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怪談遊戯~冥界ドライブ~  作者: 雪鳴月彦
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第一話:追体験

 こうしてお客さんへ怪談みたいなお話をお聞かせする機会はたまにあるんですけど、一応プライバシーというものもありますので、お話の舞台となる詳しい住所や体験されたご本人のお名前等は全て架空のものを使わせてもらいます。



 さて、このお話をしてくれたお客さんというのは、当時は社会人になったばかりと言っていましたから、まぁ、二十代前半くらいの女性と解釈しておけば間違いはないでしょうか。


 その女性がね、大学生時代に幽霊に殺されそうになったことがあるんですよと、お話を聞かせてくれまして。


 名古屋の大学を卒業して、就職のため地元へ帰ってきた方だったんですけれど、高校を卒業して名古屋へ行って、そこで初めてアパートを契約し一人暮らしを始めたそうなんですよ。


 やはり大抵の若い人は一人暮らしに憧れを抱くものですから、その方も例外ではなく、親の束縛から解放されて自由に生活ができるという新しい環境にワクワクしていたそうなのですが、いざ一人暮らしを始めて二週間も経過した頃、自分の身体にある異変が起こりだしたというのです。


 その異変というのは、毎晩八時を少し過ぎた時間になると急激な眠気に襲われてしまうといったもので、テレビを観ていたり携帯電話をいじっている最中に突然意識が混濁するくらい頭がぐらぐらし始めて、そのまま気を失うように眠ってしまい、気づくと朝になっている……というのです。


 それが、ほぼ毎晩。週に四、五回ものペースで発生したんですと。


 どう考えても異常だということで、その方は病院へ検査を受けに行ったそうなのですが、結果は特に異常はなしと言われるだけ。


 納得がいかずに、いくつかの病院を梯子してみたものの、どこへ行っても何も問題はないと首を傾げられるだけだったと言っていました。


 打つ手がなくなり、仕方がないとそのまま生活を続けていると、それからまた暫くして、今度はおかしな夢を見るようになったそうで。


 その夢の内容は毎回同じもので、自分が住んでいるアパートのリビングに座っていて、何かの薬を大量にシートから取り出しそれを机の上に置いた皿の中へ入れている。


 やがて、全ての薬を出し終えると、今度はその大量の薬を次々に口の中へ詰め込み水で無理矢理飲み下していくのだそうで、飲めば飲むほど苦しくなりもうこれ以上は嫌だと思うものの、身体は勝手に薬を口へ詰め込み続け、やがて夢の中であるにも関わらず意識が朦朧となり座ったまま横へ倒れそうになる瞬間、ハッとなって目を覚ます。


 既に朝になってはいるものの、毎回汗で身体は濡れ、寝起きにも関わらず全身を倦怠感が襲い、疲れが取れるどころか余計に蓄積しているような不快感がまとわりつき、その方、段々自分の心身が衰弱していくのを自覚したそうです。


 それでも、大学を休むわけにもいかないと頑張って通っていたのだそうですが、ある日仲の良い友人の一人から突然会わせたい人がいると呼び出され、近くのファミレスへ向かうと、同世代くらいと言っていましたか、初対面の女性が座っていて、その方からおもむろに「貴女に悪い霊が憑いてるから、すぐにでも今住んでる場所から引っ越した方が良いよ」と忠告をされたと言うんですね。


 いきなりの発言に驚きながらも、その女性と話をしてみると、次々に自分が体験してきた不可思議な出来事を言い当てていく。


 奇妙な眠気と意味不明な夢。それらに苦しめられているのだろうと言われた瞬間は、鳥肌が立ったと言っていました。


 そうして、より詳しく話を聞いていくと、その方が眠気と夢に襲われるようになった理由を、女性はこう説明してきたと言うんです。


「貴女の今住んでる部屋、過去に女の人が薬の過剰摂取で自殺してる。このままそこに住んでたら、貴女も精神を蝕まれて同じ道を辿ることになるよ。死にたくないなら、悪いことは言わないから早く引っ越して」


 正直、その方は幽霊というものをそれほど信じていなかったそうなのですが、女性があまりにも真剣な表情で話してくるのを見てすぐに両親と相談し、新しい部屋を探すのを手伝ってもらい、幸いにもそれほど時間をかけることなく別の部屋を見つけることができたそうです。


 実際、引っ越しをしたその日から猛烈な眠気に襲われることも、おかしな夢を見ることもなくなり、元通りの日常を送ることができるようになったということで、今ではもう幽霊は本当にいるんだと考えを改めるようになったんです……と、そんなお話を聞かせていただきました。

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