、それによる二次被害は食い止めないといけない。

特に人死には起こしたくない。


なので念入りに確実に避難をさせることにしたのだ。

建物などはもはや諦めることにした。

後でどうとでも出来る。


ただ人的被害はバカにならない。

生きていれば、何とでもなる精神の元、避難優先させたのだ。

それを急ピッチで行う。

これから起きるであろう被害を最小限にするために。


そんなこととはつゆ知らず、当のアーバレルは魔物の住処である島の中央に向かう。

大きな泉があり、そこには10mはある大蛇のような魔物がいた。


それを見つけるとアーバレルは

「各員わかっているな。それぞれ人命の安全を第一に動け。連れてきた村人の安全確保を最優先に、それからオレの戦闘に巻き込まれるなよ。わかったな」


「「「了解」」」

と部下たちはその命令後、動き出す。

割と周囲を気にするアーバレルなのだが、力加減が下手なのは本人も理解できている。

その為、連れてきた部下にはいつも周囲の人間たちの安全確保に動かせる。

考えていない様で考えている脳筋である。


だが、その目は獰猛な捕食者になっていた。

目の前にいる大蛇を見据えている。


「さあ、楽しもうか!」

そういうとアーバレルは大蛇に襲い掛かる。

大蛇は、現れた小さき者を追い返すべく水圧で高めた水を幾つも吐き出す。


まともにその水を受けるアーバレル。そのまま地面に叩きつけられる。


だが、すぐに立ち上がり前に走り出す。

まるで、ダメージなど無かったかのように。

丈夫にもほどがあると呆れてしまうほどに。


泉は大きく、約2キロほどの大きさを誇る。

その中央にいる大蛇は、岸辺から約一キロほどあることになる。


いくらアーバレルが強くても近寄れなくて攻撃できない。

泉には船もない。


で、どうするか。


簡単である。水の上を走ればいい。

そう考えたアーバレルは、非常識な考えを実行する。


右足が沈む前に左足を出し、左足が沈む前に右足を出す。

この考えは確かに正しい。

でも、物理的にできる事ではない。


体がその動きに追い付かない、そして物理法則についていかない。

要は、体の重さに体の動きが追い付かないのだ。


でも、もう理解されているだろうが、悪の組織の彼らは基本的に非常識なのだ。


つまり、それが出来てしまう。


アーバレルは水しぶきをあげながら水の上を駆ける。

それ、ジェットスキーのように最短距離をまっしぐら、である。

勿論、大蛇も抵抗する。

先ほどの水の砲撃をするのだが、今度は吹き飛ばず吐き飛ばされる。

正確には、攻撃を受けているのだが、その勢いよりもアーバレルが進む勢いが強いのだ。


「ハハハッ!その程度かデカヘビよ、当たらんぞ。その程度では当たらんぞ!」

笑い声を上げながら水の砲撃をかわしながら進むアーバレル。

見た感じ楽しそうである。


脳筋の割には理にかなった動きをする。

厄介である。


その勢いそのままにアーバレルは、大蛇の元にたどり着き、そしてその体を駆けあがる。


もう非常識極まれりである。


だが、その歩みがすさまじい。

水の上を走る脚力で踏まれた大蛇の体は、打撃を受けたようのへこみ、

異常な脚力で踏まれるたびに大蛇が悲鳴を上げる。

反撃しようにも駆け上がると言う行為事態が、大蛇には攻撃になりそれどころではない。


そして、アーバレルが頭部からさらに上に飛び上がると、今度は自由落下を利用して

大蛇の脳天目掛けて、拳を叩き込む。

攻撃が当たったタイミングですでに白目をむいている大蛇をさらに水面に叩きつける。


その反動で泉の水は、爆発する。

更に、その振動は島を通り抜け、波紋のように広がり、津波を起こす。


津波は、周囲の陸地に襲い掛かる。

幸い、避難誘導はできていた為、人的被害はなかった。


ホントによくできた部下たちである。

アーバレルは、嬉しそうに倒した大蛇を村まで持ち帰り、

副官であるエグーミに叱られていた。



あとでわかったことだが、この大蛇は、以前ゴクアークが倒したカメと同じで封印魔獣と言われていたそうな。


封印するしかできない伝説の魔獣だそうだ。

それを一撃のもと、しかも悪の大幹部と総帥の憂さ晴らしにされる、

何とも悲しい末路である。



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