93 悪者は、街ブラをする。
街についてからルトランとセメットは、冒険者ギルドに
リーレは宿の手配、ワルモーンとシンラーツ、シアンウルフの蒼月は散策に向かう。
「さて、どこに行くか」
とワルモーンは思案に暮れると
「せっかく鍛冶師の街に来たんだから鍛冶屋に行こうよ」
「がうっ」
とシンラーツと蒼月が言うので鍛冶屋巡りをすることになった。
因みに蒼月はしゃべれませんが、なんとなくです。
一応シンラーツが飼い主ですし、そうだろうという感じで。
あちこち店を回るが似たり寄ったりが多い。
確かに質の高さは他の街とはケタ違いだ。
でも、この街では平均レベルが多い。
日常品を作る店もある。
オーダー品を作るものもいる。
様々なのだが、三人?が回ると今一つなのだ。
ワルモーンは、自分の力に耐えうる武器を
シンラーツは、とりあえず適当な武器を
蒼月は、…使わないけど付き合いで?回っている。
何軒か回ってワルモーンは剣を数本手に入れた。
満足のいくものはなかったが、マシな部類の物を手に入れたのだ。
決して気に入った、満足するものはない。
不満げである。
シンラーツは、買いもしないが満足げである。
ここの所二人きり?でいた試しがないので
今回のような状況が嬉しくてたまらないのだ。
蒼月は、シンラーツのその様子にたまらなく満足げである。
世話好きのお姉さんポジションになっている。
キミ、狼だよね。
間違ってないよね。
ツッコミ役がいないことが悔やまれる。
あらかた店を回り、最後の店に入る。
ここは日常品と武器の店。
ワルモーンは、ここで包丁を二本ほど手にカウンターに向かう。
「毎度、ーーーギルになります」
店主である若い兄ちゃんが受け付けてくれた。
「聞きたいのだが、片刃の剣を作っている所を知らないか?」
そのワルモーンの質問に
「片刃の剣?この辺りで作っている人間はあまり聞かないな。
両刃の剣を創ることが自身の技術力のアピールに持ってこいだからな。
片刃は、作りやすいしあまり差別化されない上に、下に見られるからな…」
と言いながら何かを思い出したように思案する。
そして、
「いや、いたな。しかも片刃を専門に作っている奴が…」
「そいつはどこにいる」
ワルモーンがめずらkしく食いついた。
「でも、何で片刃なんだ?アンナの使い勝手悪いだろ」
店主の疑問に
「オレの出身では片刃が当たり前なんだ。使いやすいからな」
「あんた、アケノヒ国の人間かい。
ならそうなるわな、納得だわ。
ああ、場所な。裏門近くにある店なんだが、地図準備するわ」
と、簡単な地図を書いてくれた。
「助かる」
「ただし、ここの親父なかなかの偏屈だ。気を付けろよ」
その言葉にワルモーンの口元が緩む。
そして、
「のぞむところだ」
と、なぜか面倒ごとを楽しむように返事した。
彼は、生来のおせっかいなのだろうと蒼月は思い、
やれやれ、と首を横に振る。
本来のツッコミ役のシンラーツは嬉しそうにあちこち見ていた。
それを見て
『この二人は通常運転で平和だ、がう』
と、蒼月は思うのだった。




